若年者の無症候性WPW症候群における致死的なイベントリスクは?【Dr.河田pick up】

提供元:ケアネット

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公開日:2018/05/23

 

 WPW(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群を持つ若年者は突然死のリスクがあり、無症候の若年WPW症候群患者のマネージメントについては長い間議論されてきた。

 この研究では、WPW症候群を持つ若年者のリスクの特性を調べるために、致死的なイベントを経験した患者とそうでない患者を比較している。米国・ユタ大学のSusan P. Etheridge氏らによる国際多施設共同研究で、JACC.Clinical Electrophysiology誌2018年4月号に掲載。

 この後ろ向きの多施設共同研究では、21歳以下のWPW症候群患者でEPS(電気生理学的検査)が行われた912人を同定した。症例群は致死的なイベント(LTE)を有した患者で、LTEは突然死、回避された突然死、そして心房細動中の最も短いRR間隔 (shortest pre-excited RR interval in atrial fibrillation:SPERRI)が250ms以下、もしくは心房細動中に血行動態が保てなくなったもの、と定義されている。対照群はそれらのイベントのない患者であり、両群の臨床的な特徴とEPSのデータを比較した。

致死的なイベントが起きた患者では、65%でLTEが初発症状
 症例群(96例)は年齢が高く、症状や頻拍の既往が少ない傾向にあった。LTEが起きた際の平均年齢は14.1±3.9歳であった。LTEが初発症状であったのが65%であり、そのうち早期興奮を伴った心房細動が49%、回避された突然死が45%、そして突然死が6%であった。EPSで同定された3つのリスクは最も短いRR間隔、副伝導路の有効不応期 (accessory pathway effective refractory period:APERP) 、そして心房ペーシング中の早期興奮が見られる最短のペーシング間隔 (shortest paced cycle length with pre-excitation during atrial pacing:SPPCL) であり、これら3つはいずれも症例群で、対照群より短かった。

致死的なイベントが起きた患者でも、37%でEPSのハイリスクな特徴を示さず
 多変量解析の結果、致死的なイベントのリスク因子は、男性、Ebstein奇形、早い順行伝導が可能な副伝導路(APERP、SPERRI、あるいはSPPCL≤250ms)、複数の副伝導路、心房細動が誘発されることであった。症例群の86例中60例(69%)がEPSの際に少なくとも2つ以上のリスク項目の評価を受けた。そして、そのうち22例(37%)がEPSでのハイリスクな特徴を示さず、15例(25%)ではリスクが高い副伝導路およびAVRT(房室回帰性頻拍)のいずれも有していなかった。

無症候の若年WPW患者でも突然死を起こす可能性有
 本研究では、若年WPW患者は症状やハイリスクな特徴を有さずとも、突然死を起こす可能性があると結論付けている。WPW症候群のマネージメントは有症候、無症候に分けて行われてきたが、このマネージメントが必ずしも適切とは言えないかもしれない。EPSは症状よりもリスク評価において正確であるが、完璧なツールではない。また、EPSと同時にアブレーションを行うのが一般的であり、EPS後に無作為化した前向き研究を行うことは現実的ではない(副伝導路をEPSのみ行い放置するのは、一般的に極めてまれである)。アブレーションのリスクは一般的に高くはないが、若年者の場合は全身麻酔等も必要で、心臓が成長することも考慮しなければならず、症例ごとに評価、家族との話し合いのうえで管理していくことが必要と考えられる。

(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)

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