日本発エビデンス|page:39

日本人反復性片頭痛患者に対するガルカネズマブの治療満足度~第II相試験

 京都・立岡神経内科の立岡 良久氏らは、反復性片頭痛の予防に対しガルカネズマブ(GMB)を投与された日本人患者の治療満足度(4~14ヵ月間の1ヵ月当たりの片頭痛日数)について、評価を行った。Neurology and Therapy誌2021年6月号の報告。  この第II相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、日本の医療機関40施設において、18~65歳の片頭痛患者が登録された。対象患者は、プラセボ群230例、GMB皮下注120mg(GMB120群)115例、GMB皮下注240mg(GMB240群)114例にランダムに割り付けられ、6ヵ月間の投与を行った。治療に対する印象は、患者による重症度の改善度(PGI-S)、患者による全般印象度の改善度(PGI-I)、薬剤に対する患者の満足度質問票(PSMQ-M)を用いて評価した。PGI-Sはベースライン時および1~6ヵ月、PGI-Iは1~6ヵ月、PSMQ-Mは1および6ヵ月目に評価を行った。GMB群とプラセボ群におけるPGI-Iスコアの違い、PGI-Sスコアのベースラインからの変化、PGI-IとPSMQ-Mのポジティブな反応を評価するため、分析を行った。

抗精神病薬で治療された統合失調症患者における非アルコール性脂肪性肝疾患リスク

 統合失調症患者のメタボリックシンドローム有病率は、一般集団よりも高いことはよく知られているが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率については、あまり知られていない。下総精神医療センターの是木 明宏氏らは、抗精神病薬で治療された統合失調症患者におけるNAFLDリスクについて、調査を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2021年6月4日号の報告。  腹部エコー検査を実施した統合失調症および統合失調感情障害患者253例の医療記録を分析した。

日本人進行乳がん患者でのアベマシクリブの安全性(MONARCH2、3)/日本乳癌学会

 ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんに対するアベマシクリブの国際共同第III相試験であるMONARCH2試験(内分泌療法既治療例におけるフルベストラントとの併用)とMONARCH3試験(1次治療における非ステロイド性アロマターゼ阻害薬との併用)で、日本人集団で多く発現した有害事象を詳細に検討した結果について、国立病院機構大阪医療センターの増田 慎三氏が第29回日本乳癌学会学術総会で発表した。  2つの試験における日本人の割合は、MONARCH2試験では14.2%(669例中95例)、MONARCH3試験では10.8%(493例中53例)であった。アベマシクリブ群でみられた有害事象において、日本人集団では下痢、好中球減少症、ALT上昇、AST上昇が比較的多く観察されている。増田氏らは、実地診療でアベマシクリブを使用する際の毒性管理に有用な情報を見いだすために、これらの有害事象について詳細に検討した。

日本における婚姻状況と認知機能との関連~富山県認知症高齢者実態調査

 敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、日本における婚姻状況と認知症との関連について検討を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2021年5月25日号の報告。  分析には、富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いた。富山県在住の65歳以上の高齢者より1,171人(サンプリング率:0.5%)をランダムに選択し、分析を行った。対象者の婚姻状況、社会経済的状況、ライフスタイル要因、生活習慣病について評価を行った。各ライフスタイル要因と病歴に対する婚姻状況のオッズ比(OR)は、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。認知症に対する婚姻状況のORも、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。

PTSDの悪夢に対するトリヘキシフェニジル治療の有効性

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、悪夢やフラッシュバックを特徴とする、外傷性イベント後に発症する可能性のある不安障害である。この悪夢やフラッシュバックの根底にあるメカニズムは解明されておらず、抗うつ薬や抗精神病薬を含むいくつかの薬剤が治療に用いられている。そごうPTSD研究所の十河 勝正氏らは、抗コリン薬ブチルスコポラミン臭化物によるケーススタディに続いて、PTSD関連の悪夢やフラッシュバックに対する中枢性抗コリン薬の効果について、検討を行った。Brain and Behavior誌2021年6月号の報告。

日本のトラック運転手の不眠症に関連する因子

 トラック運転手の不眠症は、交通事故リスクの増加につながる重大な問題である。秋田大学の宮地 貴士氏らは、日本のトラック運転手における不眠症の有病率を調査し、不眠症に関連する因子を特定するため、検討を行った。Nature and Science of Sleep誌2021年5月18日号の報告。  対象は、65歳未満の男性トラック運転手2,927人。自己記入式質問票を用いて、不眠症状、状態-特性不安尺度(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)、飲酒・喫煙習慣、BMI、カフェイン摂取量、毎日の運転時間、連続して自宅から離れた日数、走行距離に関する情報を収集した。不眠症状には、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒を含め、これらいずれかの症状が毎日観察された場合を不眠症と定義した。

東洋人のうつ病関連因子~日本での調査

 地域コミュニティにおけるうつ病に対する効果的な対策を検討するうえで、国や文化圏において、うつ病に関連する個人的および社会経済的要因を包括的に特定する必要がある。しかし、日本および東洋諸国の中年住民を対象とした研究は、十分ではない。慶應義塾大学の吹田 晋氏らは、東洋の日本における中年住民のうつ病に関連する要因を特定するため、横断研究を行った。Medicine誌2021年5月14日号の報告。  西日本の地方自治体で生活する40~59歳のすべての地域住民を対象に、アンケート調査を実施した。アンケートには、人口統計学的特徴、心理的要因、健康関連行動、社会経済的要因に関する項目を含めた。まず、うつ病と各因子との関連を分析するため、カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定を行った。次に、うつ病と関連因子の包括的な関連を特定するため、ロジスティック回帰分析を実施した。

日本人CVD高齢者のMCI検出に対するRDST-Jの有用性

 心血管疾患(CVD)を有する高齢者では、認知機能低下が認められることが多く、このことでセルフマネジメント能力を低下させる可能性がある。しかし、軽度認知障害(MCI)を鑑別するための方法は、臨床現場で常に実行可能であるとは限らない。名古屋大学の足立 拓史氏らは、認知症の認知機能低下を簡易的に判定する検査ツールRapid Dementia Screening Test日本語版(RDST-J)を用いることで、MCI検出が可能かを評価した。Journal of Geriatric Cardiology誌2021年4月28日号の報告。

日本における統合失調症患者の早期再入院の減少につながる院内看護

 統合失調症は、精神症状の再発を特徴とする疾患である。統合失調症入院患者の15~30%は、退院後90日以内に自傷行為、他傷行為、セルフネグレクトにつながる症状の悪化により再入院している。椙山女学園大学の牧 茂義氏らは、統合失調症患者の早期再入院減少につながる院内看護の構造およびその予測因子を調査するため、横断的研究を行った。PLOS ONE誌2021年4月30日号の報告。  調査対象は、日本の精神科病棟に勤務する正看護師724人。統合失調症患者の早期再入院の減少につながる院内看護について評価するため、質問票を新たに作成した。質問票を用いて、項目分析、探索的因子分析を行い、早期再入院減少につながる院内看護の構造を調査した。

急性期統合失調症におけるルラシドンの有効性と安全性

 千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、日本および世界各国における急性期統合失調症に対するルラシドンの有効性を評価するため、検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年4月23日号の報告。  18~74歳の統合失調症患者483例を対象に、ルラシドン40mg/日(ルラシドン群)またはプラセボ群にランダムに割り付けた。有効性の主要エンドポイントは、6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化とし、副次的エンドポイントは、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの変化とした。安全性のエンドポイントには、有害事象、検査値、心電図のパラメータを含めた。

コロナワクチン後の抗体価、上がりやすい因子と上がりにくい因子/千葉大

 千葉大学病院は6月3日、ファイザー社の新型コロナワクチンを2回接種した同病院の職員1,774人の抗体価を調べたところ、ほぼ全員で抗体価の上昇が見られ、同ワクチンの有効性が確認されたと発表した。千葉大によると、ワクチンへの抗体反応を調べる研究としては現時点で最大規模と見られるという。  本研究は、千葉大学医学部附属病院と千葉大学医学研究院が連携して設置した「コロナワクチンセンター」で実施された。ファイザー社の新型コロナワクチン「コミナティ筋注」を接種した同院職員を対象とし、1回目接種前および2回目接種後に各々採取した血液から抗体価を測定した。

精神疾患に対する向精神薬の投与回数と臨床アウトカム~メタ解析

 慶應義塾大学の菊地 悠平氏らは、精神疾患に対する向精神薬の1日1回投与と分割投与の有効性および安全性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2021年2月23日号の報告。  投与レジメンおよび向精神薬に関連するキーワードを用いて、2019年12月30日までに公表された文献を、MEDLINEおよびEmbaseよりシステマティックに検索した。精神疾患患者に対する向精神薬の1日1回投与と分割投与の臨床アウトカムを比較したランダム化比較試験を選択した。研究の中止、精神病理、治療による有害事象(TEAE)に関するデータを抽出した。

日本における認知症高齢者に対するエビデンスベースの作業療法の実践と影響要因

 日本では、認知症患者数が急速に増加しており、エビデンスベースの作業療法(EBOT)に対するニーズが高まっている。このEBOTについて、認知症に対する臨床的改善効果が報告されている。北海道大学の長谷川 愛氏らは、日本の認知症患者に対するEBOTの現在の実践状況を調査し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、検討を行った。Hong Kong Journal of Occupational Therapy誌2020年12月号の報告。  認知症患者の治療を行っている作業療法士432人を対象に、郵送にて匿名の自己報告アンケートを実施した。記述統計データを整理し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、重回帰分析を行った。

