Stage I NSCLCにおける術後補助化学療法の効果/ASCO2019

提供元:ケアネット

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公開日:2019/06/25

 

 StageIの非小細胞肺がん(NSCLC)には異質性があり、再発を来すケースがある。しかし、これらの集団に対する術後補助化学療法には議論の余地がある。広島大学の津谷 康大氏らは、再発リスクによる病理StageI(pStage I)のNSCLCの術後補助化学療法の効果を分析し、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。

 肺葉手術で完全切除したpStageI NSCLC 1,278例を分析対象とした。再発高リスクはCox比例ハザードモデルにより、腫瘍径(浸潤径)2cm超、リンパ管侵襲あり、血管侵襲あり、臓側胸膜浸潤ありと定義した。評価項目は無再発生存期間(RFS)、全生存期間(OS)、がん特異的生存期間(CSS)とした。

 主な結果は以下のとおり。

[高リスク群と低リスク群の予後]

・5年RFSは低リスク群96.0%、高リスク群76.7%(HR:6.62、95%CI:4.18~11.10、p<0.0001)、5年OSは低リスク群96.0%、高リスク群85.7%(HR:3.99、95%CI:2.39~7.03、p<0.0001)と、いずれも高リスク群で不良であった。

[術後補助化学療法の効果]

低リスク群
・5年RFSは術後補助化学療法群98.1%、観察群95.7%(HR:0.47、95%CI:0.07~1.67、p=0.30)、5年OSは術後補助化学療法群98.0%、観察群95.6%(HR:0.50、95%CI:0.08~1.81、p=0.35)、5年CSSは補助療法群100%、観察群99.4%(HR:NA、p=0.52)と、いずれも統計学的な差は示さなかった。

高リスク群
・5年RFSは術後補助化学療法群81.4%、観察群73.8%(HR:0.63、95%CI:0.41~0.93、p=0.023)、5年OSは術後補助化学療法群92.7%、観察群81.7%(HR:0.28、95%CI:0.13~0.53、p<0.0001)、5年CSSは術後補助化学療法群95.0%、観察群89.5%(HR:0.34、95%CI:0.13~0.77、p=0.012)と、いずれも術後補助化学療法で有意に良好であった。
・高リスク群における化学療法をプラチナダブレットと単剤化学療法(以下、単剤)で比較したところ、5年RFSはプラチナダブレット群72.8%、単剤群83.3%(HR:1.45、95%CI:0.72~2.94、p=0.29)、5年OSはプラチナダブレット群72.8%、単剤群83.3%(HR:0.69、95%CI:0.32~4.98、p=0.69)と統計学的な差は認められなかったが、5年CSSについてはプラチナダブレット群89.9%、単剤群98.4%と単剤で良好であった(HR:8.92、95%CI:1.40~172.80、p=0.018)。

 同氏らは、腫瘍径(浸潤径)2cm超、リンパ管侵襲あり、血管侵襲あり、臓側胸膜浸潤ありは再発高リスク因子であること、術後補助化学療法は高リスク患者の生存を改善すること、pStageIのNSCLCにおける単剤化学療法と比べたプラチナダブレットの生存改善は認められなかったことを結論として示した。

(ケアネット 細田 雅之)