食事時間制限法がシフト勤務者に良い可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/10/28

 

 食べ物を摂取してよい時間を制限する「食事時間制限法(Time-Restricted Eating;TRE)」は減量方法の一つとして広く知られているが、この食事法がシフト勤務者の健康にも良い可能性のあることが、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医学部教授で心臓病専門医のPam Taub氏らによる消防士を対象とした研究で示された。研究結果は、「Cell Metabolism」10月号に発表された。

 TREは、毎日決まった時間帯のみに食物を摂取し、それ以外の時間帯にはカロリーフリーの飲み物以外は口にしてはならないという、断続的断食の一種だ。カロリー計算をする必要はなく、時計を見るだけで済むシンプルさから、TREは減量法として人気がある。また、食べ物を摂取してよい時間帯を制限(6時間の制限が多い)することで体重を数キロ落とせることが小規模研究で示されている。

 さらにTaub氏によると、TREには減量の他にもベネフィットがあるという。例えば、同氏らによる最近の研究では、TREによって肥満の人の体重が減少しただけでなく、悪玉コレステロールの値が低下。しかも、その低下度は減量によって期待されるレベルを上回っていたという。

 Taub氏らは今回の研究で、24時間シフト制で働くサンディエゴの137人(23〜59歳、女性9%)の消防士を対象に、TREが健康に良い影響をもたらすかどうかを検討した。Taub氏は、「シフト勤務者の不規則な勤務スケジュールは、体重増加や高血圧、糖尿病、心疾患といった心血管代謝疾患のリスクを高める。そのため、シフト勤務者を対象とした研究を実施することは重要だ」と話す。人間の体内には概日リズムがあって、日中に活動して食物を摂取し、暗い時間帯には食物は摂取せずに眠るといった行動を決定付けているが、シフト勤務はこうしたリズムを狂わせる。

 対象者は、12週間にわたって通常のスケジュールで食事を取る群(通常食事群)とTREを行う群(TRE群)にランダムに割り付けられた。食事を取る時間帯は、通常食事群では平均14時間だったが、TRE群では食事を取ってもよい時間を10時間に制限した。なお、いずれの群も果物や野菜、魚、食物繊維が豊富な穀類、オリーブ油などの良質な脂質を主体とした地中海食を取ることが奨励された。

 12週間にわたる介入の結果、TRE群では試験開始時と比べて食事を取る時間帯が平均14.14時間から11.13時間に短縮した。また、TRE群では通常食事群に比べて、生活の質(QOL)が改善し、超低密度リポタンパク質(VLDL)のサイズの有意な減少が認められた。さらに、TRE群のうち、血糖値が高い人と拡張期血圧が高い人を対象にサブグループ解析を行ったところ、HbA1c値と拡張期血圧が介入後に低下することが示され、心血管リスクに対するTREのある程度の効果が確認された。TRE群に割り付けられた消防士から疲労などの任務の遂行を妨げるような症状が問題となったとの報告もなかった。

 ただし、TREそのものがこうした効果をもたらしたのかどうかははっきりしないと指摘する専門家もいる。断続的断食に関する研究を行っている米イリノイ大学教授のKrista Varady氏は、この研究に参加した消防士らが地中海食を推奨されていたことに言及し、「それが血糖値や血圧の改善につながった可能性がある」との見方を示している。また同氏は、サブグループ解析の対象となった高血糖や高血圧の消防士の人数が少なかったため、解析結果の信頼性が低いことなども指摘している。

 Taub氏は、現時点で言えることとして、「TREは、シフト勤務者が取り組めるシンプルな対策の一つとなることを示すエビデンスが得られた」と説明している。Varady氏も、「減量を考えている人たちにとってTREはシンプルなアプローチであり、やってみる価値はある」としながらも、「減量以外の健康効果に関しては、今のところほとんどエビデンスはない」と付け加えている。

[2022年10月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら