健康的なプラントベース食は地球にも優しい

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/15

 

 植物由来の食品で構成されたプラントベースの食事(以下、プラントベース食)は人々の健康だけでなく環境にも良い影響を与える。ただし、その有益性はどのようなプラントベース食でも同じというわけではないことが、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のAviva Musicus氏らの研究によって明らかになった。この研究結果は、「The Lancet Planetary Health」11月号に掲載された。

 プラントベース食は、種類によって健康への影響が異なることが、すでに先行研究で示されていた。しかし、温室効果ガスの排出量、質の高い農地利用、肥料由来の窒素排出量、かんがい用水の利用状況など、プラントベース食が環境面に与える影響も異なるのかどうかについては、これまでほとんど検討されていなかった。

 そこで、Musicus氏らは今回、米国の女性看護師を対象とした疫学研究であるNurses' Health Study IIのデータを用いて、9万884人を対象に摂取している食品が心疾患などの健康に与える影響と、6万5,625人を対象に摂取している食品が環境に与える影響について分析した。対象者の摂取している食事内容を、代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index 2010;AHEI-2010)、プラントベースの食事の指標(plant-based diet index;PDI)、不健康なPDI、健康的なPDIの4種類の食事指標で評価し、5群に分類した。

 その結果、AHEIスコアが最も高い群では最も低い群に比べて心血管疾患リスクが低く(相対リスク0.77)、温室効果ガスの排出量が30%少なく(CO2量に換算すると2.6kg対3.7kgに相当)、必要とする農地やかんがい用水、肥料も少ないことが明らかになった。同様に、健康的なPDIおよびPDIのスコアの最も高い群では最も低い群に比べて、心血管疾患リスクが低く(相対リスクは同順で、0.71、0.74)、温室効果ガスの排出量、農地やかんがい用水、肥料の使用量も有意に少なかった。これに対して、不健康なPDIスコアが最も高い群では最も低い群に比べて、心血管疾患のリスクが高く(相対リスク1.15)、必要とする農地や肥料の使用量が有意に多かった。

 Musicus氏らは、「これらの結果は、アニマルベース食、特に赤肉や加工肉の多い食事は、プラントベース食と比べて環境に有害な影響をもたらし得ることを示した先行研究の結果を強く支持するものでもある」と説明している。

 なお、この研究から明らかになった、健康と環境の両面に最も良い影響を与えるプラントベース食とは、全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、マメ類、植物性の油、紅茶やコーヒーで構成された食事であった。反対に、慢性疾患のリスク上昇に関連し、環境への負担も増すプラントベース食とは、果汁のジュースや加糖飲料、精製された穀類、ジャガイモ、スイーツやデザートが多いものであるという。

 Musicus氏は、「さまざまなプラントベース食を比べたところ、その違いは驚くべきものだった。というのも、プラントベース食は例外なく健康的で環境にも良いと言われることが多いからだ。しかし、実際は少々異なるようだ」と話す。その上で同氏は、「誤解のないように言っておくと、われわれは、ヘルシーではないプラントベース食が、動物由来の食品を中心とした食事よりも環境に悪いと主張しているわけではない。ただ、今回の研究では、プラントベース食が健康や環境に与える影響は、その内容により差のある可能性が示された」と説明している。

 この論文の共著者であるDong D. Wang氏は、「究極的には、人間の健康状態は地球の健康状態に依存しているため、今後の米国の食事ガイドラインでは、環境維持を考慮すべきだ。また、全てのプラントベース食が、健康や環境に同様のベネフィットをもたらすわけではない点についても認識しておく必要がある」と指摘している。

[2022年11月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら