CLEAR!ジャーナル四天王|page:62

新しいセンサー式血糖測定器、血糖コントロールを悪化させずに低血糖を減少(解説:小川 大輔 氏)-601

糖尿病合併症の発症、進展の阻止には良好な血糖コントロールの維持と同時に低血糖の回避が重要である。とくに1型糖尿病の場合は、血糖管理のために頻回に指先を穿刺し血糖値を測定することが多いが、新しいセンサー式血糖測定器は1型糖尿病患者の福音となるかもしれない。そのような研究結果が最近Lancet誌に報告された。

LDL-コレステロール低下による心血管イベント抑制はスタチンだけではない!(解説:平山 篤志 氏)-600

動脈硬化の原因として、LDL-コレステロールの関与は実験的、疫学的にも20世紀初頭から明らかにされ、コレステロール低下によるイベント抑制試験も行われてきた。しかし、1994年に4S試験で全死亡をはじめとした心血管死、心筋梗塞の発症の抑制が示されたことを契機として、数多くのスタチンによる大規模臨床試験が発表されるようになった。

今のところ順調なapo(a)アンチセンス療法(解説:興梠 貴英 氏)-599

2015年に、心血管イベントおよび石灰化大動脈弁狭窄症のリスク因子であるLp(a)の血中濃度を低下させる、アンチセンス薬(IONIS-APO[a]Rx)の第I相試験の結果が報告された。本試験は、その続き(第II相試験)および元の薬剤にリガンドを結合させて特異的に肝細胞に取り込まれるように改変したもの(IONIS-APO[a]-LRx)の第I/IIa相試験の報告である。

気管支喘息への新規抗IL-5受容体抗体の治療効果は?(解説:小林 英夫 氏)-598

気管支喘息の有病率は減少していないが、本邦での年間死亡数は20年前に7千人を超えていたものが近年は2千人以下と減じた。その最大の理由として、吸入ステロイド薬の普及が挙げられる。しかし、高用量の吸入ステロイド薬ないし吸入ステロイド+長時間作用型β2刺激薬でもコントロールに難渋する重症・難治性気管支喘息が約1割でみられる。そこで、さらなる治療効果を求め、抗IgE抗体や抗interleukin-5(IL-5)抗体が臨床に登場した。新規抗IL-5抗体benralizumabは、Il-5のアルファサブユニット(IL-5Rα)を標的とするヒト化モノクローナル抗体で、受容体結合により抗体依存性細胞障害作用を発揮し、ナチュラル・キラー細胞を介し好酸球のアポトーシスを誘導する。すでに、第II相試験で好酸球性喘息の増悪を改善する効果が得られている。本論文では、benralizumabがプラセボ群に比して年間喘息増悪を有意に抑制すると報告している。

70歳以上高齢者に対する帯状疱疹サブユニットワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-596

帯状疱疹の罹患率や、その合併症である帯状疱疹後神経痛の発生率は、年齢とともに増加することが知られている。帯状疱疹を発症した場合、抗ウイルス薬の投与によって罹病期間を短縮することはできるが、帯状疱疹後神経痛の減少効果は示されておらず、ワクチンによる予防効果が期待されてきた。日本や米国では、50歳以上の成人に対して帯状疱疹の予防に生ワクチンが認可されているが、帯状疱疹の予防効果は50%程度とそれほど高くなく、さらに年齢とともに有効性が低下することが指摘されていた。

NORSTENT試験:人は冠動脈のみにて生くるものにあらず(解説:中川 義久 氏)-594

「人はパンのみにて生くるものにあらず」という言葉を皆さんは耳にしたことがあると思います。聖書の「マタイによる福音書」の有名な一節です。人は物質的な満足だけを目的として生きるものではなく、精神的なよりどころが必要であるといった意味合いでしょうか。医学界における位置付けは聖書にも近いともされるNEJM誌から、「人は冠動脈のみにて生くるものにあらず」というありがたい教えがもたらされました。

