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不眠症患者に対するスボレキサントの安全性プロファイル~市販後調査サブグループ解析

 スボレキサントは、不眠症治療に用いられるデュアルオレキシン受容体拮抗薬である。MSD株式会社の佐野 秀樹氏らは、日常でみられるさまざまな初期治療下におけるスボレキサントによる不眠症治療の安全性プロファイルと臨床経過を明らかにするため、検討を行った。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2019年9月3日号の報告。  市販後調査(PMS;2015~17)より、スボレキサントによる初期治療時の患者の状態に基づき、睡眠薬未治療群(N群)、これまでの睡眠薬からの切り替え群(S群)、追加投与群(A群)、その他(O群)に分類し、サブグループ解析を行った。

加齢や疲労による臭い、短鎖脂肪酸が有効

 2019年9月11日、「大腸劣化」対策委員会が主催するメディアセミナーが開催され、松井 輝明氏(帝京平成大学健康メディカル学部 教授)が「『大腸劣化』を防ぐ短鎖脂肪酸のパワーについて」講演を行った。セミナー後半では沢井 悠氏(株式会社サイキンソー)、関根 嘉香氏(東海大学理学部化学科 教授)2名の専門家がそれぞれの視点から腸内細菌叢の重要性を語った。  大腸劣化とは、『大腸に多く存在する腸内フローラが、偏った食生活やストレス・睡眠不足などによって老廃物や有害物質が作られることで正常な機能が保てなくなり、最終的には大腸がんなどの大腸疾患のみならず全身の健康リスクにまで発展すること』を意味する。

アルツハイマー病患者における抗コリン薬の不適切な使用

 認知症でよくみられるアルツハイマー病は、通常、アセチルコリンレベルを上昇させる薬剤で治療を行う。コロンビア・Universidad Tecnologica de PereiraのLuis Fernando Valladales-Restrepo氏らは、アルツハイマー病と診断された患者に使用された抗コリン作用を有する薬剤の特定を試みた。Geriatrics & Gerontology International誌2019年9月号の報告。  コリンエステラーゼ阻害薬およびグルタミン酸N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬で治療されたアルツハイマー病外来患者を、コロンビアの国民データベースより特定し、横断的研究を実施した。抗コリン作動性負荷は、抗コリン作用評価尺度を用いて評価し、抗コリン作用に応じて軽度~中等度または重度に分類した。

免疫チェックポイント阻害薬の効果、抗菌薬投与で減弱?

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果を左右する興味深い知見が発表された。広域抗菌薬(ATB)療法によって引き起こされるディスバイオシスが、ICIの効果を減弱する可能性があるという。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドン、ハマースミス病院のDavid J. Pinato氏らが、実臨床でICI治療を受ける患者を対象に前向き多施設コホート研究を行い、ICI投与前のATB投与により、全生存期間(OS)および奏効率が悪化したことを示した。著者は「ICI治療予後不良の決定要因として、ATBを介した腸内細菌叢の変化の解明が喫緊の課題である」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月12日号掲載の報告。

転移TN乳がんへのアテゾリズマブの効果、PD-L1検査法が重要(IMpassion130)/ESMO2019

 PD-L1陽性の転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する1次治療として、nab-パクリタキセル(PTX)への抗PD-L1抗体アテゾリズマブの追加による臨床ベネフィットを示したIMpassion130試験。本試験におけるPD-L1陽性は、VENTANA PD-L1 SP142アッセイを用いて判定している。今回、本試験のサンプルを用いて、SP142アッセイのほか、VENTANA SP263 IHCアッセイ、Dako PD-L1 IHC 22C3アッセイでの分析結果と無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を評価したところ、SP142陽性の患者群において臨床ベネフィットが最大であることが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が発表した。

患者との“分かり合えなさ”は埋まるか 「医療マンガ大賞」創設

 いくら説明しても患者に伝わらない、そんなコミュニケーション・ギャップを感じることはあるだろうか。  2019年9月30日、神奈川県横浜市は、医療に関するコミュニケーション・ギャップの改善を目的に、「医療マンガ大賞」を創設。その記念トークイベントを開催した。  「医療マンガ大賞」は、横浜市の医療広報の一環として、患者や医療従事者が体験したエピソードを基にそれぞれの視点の違いを描く漫画を公募する取り組みだ。患者と医療従事者では同じ出来事でも受け取り方が異なるが、それぞれの視点からの捉え方を漫画にすることで、互いの視点の違いへの気づきや共感を促すことを目的としている

インスリン療法開始時の選択肢にも有用ーゾルトファイ配合注

 インスリン療法時の低血糖回避が血糖コントロール不良を招き、心疾患の発症に影響を及ぼすことがある。このようなジレンマを新たな薬剤が解決してくれるかもしれない-。  2019年9月26日、ノボノルディスクファーマがゾルトファイ配合注フレックスタッチの発売を記念してプレスセミナーを開催。綿田 裕孝氏(順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学 教授)が「インスリン デグルデク/リラグルチド(IDegLira):2型糖尿病治療の新たな選択肢」と題して、新薬の有用性について語った。

大腸がん、末梢神経障害を考えるならCAPOX3ヵ月療法

 これまでに、大腸がんに対するFOLFOX療法およびCAPOX療法の3ヵ月投与の6ヵ月投与に対する非劣性は報告されているが、オキサリプラチン併用化学療法は、末梢性感覚ニューロパチー(PSN)と関連することが知られている。国立がん研究センター東病院の吉野孝之氏らは、StageIII大腸がん患者を対象とした無作為化非盲検第III相臨床試験「ACHIEVE試験」において、長期持続性PSNの発生率は6ヵ月投与法より3ヵ月投与法で、またmFOLFOX6療法よりもCAPOX療法で、有意に低いことを明らかにした。

ブロナンセリンのドパミンD3受容体への作用

 ブロナンセリンは、リスペリドンやオランザピンなどの他の抗精神病薬と異なり、セロトニン5-HT2A受容体よりもドパミンD2/D3受容体に対する高い親和性を有する薬剤である。名城大学の竹内 佐織氏らは、動物モデルで観察された社会的欠損に対するブロナンセリンの効果へのドパミンD3受容体の関与を調査し、その作用の分子メカニズムの解明を試みた。Neurochemistry International誌2019年9月号の報告。  マウスに、非競合的N-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬であるフェンシクリジン(PCP、10mg/kg、皮下注射)を1日1回14日連続投与した。その後、これらのマウスにおける社交性(社会的相互作用テスト)およびGluN1サブユニット(NMDA受容体の必須サブユニット)の発現を評価した。

FGFR阻害薬pemigatinibが胆管がんで高い奏効率(FIGHT-202)/ESMO2019

 独・ハノーヴァー医科大学のVogel.A氏は、既治療で線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体2(FGFR2)融合/再構成遺伝子を有する進行胆管がんに対する分子標的治療薬pemigatinib投与は有用との第II相試験結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。pemigatinibはインサイト社が開発中のFGFR1、FGFR2、FGFR3の選択的チロシンキナーゼ阻害薬。FGFR2融合遺伝子は、胆管がんの10~16%に発現するとされる。

福井大、臨床実習を「見える化」するシステムを開発・販売

 2019年9月、福井大学はICTを使った臨床実習の管理システムを開発、発売すると発表した。医学部の5、6年生が病院に出向いて行う臨床実習は、いまだに紙で管理されているケースが多い。結果として、電子カルテとの連携が限られる、管理や評価が煩雑、双方向コミュニケーションに限界がある、など多くの問題点が生じていた。  今回発表した「F.CESS(エフ・セス)」は福井大学が学内ベンチャーと共同で開発。実習スケジュール管理、実習用カルテの記載、評価、学生と教員のコミュニケーション、他科連携など、従来さまざまな手段で行われてきた臨床実習周りの機能を一元的に管理できるようにした。

インフルエンザ発症リスクは喫煙者で5倍超

 喫煙者は、非喫煙者と比較してインフルエンザの発症リスクが高い可能性が示唆された。英国・ノッティンガム大学のLawrence Hannah氏らは、喫煙とインフルエンザ感染との関連をシステマティックレビューで調査し、結果をThe Journal of infection誌2019年8月26日号に報告した。  研究グループは、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、LILACS、Web of Scienceのデータベースを、それぞれ創刊から2017年11月7日までの期間検索し、関連するランダム化比較試験、コホート研究および症例対照研究を特定した。臨床症状からインフルエンザを定義した研究6件と、検査でインフルエンザウイルスが確認された研究3件が対象とされた。

不安障害に対するベンゾジアゼピン長期使用~メタ解析

 不安障害の治療ガイドラインでは、ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は認められていないが、実際の臨床現場では一般的に行われている。慶應義塾大学の新福 正機氏らは、不安障害に対するBZD長期使用に関するメタ解析を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌2019年9月号の報告。  不安障害患者に対する13週以上のBZD長期使用における有効性を検討したランダム化比較試験(RCT)またはRCT後の維持研究を対象とし、2019年5月までに公表された研究をPubMedより検索した。その後、ベースラインからエンドポイントまでのハミルトン不安評価尺度(HAM-A)スコアの変化、すべての原因による中止、副作用、パニック発作回数に関してメタ解析を行った。

ribociclib+フルベストラント、HR+/HER2-閉経後乳がんでOS延長(MONALEESA-3)/ESMO2019

 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)の閉経後進行乳がんに対する、ribociclib+フルベストラント併用療法の有効性を検討した第III相MONALEESA-3試験の最新結果が発表され、全生存(OS)期間を有意に延長したことが明らかになった。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、米国・David Geffen School of MedicineのDennis J. Slamon氏が発表した。ribociclibについては、HR+/HER2-の閉経前進行乳がんにおいて、内分泌療法との併用がOSを有意に延長したことがMONALEESA-7試験により示されている。

アベマシクリブ+フルベストラント、HR+/HER2-乳がんのOS延長(MONARCH-2)/ESMO2019

 ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんを対象とした、CDK4/6阻害薬アベマシクリブ+フルベストラントの併用療法とフルベストラント単独療法との比較試験(MONARCH-2試験)の結果が、スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・スタンフォード大学のGeorge W.Sledge氏によって発表された。 <試験概要> ・本試験は国際共同二重盲検第III相比較試験である。 ・対象:HR陽性HER2陰性乳がんで、術前ホルモン療法中か術後ホルモン療法の12ヵ月以内に再発・病勢進行(PD)が認められた症例、または進行再発がんに対する1次内分泌療法中のPD症例(閉経状況問わず。進行再発がんに対する化学療法薬の投与は認められていない)

オピオイド誘発性便秘わが国の実態(OIC-J)/Cancer Medicine

 オピオイド誘発性便秘(OIC)は、オピオイド疼痛治療で頻繁にみられる副作用だが、その発生率は報告によりさまざまで、十分に確立されているとはいえない。この発生率のばらつきは、臨床試験および横断研究におけるOICの診断基準の複数があることも要因である。  近年、大腸疾患の基準であるRome IVがOICの基準に取り入れられた。そのような中、Rome IV基準を用いた日本人がん性疼痛患者におけるOICの発生率を検討した多施設共同前向き観察研究の結果がCancer Medicine誌8月号で発表された。

統合失調症の認知機能に対する身体能力の影響

 統合失調症患者では、神経認知機能と身体能力が低下することがわかっているが、これら2つの因子の関連性を示すエビデンスは十分ではない。韓国・翰林大学校のJiheon Kim氏らは、統合失調症患者のさまざまな身体的パフォーマンスと認知機能との関連について、他の障害に関連する臨床症状を考慮したうえで、調査を行った。European Psychiatry誌2019年9月号の報告。  対象は、統合失調症患者60例。心肺持久力と機能的可動性の評価には、それぞれ踏み台昇降、supine-to-standing(STS)テストを用いた。実行機能とワーキングメモリの評価には、それぞれストループ課題、スタンバーグワーキングメモリ(SWM)課題を用いた。臨床症状の評価には、簡易精神症状評価尺度(BPRS)、うつ病自己評価尺度(BDI)、特性不安尺度(STAI)を用いた。神経認知に関連する予測因子を特定するために、関連する共変量で調整し、多変量解析を行った。

適切な治療法を届けたい、「バセドウ病治療ガイドライン2019」

 バセドウ病は1,000~2,000人に1人に発症する疾患であり、日常診療において遭遇率の高い疾患の1つである。なかでも、若い女性では約300人に1人が罹患しているとされ、妊娠中の検査で判明することも少なくない。  2019年5月、日本甲状腺学会によるバセドウ病治療ガイドラインが8年ぶりに改訂。本書は専門医だけではなく非専門医やそのほか医療者のバイブルになることを目的として作成されていることから、吉村 弘氏(伊藤病院/バセドウ病治療ガイドライン作成委員会委員長)に一般内科医にも知ってもらいたい改訂ポイントや「バセドウ病治療ガイドライン2019」の特徴について聞いた。