Long COVIDの原因は高レベルのサイトカイン産生?

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/04/01

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状(long COVID)が生じている患者では、通常はウイルスの除去に伴い産生されなくなるサイトカインの一種であるインターフェロン(IFN)-γが、長期にわたって高レベルで産生され続けていることが明らかになった。研究グループは、これがlong COVIDの根本的なメカニズムである可能性があると述べている。英ケンブリッジ大学医学部およびケンブリッジ治療免疫学・感染症研究所のBenjamin Krishna氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に2月21日掲載された。

 米疾病対策センター(CDC)が2023年9月に発表した最新データに基づくと、6.9%の米国人がlong COVIDを経験している。Long COVIDの症状として最も頻繁に挙げられるのは慢性的な倦怠感であるが、ブレインフォグや慢性的な咳などの症状も珍しくない。しかし、long COVIDがなぜ生じるのかについては解明されていない。

 今回の研究でKrishna氏らは、新型コロナウイルスのRT-PCR検査で陽性と判定されて入院した患者111人の転帰を追跡した。これらの患者は、陽性判定から28日目(51人)、90日目(20人)、180日目(40人)のいずれかの時点で血液検体を採取されており、55人がlong COVIDを発症していた。これらの血液サンプルに、2019年10月以前に採取された新型コロナウイルスに曝露していない54人の血液サンプルを合わせて、解析を行った。

 その結果、新型コロナウイルスに感染すると、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIFN-γの産生レベルが急上昇することが明らかになった。IFN-γのレベルは、COVID-19の症状が治まった患者では次第に減少していったが、症状が長引いたlong COVID患者では高いままであった。また、long COVID患者で新型ワクチンの接種前後でのIFN-γのレベルを比較したところ、ワクチン接種後にレベルが低下し、それが一部の症状の消失と関連することが示された。

 Krishna氏は、「IFN-γはC型肝炎などのウイルス感染症の治療薬に使われているが、副作用として倦怠感、発熱、頭痛、筋肉痛、抑うつなどの症状を引き起こすことが知られている。これらの症状はlong COVIDに特徴的な症状でもある。われわれにとってこのことも、IFN-γの産生レベル上昇がlong COVIDの原因であることを支持する証拠だと思われた」と説明している。

 では、何がIFN-γ産生レベルの上昇を引き起こすのだろうか。研究グループがさらに研究を進めたところ、CD8陽性T細胞とCD14陽性単球の2種類の免疫細胞の相互作用がIFN-γの過剰産生の鍵を握っていることが明らかになった。

 こうした結果を受けてKrishna氏は、「われわれは、long COVIDの根底にあると思われるメカニズムを発見した。この発見がlong COVIDの治療法開発に道を開くとともに、一部の患者に確実な診断を下す一助となることを期待している」と話している。

 ただしKrishna氏は、IFN-γの産生増加というメカニズムだけがlong COVIDの発症要因とは言い切れない点を強調している。例えば、先行研究では微小血栓の形成もlong COVIDの原因である可能性が示唆されている。Krishna氏は、「さまざまなLong COVIDの症状が全て同じ原因により引き起こされているとは考えにくい」として、微小血栓を原因の一つと見なすことは理にかなっていると述べている。

 Krishna氏は、long COVID患者の血中のIFN-γ濃度を確認して、症状が長引くのか、徐々に回復するのかなどのサブタイプに分類することで、治療を個別化できる可能性があるとの考えを示している。

[2024年2月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら