日本発エビデンス|page:38

デルゴシチニブ軟膏、小児ADへの有効性と安全性を確認

 昨年、世界で初めてわが国で承認された、アトピー性皮膚炎(AD)に対する外用JAK阻害薬デルゴシチニブ軟膏(商品名:コレクチム軟膏)について、東京慈恵会医科大学名誉教授の中川 秀己氏らが小児(2~15歳)に対する有効性と安全性を評価した56週の第III相無作為化二重盲検基剤対照試験の結果が、Journal of the American Academy of Dermatology誌2021年10月号で報告された。  56週にわたり塗布群は有意な改善を示し、忍容性は良好であったという。上市されたデルゴシチニブ0.5%軟膏の適応対象は、当初16歳以上の成人であったが、本年5月に小児への適応拡大が承認されている。

反復性片頭痛予防に対するフレマネズマブの有効性~日韓共同第III相試験

 片頭痛の約90%を占める反復性片頭痛に対する予防療法は、現在の利用可能な治療では十分でない。片頭痛の病因に関連するカルシトニン遺伝子関連ペプチド経路を標的とするモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、大規模な国際第III相臨床試験において、慢性および反復性片頭痛に対して効果および忍容性が確認されている。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本人および韓国人の反復性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性について、評価を行った。Headache誌2021年7月号の報告。

分娩様式と産後うつ病との関連~JECS研究

 産後うつ病は、母親の自殺などを含む健康への悪影響と関連している。分娩様式は、産後うつ病のリスク因子といわれているが、この関連を調査した大規模コホート研究は、あまり行われていなかった。大阪大学の馬場 幸子氏らは、出産1ヵ月後および6ヵ月後における分娩様式と産後うつ病リスクとの関連を調査した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2021年7月31日号の報告。  単生児出産の母親8万9,954人を対象とした全国調査のデータを用いて、出産方法と産後うつ病との関連を調査した。産後うつ病の評価は、出産1ヵ月後および6ヵ月後にエジンバラ産後うつ病評価尺度(13点以上)を用いて測定した。産後うつ病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、出産前の身体的、社会経済的、精神的要因で調整した後、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。

小児のコロナ入院の多くが軽症例/国立成育医療研究センター・国立国際医療研究センター

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を分析した。  これは、国立国際医療研究センターが運営している国内最大のCOVID-19入院患者のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用したもので、本レジストリを使用した小児患者における分析は今回が初めてとなる。分析の結果、分析対象期間に登録された小児のCOVID-19入院患者の多くは、無症状または軽症であり、酸素投与を必要とした患者は15例、症状のあった患者全体の2.1%だった。また、ほとんどが無症状、または軽症であるにもかかわらず、入院期間の中央値は8日で、2歳未満や13歳以上の患者、基礎疾患のある患者は、何らかの症状が出やすい傾向にあることがわかった。そのほか、38℃以上の熱が出た患者は、症状のあった患者(730例)のうち10.3%(75例)、13~17歳の患者(300例)の約20%に、味覚・嗅覚異常がみられたことが示唆された。

アルツハイマー病スクリーニングのための網膜アミロイドイメージング

 アルツハイマー病のスクリーニングでは、アミロイド沈着のin vivoイメージングを行うための費用対効果に優れた非侵襲的な方法が求められる。網膜アミロイドは、アルツハイマー病の診断マーカーとなりうる可能性があるが、in vivoにおける網膜アミロイドイメージングに関する研究はほとんどない。岡山大学の田所 功氏らは、アルツハイマー病患者における網膜アミロイドのin vivoイメージングの有用性について調査を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2021年8月5日号の報告。

40代日本人女性、乳房構成ごとのマンモグラフィ+超音波の上乗せ効果

 現在、わが国における乳がん検診は、40歳以上に対する2年に1度の乳房X線検査(マンモグラフィ)が推奨されているが、高濃度乳房ではマンモグラフィによる精度低下が指摘されている。一方、超音波検査は乳房濃度に依存せず安価であり、乳がん検診への導入が期待されるが、有効性評価に関する研究は報告されていない。今回、40代の日本人女性を対象に、乳房構成ごとのマンモグラフィ+超音波検査併用による発見率・感度・特異度等を調べた大規模無作為化試験(J-START)の二次解析結果が報告された。東北大学の原田 成美氏らによるJAMA Network Open誌8月18日号への報告より。

認知症のBPSDに対するタンドスピロンの有効性

 愛媛大学の越智 紳一郎氏らは、認知症の周辺症状(BPSD)に対するタンドスピロン(buspironeを改良したazapirone系抗不安薬)の有効性について、とくに超高齢者をターゲットとして検討を行った。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2021年8月31日号の報告。  2013年8月~2018年8月に特別養護老人ホームでBPSDを有する高齢者を対象として、オープンラベル観察研究を行った。認知症の重症度の評価には臨床的認知症尺度(CDR)、BPSDの重症度の評価には臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory-12(NPI-12)を用いた。主要アウトカムは、ベースラインからタンドスピロン維持療法到達4週間後のBPSD重症度の変化とした。タンドスピロンは、30mg/日から開始し、1日3回に分けて投与した。2週間後に看護記録に基づき有効性が十分であると確認された場合、タンドスピロンの投与を継続し、有効性が不十分な場合、タンドスピロンを40~60mg/日へ増量した。

麻酔を用いた出産と産後うつ病との関連~JECS研究

 産後うつ病は、出産後の女性が経験する最も一般的な精神疾患の1つであり、多くは1年以内に発症する。名古屋市立大学の鈴森 伸宏氏らは、日本において麻酔を用いた分娩が産後うつ病リスクの減少に影響を及ぼすかについて、検討を行った。BMC Pregnancy and Childbirth誌2021年7月23日号の報告。  麻酔を用いた分娩には、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下硬膜外麻酔、傍頸管ブロックを含めた。日本におけるプロスペクティブコホート研究であるJECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に登録された日本全国15地域の胎児記録データ10万4,065件を用いて検討を行った。麻酔の有無にかかわらず分娩様式と出産後1、6、12ヵ月の産後うつ病との関連について調整オッズ比(aOR)を算出するため、二項ロジスティック回帰分析を用いた。

慢性片頭痛予防に対するフレマネズマブの有効性~日韓共同第III相試験

 慢性片頭痛に利用可能な予防的治療は、さまざまな有効性および安全性の問題により制限されている。片頭痛の病因に関連するカルシトニン遺伝子関連ペプチド経路を標的とするモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、大規模な国際第III相臨床試験において、効果および忍容性の高さが確認されている。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本人および韓国人の慢性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性について、評価を行った。Headache誌オンライン版2021年7月29日号の報告。

統合失調症と双極性障害を鑑別する多遺伝子リスクスコアと病前知能との関連

 統合失調症と双極性障害は、臨床的および遺伝的に類似している疾患であるにもかかわらず、統合失調症患者の知能障害は、双極性障害患者よりも重篤である。統合失調症と双極性障害を鑑別する遺伝子座(つまり統合失調症に特異的なリスク)は特定されている。統合失調症に特異的なリスクに対する多遺伝子リスクスコア(PRS)は、健康対照者よりも統合失調症患者で高くなるが、知能障害に対する遺伝的リスクの影響は、よくわかってない。岐阜大学の大井 一高氏らは、統合失調症に特異的なリスクが、統合失調症および健康対照者の知能障害を予測するかについて調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2021年7月23日号の報告。

妊娠前の睡眠時間と産後うつ病~日本での多施設共同研究

 産後うつ病は、世界における主要な公衆衛生上の問題であり、臨床的優先事項として挙げられている。名古屋大学の松尾 聖子氏らは、妊娠前の睡眠時間と産後うつ病との関連について、調査を行った。Archives of Women's Mental Health誌オンライン版2021年7月13日号の報告。  日本の産婦人科病院12施設より収集した2014~18年に出産した女性の臨床データを用いて、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。対象女性1万5,314人を妊娠前の睡眠時間に応じて5群に分類した(6時間未満、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9時間以上)。妊娠前の睡眠時間が産後1ヵ月間のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)のスコアに影響を及ぼすかを判断するため、単変量および多変量回帰分析を行った。また、産後うつ病リスクが、妊娠前の睡眠時間に応じて分類された女性において、以前の出産経験の有無により異なるかについても評価した。

糖尿病薬物治療で最初に処方される薬は/国立国際医療研究センター

 糖尿病の治療薬は、さまざまな種類が登場し、患者の態様に合わせて治療現場で処方されている。実際、2型糖尿病患者に対して最初に投与される糖尿病薬はどのような治療薬が多いのだろうか。  国立国際医療研究センターの坊内 良太郎氏らのグループは、横浜市立大学、東京大学、虎の門病院の協力のもとこの実態について全国規模の実態調査を実施した。調査の結果、最初の治療薬としてDPP-4阻害薬を選択された患者が最も多く、ビグアナイド(BG)薬、SGLT2阻害薬がそれに続いた。

日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。  首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。

悪性胸膜中皮腫に対するmiRNA製剤を開発/広島大学

 広島大学大学院医系科学研究科・細胞分子生物学研究室の田原 栄俊氏、 同大学原爆放射線医科学研究所・腫瘍外科の岡田 守人氏らの研究グループは、スリーディマトリックスと共同で、悪性胸膜中皮腫に対して顕著な治療効果の可能性がある核酸医薬の抗がん剤の開発に成功した。  共同開発した抗がん剤「MIRX002」は、天然型マイクロRNAを薬効成分とするもので、 岡田氏による悪性胸膜中皮腫を対象とする医師主導治験(第I相試験)の治験届がPMDAに受理され、治験開始準備が整った。

コロナ感染経路不明者、リスク高い行動の知識が不足/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異株による感染拡大の勢いが止まらない。  感染の主役は、COVID-19ワクチン接種を終えた高齢者にとって代わり、50代以下の若年・中年層へと拡大している。  こうした働き盛り、遊び盛りのこれらの年代の陽性者が、どこで、どのように感染しているのか。「感染経路不明」とされる事例の解明は、感染の封じ込め対策で重要な要素となる。  国立国際医療研究センターの匹田 さやか氏(国際感染症センター)らの研究グループは、入院時に感染経路が不明であった事例を対象に調査を行い、その結果をGlobal Health & Medicine誌に発表した。

初発統合失調症に対する薬理学的治療アルゴリズム~日本臨床精神神経薬理学会

 初回エピソードの統合失調症に対する治療アルゴリズムは、十分ではない。さらに、すべてのアルゴリズムは、急性期治療の適応であって、維持療法には当てはまらない。慶應義塾大学の竹内 啓善氏らは、初回エピソード統合失調症のための急性期および維持期の治療アルゴリズムの作成を試みた。Human Psychopharmacology誌オンライン版2021年7月9日号の報告。  日本臨床精神神経薬理学会のアルゴリズム委員会は、初回エピソード統合失調症の急性期、興奮状態、維持期における薬理学的治療アルゴリズムを作成した。  主な結果は以下のとおり。

日本における抗うつ薬とCBT併用療法による費用対効果

 うつ病治療において認知行動療法(CBT)の併用は、最初から行うべきか、薬物治療で寛解が得られない患者に行うべきかについて、慶應義塾大学のYoshihide Yamada氏らは、費用対効果の面から検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年6月17日号の報告。  うつ病治療において、最初からCBTと薬物療法を併用したCOMBファースト戦略と、まずは薬物療法で治療を開始し、寛解が得られない場合にCBTを併用したADファースト戦略において、どちらの治療戦略の費用対効果が高いかを調査した。分析を行うため、マルコフモデルを開発した。主要アウトカムは、104週における質調整生存率(QALY)当たりの増分費用対効果(ICER)とした。臨床パラメータに関連する不確実性と結果に対するCBTコストの影響を調査するため、それぞれ確率的感度分析とシナリオ分析を実施した。

ビタミンBと認知症リスクに関する性差~日本のメモリークリニック外来患者での調査

 認知症や認知機能障害は、重大な社会的および医学的な問題の1つである。ビタミンBと認知機能低下には明確な関係が認められるが、男女間の差に関しては、十分な評価が行われていない。昭和大学の三木 綾子氏らは、性別によるビタミンB1またはB12と認知症との関連を調査した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年4月9日号の報告。  2016年3月~2019年3月に昭和大学病院のメモリークリニック外来を受診した188例を対象に、性別によるビタミンB1またはB12と認知症との関連を調査した。認知機能の評価には、ミニメンタルステート検査(MMSE)日本語版、改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)を用いた。

HBOCにおけるリスク低減乳房切除術、実施割合の高い女性は?/日本乳癌学会

 わが国では2020年4月、乳がんもしくは卵巣がんの既往歴のある遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)女性に対するリスク低減乳房切除術(RRM)とリスク低減卵巣卵管摘出術(RRSO)が保険適用された。今回、保険適用となる前のJOHBOCデータを用いて、HBOC女性のRRM実施状況を分析した結果について、国立病院機構四国がんセンターの大住 省三氏が第29回日本乳癌学会学術総会で報告した。子供がいる女性、乳房のサーベイランスを実施した女性、RRSOを実施した女性では、RRM実施割合が高かったという。

日本人高齢者の認知症発症とソーシャルサポートとの関連

 認知症患者数は、増加を続けており、日本においても2025年には700万人に達するといわれている。認知症の発症予防やマネジメントにおいて、個人レベルの支援に加え、コミュニティレベルのソーシャルサポートが注目されている。日本福祉大学の宮國 康弘氏らは、マルチレベルの生存分析を用いて、コミュニティレベルのソーシャルサポートと認知症発症との関連を調査した。BMJ Open誌2021年6月3日号の報告。  2003年に設立された日本老年学的評価研究のプロスペクティブコホート研究を用いて、コミュニティレベルのソーシャルサポートと認知症発症との関連を調査した。対象は、公的介護保険の給付を受けていない愛知県(7市町村)在住の65歳以上の高齢者1万5,313人(男性:7,381人、女性:7,932人)。認知症発症は、ベースラインから3,436日間にわたる公的介護保険データを用いて評価した。