非虚血性収縮不全の心不全例に対する予防的ICDは予後を改善しない(解説:今井 靖 氏)-591

植込み型電気除細動器(ICD)は、虚血性・非虚血性心不全のいずれにおいても、心室細動・血行動態の破綻を伴う心室頻拍の既往例の再発予防(2次予防)として、また既往がなくともそのリスクが高い症例の予防(1次予防)として適応され、国内外いずれのガイドラインでも推奨・考慮される治療法として掲げられている。

転ばぬ先の杖:TAVIに対する脳血管保護デバイス(解説:香坂 俊 氏)-590

脳血管系の合併症は、だいたい1.5~2.0%の心臓外科手術に起こるとされていて、頻度はそれほど高くないのだが、個人的には避けたい合併症No.1である。実は、頻度からすると「心不全」のほうが術後合併症として起こる確率は高いのだが、こちらはなんとか対応できるイメージなのに対して、脳血管系の合併症は起こってしまうと「本当にどうにもならない」という拭い難いネガティブなイメージが付いてまわる。

ピオグリタゾンと膀胱がんの関連はいかに…(解説:吉岡 成人 氏)-589

2016年3月末、英国のプライマリケアのデータベースを利用して、14万5,806例の新たに治療を開始した2型糖尿病患者を解析したデータにおいて、ピオグリタゾン投与群ではそれ以外の薬剤治療群と比較してハザード比で1.63(95%信頼区間:1.22~2.19)倍、膀胱がんの発症が多いことがBritish Medical Journal誌に報告された。

観察研究の限界超えられず:CLARIFY登録観察研究(解説:桑島 巖 氏)-588

冠動脈疾患合併の高血圧症例では、過度な降圧によってかえって心血管予後が悪くなるという、いわゆるJカーブ論争というのが古くからあるが、本研究はそれをぶり返す論文である。すなわち、登録時および観察中の血圧が120mmHg以上では心血管死、心血管合併症は増えるものの、120mmHg未満であっても予後は悪化するという結論である。

糖尿病患者は血圧が低いほうが心筋梗塞になりにくい?しかし降圧治療による結果ではない(解説:桑島 巖 氏)-586

SPRINT試験は、高リスク高血圧患者の降圧目標に関して、収縮期血圧120mmHg未満が140mmHg未満よりも心血管イベントおよび心血管死が少ないという結果を示し、話題をさらったことは記憶に新しい。しかし、SPRINT試験では糖尿病合併例は除外されていた。ACCORD-BP試験で収縮期血圧120mmHg未満の群と140mmHg未満の群で心血管合併症発症に有意差が見られなかったとの理由からである。

転移性脳腫瘍に対するSRSは、SRS+WBRTに比べて認知機能障害が少ない(解説:中川原 譲二 氏)-584

 全脳照射は、定位放射線照射後の腫瘍コントロールを改善するが、認知機能障害を合併するため、転移性脳腫瘍治療におけるその役割については、論争がある。1~3個の転移性脳腫瘍を有するがん患者では、SRS単独はSRS+WBRTに比べ認知機能の悪化割合が低いことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul D Brown氏らの無作為化臨床試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年7月26日号に掲載された。

INTERSTROKE研究:脳卒中はどこまで予防できるか?(解説:有馬 久富 氏)-583

INTERSTROKE研究は、脳卒中の危険因子を検討した大規模国際共同ケース・コントロール研究である。アジア、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、中東、アフリカの32ヵ国からリクルートされた、発症5日以内の急性期脳卒中患者1万3,447例と性・年齢をマッチしたコントロール1万3,472例を対象として、10の危険因子(高血圧、定期的な運動、アポリポ蛋白B/A1比、食習慣、ウエスト・ヒップ比、心理社会的要因、喫煙、心疾患、飲酒、糖尿病)が脳卒中発症に及ぼす影響を検討した。その結果、これらの危険因子の人口寄与危険割合(PAR)は90.7%であった。つまり、以前から知られている10の古典的危険因子を取り除く、あるいはきちんと治療することにより、現在起こっている脳卒中の約90%を予防できる可能性が示されたわけである。