グラム陰性菌血症への抗菌薬、早期経口スイッチの効果は?

提供元:ケアネット

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公開日:2024/02/14

 

 抗菌薬は多様な疾患に処方されており、経口投与は点滴投与と比較して医療者・患者負担が少ないが、その効果に違いはあるのか。合併症のないグラム陰性菌血症の患者を対象に、抗菌薬を早期に経口投与に切り替えた場合と静脈内投与を継続した場合の90日死亡リスクを比較した研究結果が発表された。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のSandra Tingsgard氏らによる本研究は、JAMA Network Open誌2024年1月23日号に掲載された。

 本試験は、対象試験エミュレーションの枠組みを用いて実施されたコホート研究で、2018年~21年、デンマーク・コペンハーゲンの4病院で診療を受けた合併症のないグラム陰性菌血症の成人の観察データを対象とした。追跡期間は90日間で、初回血液培養後4日以内に経口抗菌薬に切り替えた場合と、5日以上静脈内投与を継続した場合の90日全死因死亡率を比較した。絶対リスク、リスク差(RD)、リスク比(RR)推定のため、プールロジスティック回帰を用いてintention-to-treat解析およびper-protocol解析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・計914例(年齢中央値74.5歳、男性56.0%)が組み入れられ、433例(47.4%)が早期切り替え群、481例(52.6%)が長期静脈内治療群に割り付けられた。99例(10.8%)が追跡期間中に死亡した。
・長期静脈内治療群は、早期切り替え群と比較して年齢が高く、菌血症の進行がより重篤で、合併症の負担が大きかった。ベースライン時にこれらの差を調整し、per-protocol解析ではベースライン時の交絡因子と時間変動交絡因子の両方を調整し、割り当てられた治療戦略からの逸脱例は除外した。
・死亡率は、長期静脈内治療群のほうが高かった(69例[14.3%]対30例[6.9%])。intention-to-treat解析では、90日全死因死亡率は早期切り替え群で9.1%(95%信頼区間[CI]:6.7~11.6)、長期静脈内治療群で11.7%(95%CI:9.6~13.8)であり、RDはー2.5%(95%CI:ー5.7~0.7)、RRは0.78(95%CI:0.60~1.10)であった。per-protocol解析では、RDはー0.1%(95%CI:-3.4~3.1)、RRは0.99(95%CI:0.70~1.40)と、両群に差はなかった。

 研究者らは「4日以内の早期に経口抗菌薬へ切り替えた場合の90日全死因死亡率は、静脈内治療を継続した場合と同程度であり、早期の経口投与切り替えが効果的な代替手段となる可能性を示唆している」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)