水分摂取増やしても、CKDの進行抑制できず/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2018/05/18

 

 成人の慢性腎臓病(CKD)患者において、飲水量の増加を指導しても、通常の飲水量を維持するよう指導した場合と比較し、1年後の腎機能低下に有意な影響は認められなかった。カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のWilliam F. Clark氏らが行った無作為化試験「CKD WIT(Chronic Kidney Disease Water Intake Trial)」の結果、明らかになった。これまで、観察研究では飲水量の増加が良好な腎機能と関連することが示唆されていたが、飲水量の増加がCKD患者にとって有益かどうかについては不明であった。JAMA誌2018年5月8日号掲載の報告。

CKDステージ3の患者631例を、飲水量増加群と通常量維持群に無作為化
 CKD WIT試験は、2013~17年に、カナダ・オンタリオ州の9施設で実施された(最終追跡調査は2017年5月25日)。対象は、ステージ3(推定糸球体濾過量[eGFR]30~60mL/分/1.73m2で、微量アルブミン尿または顕性アルブミン尿)、かつ24時間尿量が3.0L未満のCKD患者631例で、介入群と対照群に無作為に割り付けられた。

 介入群には、飲水量を増やすよう指導し(性別や体重に合わせて、通常より1日1.0~1.5L多く飲水する)、対照群には、通常の飲水量を維持、または無作為化前の24時間尿量が1.5L/日より多く24時間尿浸透圧が500mOsm/kg未満の場合は飲水量を1日0.25~0.5L(カップ1~2杯)減らすよう指導した。

 主要評価項目は、腎機能の変化(無作為化後12ヵ月時点のベースラインからのeGFRの変化)、副次評価項目は血漿コペプチン濃度、クレアチニンクリアランスおよび24時間尿中アルブミンの1年間の変化、患者評価による健康の質(腎疾患特異的QOL尺度[KDQOL-SF]の22項目:0点[最悪]~10点[最良]で評価)などであった。

1年間のeGFR低下、両群で有意差なし
 631例(平均年齢65.0歳、男性63.4%、平均eGFR 43mL/分/1.73m2、尿中アルブミン中央値123mg/日)のうち、12例が死亡した(介入群5例、対照群7例)。

 1年間追跡しえた生存患者590例(介入群291例、対照群299例)において、24時間尿量の平均変化は、対照群に比べ介入群で0.6L/日の増加がみられた(95%信頼区間[CI]:0.5~0.7、p<0.001)。また、eGFRの平均変化では、介入群(311例)が-2.2mL/分/1.73m2、対照群(308例)が-1.9mL/分/1.73m2で、両群間に有意差は認められなかった(補正後群間差:-0.3mL/分/1.73m2、95%CI:-1.8~1.2、p=0.74)。

 副次評価項目の平均群間差(介入群vs.対照群)は、血漿コペプチン濃度-2.2pmol/L(95%CI:-3.9~-0.5、p=0.01)、クレアチニンクリアランス3.6mL/分/1.73m2(95%CI:0.8~6.4、p=0.01)、尿中アルブミン7mg/日(95%CI:-4~51、p=0.11)、健康の質0.2点(95%CI:-0.3~0.3、p=0.22)であった。

 なお、著者は、「臨床的に重要な差を検出するための検出力が不足していた可能性がある」としている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 木村 健二郎( きむら けんじろう ) 氏

地域医療機能推進機構東京高輪病院 院長

J-CLEAR評議員