ウェアラブル活動量計で健康状態が向上する可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/08/30

 

 フィットネストラッカーや歩数計、スマートウォッチといったウェアラブル型の活動量計には、運動への意欲を高め、減量を促す効果を期待できる。そう結論付ける研究結果を、南オーストラリア大学(オーストラリア)のCarol Maher氏らが、「The Lancet Digital Health」8月号に発表した。Maher氏は、「ウェアラブル活動量計は、日々の活動量を増やし、軽度の減量の達成に導く安価で便利なツールである」と話している。

 ウェアラブル活動量計の市場は大幅な拡大を続けている。2014年から2020年までに販売されたウェアラブル活動量計の数は1,444%増加。2020年だけでウェアラブル活動量計の製品販売額は約30億ドル(1ドル132円換算で3960億円)に達している。

 Maher氏らは今回の研究で、論文データベースから抽出した39件のシステマティックレビューとメタアナリシス(研究参加者の総計は16万3,992人)のデータを解析した。その結果、こうしたウェアラブル活動量計を用いた活動量の測定によって運動への意欲が高まり、1日当たりの歩行時間が最大で40分延長(1日当たり約1,800歩の歩数の増加に相当)することが示された。また、それによって5カ月間に約1kg減量できることも分かった。さらに、ウェアラブル活動量計の使用によって、2型糖尿病などの疾患がある人の血圧値やコレステロール値が低下する可能性があることも示された。

 Maher氏は、「主要メディアでは、ウェアラブル活動量計に対して懐疑的な見方が示されることがある。こうしたデバイスを使って本当に変化が期待できるのか、むしろ使用することで後ろめたい気持ちになるなどネガティブな影響があるのではないか、といった見方がその例だ」と説明した上で、「われわれのレビューでは、ウェアラブル活動量計によって悪影響がもたらされるというエビデンスはいっさい認められなかった」と強調する。さらに同氏は、「血圧値やコレステロール値など他の生理学的アウトカムに関しても、明確な変化が認められた。そのベネフィットの大きさは、臨床的見地から意味のあるものだと結論付けるに足るものだった」と語る。

 今回報告された約1kgという体重の減少量を「たいしたことがない」とみる向きもあるかもしれない。しかし、Maher氏は、「レビューの対象となった研究は、ウェアラブル活動量計の減量効果に関するものではなく、身体活動への影響に着目したものであった点を認識しておくことが重要だ」と説明。「これらの研究の多くは、研究期間が3~6カ月間であった。一般人口で約2~3年かけて増加する体重がこの期間で相殺されることを考えれば、公衆衛生の観点からは意義があるといえる」と述べている。

 一方、米ペンシルベニア州立大学運動学教授のDavid Conroy氏は、「Maher氏らの研究で示されたベネフィットは活動量計のみによるものではなく、行動変容も寄与していた可能性がある」との見方を示している。また、同研究では活動量計の使用によるベネフィットが得られるまで、どの程度の期間が必要なのか、また、効果がどの程度持続するのかについて明らかにされていない点も指摘している。

 Conroy氏は、「ウェアラブル活動量計は身体活動を促すという面では有用だ。しかし、これらのデバイスはただのツールに過ぎない。エビデンスに基づいた行動変容プログラムを構成する上で重要な要素にはなるが、誰かの行動を変容させるために働いてくれるわけではない」との見解を示している。

 その上でConroy氏は、「活動量計が日常生活に身体活動を組み込みやすい生活習慣を作り上げる一助となれば理想的だが、活動量計だけではそれは不可能だろう。行動科学に根差した、良く考えられたエビデンスに基づくアプローチの一部として活動量計を使用した方が、持続的な身体活動量の増加がもたらされる可能性が高い」と話している。

[2022年7月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら