明るい寝室で寝ることが肥満やうつ症状、全身性炎症と関連

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/01

 

 約3,000人の一般住民を対象に、睡眠中の寝室の明るさと健康指標との関連を検討した研究(平城京スタディ)から、明るい寝室で寝ている人には、肥満、脂質異常、全身性炎症、うつ症状、睡眠障害が多いという結果が報告された。奈良県立医科大学疫学・予防医学講座の大林賢史氏らの研究であり、詳細は「Environmental Research」に9月21日掲載された。

 寝室の明るさが健康リスクとなる可能性を示した研究は、過去にも報告されているが、それらは対象者数が限られていた。今回、大林氏らが実施した研究は、奈良県に居住する40歳以上の一般成人3,012人を対象とする大規模な疫学研究であり、照度計を用いて2日間にわたり睡眠中の寝室の明るさを測定した。

 解析対象は、照度計の設置位置が適当でないと判断された対象者などを除く2,947人(平均年齢69.3±7.8歳、女性60.6%)。睡眠中の寝室照度の中央値は1.0ルクスだった。照度の四分位値で全体を4群に分類すると、第1四分位群は0.2ルクス未満、第2四分位群は0.2~1.0ルクス、第3四分位群は1.0~4.0ルクス、第4四分位群は4.0ルクス以上だった。

 これら4群の健康指標を比較すると、以下の有意な関連が認められた。睡眠中の寝室照度が明るい群ほど、BMI、腹囲長、中性脂肪が有意に高値であり、HDL(善玉)コレステロールは有意に低値だった。また、睡眠障害(ピッツバーグ睡眠スコア6点以上)やうつ症状(老年期うつ尺度スコア6点以上)の割合が有意に高かった。これらの健康指標に影響を及ぼし得る因子(年齢、性、喫煙・飲酒・運動習慣、収入、教育歴、入床時刻、就床時間、睡眠薬・抗うつ薬の使用など)を調整した多変量解析でも、睡眠中の寝室の明るさがさまざまな健康リスクとなっている可能性が浮かび上がった。

 第4四分位群(最も寝室が明るい上位25パーセント)は第1四分位群(最も寝室が暗い下位25パーセント)に比べて、BMI(P=0.007)、腹囲長(P<0.001)、LDL(悪玉)コレステロール(P=0.015)が有意に高く、睡眠障害の割合も有意に高かった〔第4四分位群ではオッズ比(OR)1.43(95%信頼区間1.14~1.79)〕。さらに、10ルクスをカットオフ値として二群に分けて比較すると、寝室の明るさが明るい群は前述の指標に加えて白血球数が高値(P=0.041)で全身性炎症の亢進が示唆され、また、うつ症状を有するオッズ比が有意に高かった(P=0.047)。

 以上の結果から大林氏らは「3,000人規模の横断研究により、交絡因子を調整後も寝室の明るさが、肥満、脂質異常、全身性炎症、睡眠障害、うつ症状と有意に関連していることが示された。今後の追跡調査による縦断的研究が必要とされる」と総括。また、「寝室の明るさと白血球数の関連を示した研究は、本研究が初めて。白血球数は心血管死や全死亡の予測因子である」としている。なお、両者の関連のメカニズムについては、「夜間の光曝露による睡眠障害やメラトニン分泌の減少が白血球数を増加させたのではないか」と考察している。

[2022年11月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら