20分強の身体活動でも座位時間の悪影響を相殺できる可能性

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2023/11/17

 

 座位時間が長い人では死亡リスクが高まるが、1日にわずか20分強の中強度から高強度の身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を行うことで、そのリスクを相殺できる可能性が、新たな研究で示唆された。ノルウェー北極大学(UiT)のEdvard Sagelv氏らによるこの研究の詳細は、「British Journal of Sports Medicine」に10月24日掲載された。Sagelv氏は、「何らかの理由で1日の大半を座位で過ごす人でも、少量の身体活動を行うことで死亡リスクは大幅に低減し得る」と述べている。

 Sagelv氏らは、ノルウェー、スウェーデン、米国で実施された4件の前向きコホート研究のデータ(対象者の総計は1万1,989人、女性50.5%)を用いて、MVPAが座位時間と死亡リスクとの関連にどのような影響を及ぼすのかを検討した。腰に装着する加速度計で計測された対象者の1日当たりの身体活動量と座位時間のデータを用いて、いずれも中央値を基準に、座位時間は10.5時間未満の「短い」と10.5時間以上の「長い」で、身体活動量は「22分未満」と「22分以上」で分類した。

 中央値5.2年の追跡期間中に対象者の6.7%(805人)が死亡していた。解析の結果、1日当たりのMVPAが22分未満の人では、1日当たりの座位時間が8時間の場合と比べて、12時間の場合だと死亡リスクが38%(ハザード比1.38、95%信頼区間1.10〜1.74)、13時間の場合だと98%(同1.98、1.53〜2.57)上昇することが明らかになった。一方、1日当たりのMVPAが22分以上の人では、1日当たりの座位時間が12時間以上でも死亡リスクの上昇は認められなかった。死亡リスクは座位時間の長短に関係なく、MVPAの時間が長いほど低下していたが、この関連にはMVPAの量が大きく影響していることも示された。例えば、MVPAを1日10分増やした場合の死亡リスクの低下の幅は、1日当たりの座位時間が10.5時間未満の人では15%であるのに対し、座位時間が10.5時間以上の人では35%であった。

 ただし、本研究により、身体活動が死亡リスクを低下させることが証明されたわけではなく、両者の関連性が示されたに過ぎない。それでも、本研究には関与していないTrue Health Initiativeの代表を務めるDavid Katz氏は、「この研究は、われわれが自身の身体から活力を得るためには、まずは体を動かすことが必要なことを再確認するものだ」と述べている。

 Sagelv氏は、先進国の多くでは、成人が1日に9〜10時間も、その大部分は仕事のために、座位で過ごしていると説明する。そのため、一部の職場では、立ってでも座ってでも仕事ができるような場所を設けたりするなど、座位時間を減らすための試みがなされている。これに対して、仕事以外の時間に、人々に身体活動を行うための安全な場所を提供することはより困難であると同氏は指摘する。同氏は、安全にサイクリングやウォーキングを行える場所や、都市に緑地を増やすことの必要性に言及し、「公的資金をもっと投入して安全に運動できるスペースを増やせば、より多くの疾患予防につながり、それが早期死亡の減少につながる」と主張している。

 なお、Sagelv氏によれば、MVPAとは、一般に考えられているほど激しい運動ではなく、安静時よりもやや呼吸の上がる程度の身体活動だということだ。MVPAの例としては、早歩きする、普通のペースで坂道を上る、普通のペースで自転車を漕ぐ、ガーデニングをする、子どもと遊ぶ、などが挙げられるという。さらに同氏は、「運動を始めるのに遅過ぎるということはない。活動的であればあるほど、筋力や心臓の健康の低下を防ぐことができる」と強調している。

[2023年10月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら