IPF初ガイドライン 抗線維化薬治療の指針示す

提供元:ケアネット

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公開日:2017/03/08

 

 2017年3月1日、塩野義製薬株式会社主催の第3回「いのちを考える」メディアセミナーが都内で開催された。「変わる難病治療―国内初の特発性肺線維症(IPF)治療ガイドライン―」と題し、本セミナーでは杉山 幸比古氏(練馬光が丘病院 常勤顧問/自治医科大学 名誉教授)と本間 栄氏(東邦大学医学部内科学講座 呼吸器内科学分野 教授)が、「特発性肺線維症」(以下IPF)の治療とガイドラインについて解説を行った。

 IPFは、肺胞壁にできた傷を修復する過程で慢性かつ進行性の線維化が起こり、肺のガス交換が障害される疾患である。治療薬としては、2008年に抗線維化薬開発の火付け役ともいえるピルフェニドン(商品名:ピレスパ)、2015年にニンテダニブ(商品名:オフェブ)が発売され、抗炎症薬に代わる有用な治療薬として、これら二剤の抗線維化薬が利用可能となっている。では、抗線維化薬を用いた治療方針はどのように決定すればよいのだろうか。その指針となるべく、本年2月に国内初となるIPFの治療ガイドラインが刊行された。

 系統的レビューの結果、本ガイドラインにおいては、ピルフェニドン、ニンテダニブ共に慢性安定期の単剤治療として、「投与することを提案する(中程度のエビデンスに基づく弱い推奨)」と位置付けられる結果となった。二剤の使い分けに関する質問が出ると、杉山氏は「効果はほぼ同じで、副作用のプロファイルが違う。ピルフェニドンでは光線過敏症や胃障害、ニンテダニブでは下痢といった症状が特徴的であり、患者さんのライフスタイルや副作用の出方に合わせて薬剤を選択する」との回答を行った。

 2015年には新たな「難病医療費助成制度」が開始され、IPF患者のうち重症度I、IIの軽症患者でも、基準を満たす場合には軽症者特例として医療費助成を受けることができるようになった。本間氏いわく、助成対象となる重症度IIIになるまで症状の進行を待っていたIPF患者は多い。これらの患者に対して比較的軽症の段階から抗線維化薬による治療を開始することで治療効果が高まり、結果としてIPF全体の予後改善も見込まれるという。「ガイドラインや医療費助成制度を活用することで、より多くの患者さんが抗線維化薬の恩恵を受けることができる」と本間氏は今後の展望を述べた。

(ケアネット 細川 千鶴)