長時間作用型の抗HIV薬は患者を問わず有効な可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/08/09

 

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症患者では、30年近く前から、抗レトロウイルス薬の毎日の服用が、AIDS(後天性免疫不全症候群)発症を抑える上で非常に効果的な方法となっている。しかし患者の中には、薬物中毒や精神疾患などの理由で毎日の服薬が困難な者もいる。こうした中、新たな研究で、長時間作用型の抗レトロウイルス薬の注射により、ほぼ全ての患者が完全な防御を得られる可能性が示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ベイエリア・エイズ研究センター(CFAR)のMonica Gandhi氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に7月4日掲載された。

 Gandhi氏は、「注射による抗レトロウイルス療法(ART)を望むHIV感染症患者は多い。おそらく、錠剤を飲むことに嫌気がさしている患者や、生活上の困難が多過ぎて錠剤を飲めない人などがそれに該当するだろう」と話す。

 抗HIV治療における最初の長時間作用型注射レジメンであるCabenuva(一般名カボテグラビルおよびリルピビリン)は、2021年1月に米食品医薬品局(FDA)により承認された。Cabenuvaは月に1回、または高用量を隔月に1回、投与するものだが、現時点での投与対象は、ウイルス量が抑制されている患者に限定されている。これは、毎日の錠剤服用が困難なためにウイルス量が抑制されていない患者を対象に、長時間作用型ARTの有効性を評価する研究が、いまだ実施されていないためだ。

 Gandhi氏らは、2021年6月から2022年11月にかけて、米サンフランシスコ在住のHIV感染症患者133人を対象に長時間作用型ARTによる治療を行い、その有効性を検証した。対象者の年齢中央値は46(四分位範囲25〜68)歳で、88%がシスジェンダー(出生時の性別と性自認が一致)であり、62%が白人以外の人種だった。また、76人は経口ARTによりウイルス量が抑制されていたが、残る57人は経口ARTを受けておらず、ウイルス量が抑制されていなかった。さらに、34%の患者は物質使用障害を抱えており、42%がホームレスであった。なお、対象者はいずれもGandhi氏が所属するUCSFのHIV専門クリニックであるWard 86の患者だった。Ward 86では目下、約2,600人の患者が治療を受けているが、その多くは貧困で、ほとんどがメディケイド加入者であるという。

 長時間作用型ARTによる治療の結果、ウイルス量が抑制されていた対象者では、全員が試験終了時まで、引き続きウイルス量が抑制されていることが明らかになった。一方、試験開始時にウイルス量が抑制されていなかった対象者では、治療開始から中央値33日後に57人中54人でウイルス量が抑制されていることが確認された。残る3人のうちの1人ではHIVのRNA量が予想通り100分の1にまで減少したが、その他の2人は早期に治療が奏効しないと判断された。

 Gandhi氏は、「対象患者の多くで、初めてウイルス量を抑制することができた」と強調し、「特に、ホームレスの患者は、経口薬を持ち歩く必要がなく、月に1回、あるいは2カ月に1回、クリニックで注射を受ければ良い点に非常に満足していた」と付け加えた。

 Gandhi氏によると、より規模の大きな臨床試験がすでに計画されているとのことだ。同氏は、「この大規模臨床試験の結果次第では、FDAが、錠剤服用が困難で、すでに体内のウイルス量が多い患者に対しても、長時間作用型ARTによる治療を承認する可能性がある」と期待を寄せている。

[2023年7月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら