避けたいワクチン接種時のケアレスミス/厚労省

提供元:ケアネット

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公開日:2021/11/12

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が全国で順調に行われ、満12歳以上への接種も始まり、3回目の接種についても細部が決まりつつある。また、インフルエンザの流行を控え、COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの接種というケースも散見されるようになってきた。こうした環境の中ではワクチン接種時の事故は避けたいものである。

 厚生労働省は、令和3年9月30日までに報告された予防接種の間違いの概要をまとめた「新型コロナ予防接種の間違いの防止について(その3)」を10月29日に全国の自治体に発出し、注意を喚起した。

 同省では、インフルエンザワクチンが多く接種される時期でもあり、これらの留意点を参考に、あらためて予防接種の手順を再確認することにより、間違いの発生防止とCOVID-19ワクチン接種の適切な実施に向けた取り組みを進めてほしいと記している。

一番多い接種上の間違いは「接種間隔」

1)間違いとして報告のあった回数(10万回当たり数)
延べ接種回数163,738,220回のうち
・間違い報告件数:1,805回(1.102)
・重大な報告件数:739回(0.451)
・上記以外の報告件数:1,066回(0.651)

2)間違いの態様別の上位5つ(10万回当たり数)
(1)接種間隔の間違い:526件(0.321)
(2)接種器具の扱いが不適切:350件(0.214)
(3)不必要な接種:246件(0.15)
(4)血液感染を起こし得る間違い:170件(0.104)
(5)接種量の間違い:99件(0.06)

トレイを分ける、声を出すなどでミスを防ぐ

 COVID-19ワクチン接種の具体的な3つの事例と対策、これら問題の背景を下記に紹介する。
〔事例1〕
1日の同じ時間帯の中で、COVID-19ワクチンの接種と他のワクチンの接種の両方が行われていた。
〔対策〕
可能な限り、COVID-19ワクチンと他のワクチンを接種する曜日や時間帯を分ける。

〔事例2〕
次のようなさまざまな理由により、同一の診察室内に、COVID-19ワクチンと他のワクチンが持ち込まれ、接種者の手が届く範囲に複数種類のワクチンが置かれた。
・同一の診察室で、新型コロナワクチンと他のワクチンの両方を接種している。
・本来は、COVID-19と他のワクチンと接種用の診察室を分けていたが、院内の都合でCOVID-19ワクチン仕様になり他のワクチンが持ち込まれた。
・本来は、ワクチンにより接種用の診察室を分けていたが、たまたま誘導員が間違えて誤った診察室に案内してしまった。
〔対策〕
1トレイに1種類(可能な限り、1トレイに1人分)のワクチンを準備することとし、診察室内において、接種者の手が届く範囲に異なる種類のワクチンを置かない。

〔事例3〕
接種者は、予診票の確認を行い他のワクチンの接種を受ける者であることを認識しながらも、無意識にCOVID-19ワクチンを手にとり接種してしまった。
〔対策〕
接種直前は一呼吸おき、接種者と被接種者とで接種するワクチン名を声に出して確認する。

【間違いの背景】
・同じ時間帯に新型コロナワクチンと他のワクチンの予約を受け付けており、物理的に患者が混在していた。
・接種者の手が届く範囲に、複数の異なる種類のワクチンが置かれていた。
・新型コロナワクチンの接種数が多く、接種に慣れてしまっていた(無意識、惰性で打ってしまった)。
・接種者が、接種直前に接種するワクチン名を確認していなかった。
※インフルエンザワクチンなどのバイアル製剤だけでなく、シリンジ製剤でも接種間違いは起こっている。

(ケアネット 稲川 進)

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