乳がん検診へのマンモグラフィ導入の効果/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/10/21

 

 マンモグラフィによる乳がん検診導入後、大きな腫瘍の検出率が低下する一方で小さな腫瘍の検出率は増加し、腫瘍径分布としては好ましいものとなった。しかしこれは、小さな腫瘍が追加で多く発見されたことによるものであることが、米国・Dartmouth Institute for Health Policy and Clinical PracticeのH. Gilbert Welch氏らの検討で明らかにされた。著者は、「大きくなる可能性のある腫瘍が早期発見されることよりも、乳がんと過剰診断される可能性のほうがより増えたようだ」とまとめている。なお、マンモグラフィ検診導入後の乳がん死亡率の低下は、主に全身治療の進歩によることも示唆されたという。NEJM誌2016年10月13日号掲載の報告。

腫瘍径別の乳がん発症率や致死率を検診導入前後で比較
 研究グループは、米国の地域がん登録システムSEERプログラム(Surveillance, Epidemiology, and End Results program)のデータベースを利用し、1975~2012年における40歳以上の女性の乳がんについて、腫瘍径分布と腫瘍径別発症率を算出した。そのうえで、乳がん患者の腫瘍径別致死率を、マンモグラフィ検診が広く実施される以前(1975~79年)のベースライン期間と、実施後10年間の追跡データが入手可能な直近の期間(2000~02年)に分けて算出した。

乳がん死亡率減少の3分の2以上は治療の進歩によるもの
 マンモグラフィ検診導入以降、発見された乳房腫瘍のうち小さな腫瘍(2cm未満の浸潤がん、または非浸潤がん[上皮内がん])の割合は36%から68%に増加し、大きな腫瘍(2cm以上の浸潤がん)の割合は64%から32%に減少した。

 この傾向は、大きな腫瘍の発生頻度が大幅に低下(検診導入前に比べ導入後で、観察された乳がん症例は10万人当たり30減少)した結果というより、小さな腫瘍の検出が大幅に増加(検診導入後に10万人当たり162増加)したことによる。基礎疾患の負担は安定していたと仮定すると、新たに小さな腫瘍が発見された162例/10万人のうち、大きな腫瘍に進行すると予測されたのは30例/10万人で、残りの132例/10万人は過剰診断(すなわち、検診で発見されたのは決して臨床症状を引き起こさないであろうがん)であることが示唆された。

 また、検診による乳がん死亡率低下の可能性は、大きな腫瘍の発生率低下に反映されるが、2cm以上の大きな腫瘍に関していえば、乳がん死亡率低下の3分の2以上は治療の改善によるものであった(死亡率の低下が治療の改善による効果と推定されるのは17例/10万人、検診の効果と推定されるのは8例/10万人)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 下井 辰徳(しもい たつのり)氏/藤原 康弘( ふじわら やすひろ ) 氏

国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科

J-CLEAR推薦コメンテーター