背が高いと病気のリスクも高い?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/07/11

 

 平均よりも背が高い人は、そのことに関連している遺伝因子がさまざまな疾患のリスクに影響を与える可能性があるという、新たな研究結果が発表された。米コロラド大学アンシュッツ医学キャンパスのSridharan Raghavan氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Genetics」に6月2日掲載された。

 身長と疾患リスクの関係については過去にも研究されており、高身長の場合に心房細動と静脈瘤のリスクが高く、反対に冠動脈性心疾患や高血圧、高コレステロール血症のリスクは低いことが報告されていた。今回の研究では新たに、高身長が末梢神経損傷や足の潰瘍などのリスクの高さと関連のあることが分かった。ただしRaghavan氏は、「背が高いからといって、これらの疾患をいずれ発症する運命にあるとは限らない。個人的には、高身長であることを変更不能な疾患リスク因子として、憂慮すべきではないと考える」と述べている。

 Raghavan氏はこの報告を、「身長と疾患リスクとの関連の研究のための基礎的な情報を提供するもの」としている。その上で、「この報告は今後の研究のスタートラインである。次のステップとして、まず、身長が疾患リスクと関連している可能性のある個人を特定する。次に、その疾患に対する修正可能な因子を見つけ出し、その因子への介入が高身長の人の疾患予防につながるのかを検討すべきである。また、身長と疾患リスクとの関連の生物学的メカニズムの解明も課題だ」と語っている。同氏によると、そのメカニズムは疾患ごとに異なると考えられ、「研究から得られる知見が、さらに新たな医学的研究テーマを生み出すのではないか」とのことだ。

 Raghavan氏は、「大半の疾患は複数の因子の組み合わせにより発症する。その因子のうち遺伝的因子は変更不能だが、修正可能なリスク因子に介入することで多くの疾患を予防できることは、数々の研究から明らかになっている。身長や家族歴などの変更不能なリスク因子は、その人の疾患リスクの高さを知るためには有用だが、その人の疾患発症が決定的であるという意味ではない」とも話している。

 Raghavan氏らはこの研究に、米国退役軍人省の医療関連データベースにある、非ヒスパニック系白人と非ヒスパニック系黒人の医療記録、および、ゲノムワイド関連解析(GWAS)のデータの解析から明らかにされた、身長に関連する3,290種類の遺伝子変異の情報を用いて、メンデルランダム化-フェノームワイド解析(MR-PheWAS)という解析を行った。非ヒスパニック系白人では、身長と関連する臨床的特徴が345種類見つかり、非ヒスパニック系黒人では17種類の特徴が見つかった。それらのうち前述のとおり、心房細動や静脈瘤に加えて末梢神経損傷などが、高身長の遺伝因子と有意な関連のある疾患として抽出された。

 この結果についてRaghavan氏は、「高身長に結び付く身体の成長と代謝が、健康の多くの側面に関連している。また、疾患リスクとの関連のメカニズムは生物学的プロセスに限らず、高身長による物理的影響もあると考えられる。例えば下肢の静脈循環障害について言えば、低身長の人よりも高身長の人の方が、血行動態への物理的な影響が大きいだろう」と述べている。

 この研究報告について、米ファインスタイン医学研究所のTodd Lencz氏は、「新たな研究で示された身長の疾患リスクに対する効果量はわずかであり、身長が高いことを心配して医師に相談すべきというレベルの話ではない」と語る。同氏によると、「大規模なサンプル数で検討すれば有意な関連が示されるかもしれないが、個人にとってはささいなものと言え、たいていは健康的な生活習慣を維持することでリスクを相殺できる」とのことだ。そしてLencz氏は、「タバコを吸わず、運動をして健康的な食生活を送ることは、誰にとっても良いことだ」と、アドバイスを付け加えている。

[2022年6月3日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら