スピロノラクトン、がんリスクはある?

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/02

 

 スピロノラクトンの使用とがんリスクに関連はあるのか。米国・マイアミ大学ミラー医学部のKanthi Bommareddy氏らは、メタ解析(452万8,332例のデータを包含)で関連を調べ、がんリスク増大との関連は認められず、前立腺がんについてはリスク低下との関連が認められたことを示した。著者は、「しかしながら、エビデンスの確実性は低く、若年者や、にきびあるいは多毛症を有するなど、多様な集団を対象としたさらなる検討が必要である」と述べている。

 スピロノラクトンは、もともとは心不全、高血圧症、浮腫の治療薬として承認されたが、にきび、化膿性汗腺炎、男性型脱毛症、多毛症の治療に適応外使用されるのが一般的となっており、米国FDAから腫瘍発生に関連する公式の警告が発せられている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年2月9日号掲載の報告。

 研究グループは、スピロノラクトンによる治療を受けた患者において、がんの発症、とくに乳がんと前立腺がんの発症をプールし、解析した。

 発刊から2021年6月11日までのPubMed、Cochrane Library、Embase、Web of Scienceを検索。選択試験の適格条件は、スピロノラクトンを投与された18歳以上の男女におけるがん発生について報告した、英語で書かれた論文とした。

 筆者である2人のレビュアーがそれぞれ試験の選択とデータ抽出を行い、Newcastle-Ottawa Scaleを用いてバイアスリスクを評価。包含試験はランダム効果メタ解析法を用いて統合し、がん発生(乳がんと前立腺がんにフォーカス)を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・7試験が適格基準を満たした。サンプルサイズは1万8,035例~230万例にわたり、被験者は総計452万8,332例で、平均年齢62.6~72.0歳。性別による層別化のない試験では、女性が17.2~54.4%を占めていた。
・全試験ともバイアスリスクは低いとみなされた。
・スピロノラクトンの使用と乳がんリスクに、統計学的に有意な関連性はみられなかった(リスク比[RR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.86~1.22、エビデンスの確実性:とても低い)。
・スピロノラクトンの使用と前立腺がんリスク低下に、関連性がみられた(RR:0.79、95%CI:0.68~0.90、エビデンスの確実性:とても低い)。
・スピロノラクトンの使用と卵巣がんリスクに、統計学的に有意な関連性はみられなかった(RR:1.52、95%CI:0.84~2.20、エビデンスの確実性:とても低い)。
・また、膀胱がん(RR:0.89、95%CI:0.71~1.07、エビデンスの確実性:とても低い)、腎臓がん(0.96、0.85~1.07、エビデンスの確実性:低い)、胃がん(1.02、0.80~1.24、エビデンスの確実性:低い)、食道がん(1.09、0.91~1.27、エビデンスの確実性:低い)についても、統計学的に有意な関連性はみられなかった。

(ケアネット)