世界の低体重・肥満、約30年でどう変化した?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2024/03/15

 

 低体重と肥満は、生涯を通じて有害な健康アウトカムと関連している。国際共同疫学研究グループのNCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)が、200の国と地域の成人ならびに学童/若年者における、低体重または痩せと肥満の複合有病率の1990~2022年の変化について解析し報告した。ほとんどの国で低体重と肥満の二重負荷(double burden)が肥満の増加により増しているが、南アジアとアフリカの一部では依然として低体重または痩せが多いという。研究グループは、「肥満の増加を抑制し減少に転じさせる一方で、低体重の負荷への対処には、栄養価の高い食品へのアクセスを強化することによる健康的な食事への移行が必要である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年2月29日号掲載の報告。

2億2,200万例のデータをプール解析

 研究グループは、200の国と地域における1990~2022年の、身長と体重の測定値がある地域住民を対象とした研究3,663件、合計2億2,200万例のデータを統合し、階層ベイズモデルを用いてメタ回帰分析を行った。

 主要アウトカムは、低体重(20歳以上の成人)または痩せ(5~19歳の学童/若年者)と肥満それぞれの有病率、ならびに複合の有病率とした。成人では、BMI値18.5未満を痩せ、BMI値30以上を肥満、学童/若年者では、BMI値がWHO成長基準の中央値より2 SDを下回っている場合を痩せ、2 SDを上回っている場合を肥満と定義した。

低体重または痩せ+肥満の複合有病率は、男女とも約7~8割の国や地域で増加

 1990~2022年に、成人における低体重+肥満の複合有病率が減少(観察された変化が真の減少である事後確率は少なくとも0.80)した国は、女性では11ヵ国(6%)、男性では17ヵ国(9%)であった。一方、複合有病率が増加(事後確率が少なくとも0.80)した国は、女性では162ヵ国(81%)、男性では140ヵ国(70%)であった。2022年において、低体重+肥満の複合有病率は、ポリネシア、ミクロネシア、カリブ海の島国、中東および北アフリカの国で最も高かった。

 2022年に、女性では177ヵ国(89%)、男性では145ヵ国(73%)において、肥満の有病率が低体重の有病率より高かった(事後確率は少なくとも0.80)が、女性で16ヵ国(8%)、男性で39ヵ国(20%)ではその逆であった。

 1990~2022年に、学童/若年者における痩せ+肥満の複合有病率は、女子では5ヵ国(3%)、男子では15ヵ国(8%)で減少(事後確率は少なくとも0.80)し、それぞれ140ヵ国(70%)および137ヵ国(69%)で増加(事後確率は少なくとも0.80)した。2022年において、学童/若年者の痩せ+肥満の複合有病率が最も高かった国は、女子がポリネシア、ミクロネシア、カリブ海の島国、男子がポリネシア、ミクロネシア、カリブ海の島国、チリおよびカタールであった。インドやパキスタンなどの南アジアの一部の国でも、痩せが減少しているにもかかわらず複合有病率は高かった。

 2022年に、女子では133ヵ国(67%)、男子では125ヵ国(63%)で、学童/若年者の肥満の有病率が痩せの有病率より高く(事後確率が少なくとも0.80)、その逆はそれぞれ35ヵ国(18%)および42ヵ国(21%)であった。

 成人ならびに学童/若年者の両方において、ほぼすべての国で、二重負荷(低体重または痩せと肥満の複合有病率)の増加は肥満の増加によって、減少は低体重または痩せの減少によって引き起こされていた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)