国内コロナ患者へのCT検査実施率とVTE発症の実態は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者での血栓症が世界的に報告されている。日本国内でもその状況を把握するために種々のアンケート1)2)が実施されてきたが、発症率や未診断症例(under-diagnosis)に関する詳細は不明であった。そこで、京都大学の山下 侑吾氏らは画像診断症例を対象にCOVID-19症例の静脈血栓塞栓症(VTE)発症の実態を正確に調査するレジストリ研究を実施した。その結果、以下4点が明らかになった。

がん通院中患者の新型コロナ抗体量は低値、投与薬剤によって差も/国がん

 国立がん研究センターとシスメックスは、2021年6月2日、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけて500人のがん患者と1,190人の健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査した。  その結果、新型コロナウイルスの罹患歴のない対象では、がん患者、健常人共に抗体保有率は低く、両群で差がないことがわかった。一方、抗体の量は、健常人と比較し、がん患者で低いことが明らかになった。これは年齢、性別、合併症の有無、喫煙歴といった因子で調整しても有意な差を認めた。

あのエクササイズゲームの治療効果は?

 任天堂のエクササイズゲーム『リングフィット アドベンチャー(RFA)』は、慢性腰痛患者における痛みの自己効力感を高め、痛みを軽減する可能性があることが、千葉大学のTakashi Sato氏らによって報告された。著者らは「痛みの自己効力感の改善を目的にした治療プロトコールの開発が望まれる」としている。本研究は、Games for Health Journal誌オンライン版2021年4月22日号に掲載された。  近年、エクササイズの治療効果に関する研究が増加しているが、慢性腰痛症に対するこれらのタイプの介入に関する研究は多くない。したがって本研究では、エクササイズゲーム RFAが慢性腰痛患者に有用であると仮定し、前向き無作為化縦断研究を実施した。

日本においてアルツハイマー病の重症度が介護費用などに及ぼす影響

 アルツハイマー病は、社会的費用を増加させ、患者のADLやQOLを低下させる。東京大学の芦澤 匠氏らは、日本の高齢者施設におけるアルツハイマー病の重症度がADL、QOL、介護費用にどのような影響を及ぼすかについて、検討を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌2021年号の報告。  対象は、47の高齢者施設に入所しているアルツハイマー病患者3,461例。患者のADL、QOL、アルツハイマー病の重症度は、それぞれBarthel Index(BI)、EuroQoL-5D-5L(EQ-5D-5L)、ミニメンタルステート検査(MMSE)を用いて評価した。年間介護費用は、患者のレセプトデータを用いて推定した。対象患者は、MMSEスコアに従って、軽度(MMSE:21~30)、中等度(MMSE:11~20)、高度(MMSE:0~10)の3群に分類した。3群間の違いは、Jonckheere-Terpstraテストを用いて評価した。

日本の小児期自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対するアリピプラゾールの52週間市販後調査結果

 大塚製薬のYuna Sugimoto氏らは、日本の実臨床現場における小児自閉スペクトラム症(ASD)患者の易刺激性に対するアリピプラゾールの安全性および有効性について、市販後調査のデータを用いて評価した。BMC Psychiatry誌2021年4月22日号の報告。  本市販後調査は、52週間の多施設プロスペクティブ非介入観察研究として実施された。6~17歳のASD患者に対し、実臨床下でアリピプラゾール1~15mg/日を投与した。  主な結果は以下のとおり。

新型コロナ既感染者、1年後の抗体保有状況は?/横浜市立大

 横浜市立大学の山中 竹春氏(学術院医学群 臨床統計学)率いる研究グループは、「新型コロナウイルス感染12ヵ月後における従来株および変異株に対する抗ウイルス抗体および中和抗体の保有率に関する調査」の記者会見を5月20日に開催。回復者のほとんどが6ヵ月後、12ヵ月後も従来株に対する抗ウイルス抗体および中和抗体を保有していたことを報告した。  本調査は同大学が開発した「hiVNTシステム」を用いて、新型コロナウイルス感染症からの回復者(2020年2~4月に自然感染した既感染者で、研究への参加同意を取得)約250例を追跡した国内最大規模の研究である。2021年3月末までの期間に採血・データ解析を行い、感染から6ヵ月後と12ヵ月後の抗ウイルス抗体と中和抗体の保有率を確認した。従来株(D614G)ならびに変異株4種[イギリス株(B.1.1.7)、ブラジル株(P.1)、南アフリカ株(B.1.351)、インド株(B.1.617)]を調査した。中和抗体の測定はシュードウイルス法を用いて行われた。