アリピプラゾールは急性躁病治療のファーストラインになりうるか

提供元:ケアネット

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公開日:2014/01/21

 

 急性躁病のファーストライン治療は薬物療法であり、まず初めに興奮、攻撃性、危険な行動を迅速にコントロールすることが目的とされている。非定型抗精神病薬アリピプラゾールは、躁病治療において、単独また他剤との併用いずれもが行われている。また、英国精神薬理学会(British Association of Psychopharmacology)のガイドラインでは、単独療法プラセボ対照試験において、アリピプラゾールを含む非定型抗精神病薬は急性躁病また混合性エピソードに有効であることが示唆されたとしている。そこで、英国・Oxford Health NHS Foundation TrustのRachel Brown氏らは、急性躁病症状または混合性エピソードの軽減について、アリピプラゾールの単独または他の抗躁薬との併用治療の有効性と忍容性を評価するとともに、プラセボまたは他剤との比較を行った。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年12月17日号の掲載報告。

 研究グループは、急性躁病症状または混合性エピソードの軽減について、アリピプラゾールの単独または他の抗躁薬との併用治療の有効性と忍容性を評価するとともに、プラセボまたは他剤との比較を行った。また、アリピプラゾール治療に対する受容性、有害反応、またアリピプラゾール治療患者における全死亡率なども調べた。

 評価は、Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Group's Specialised Registerにて2013年7月末以前に発表された文献を検索して行った。また、Bristol-Myers Squibb臨床試験レジスタ、WHO試験ポータル、ClinicalTrials.gov(2013年8月まで)の検索も行った。文献の適格基準は、急性躁病もしくは混合性エピソードの治療において、アリピプラゾールをプラセボあるいは他剤と比較した無作為化試験とした。2人のレビュワーがそれぞれ、有害事象など試験報告データを抽出し、バイアスを評価した。欠落データについては、医薬品製造会社または文献執筆者に問い合わせを行った。

 主な結果は以下のとおり。

・レビューには、10試験(被験者3,340例)のデータが組み込まれた。
・7試験(2,239例)が、アリピプラゾール単独療法とプラセボを比較したものであった。そのうち2試験が3比較アームを含んだ試験で、1試験はリチウムを(485例)、もう1つはハロペリドール(480例)を用いていた。
・2試験は、アリピプラゾールを、バルプロ酸またはリチウムもしくはプラセボに追加した場合を比較したものであった(754例)。1試験は、アリピプラゾールとハロペリドールを比較したものであった(347例)。
・全体のバイアスリスクは不明であった。また、大半の試験で被験者の脱落率が高く(8試験の各介入において20%超)、相対的な有効性の推定に影響がある可能性があった。
・以上を前提とした解析の結果、アリピプラゾールは、プラセボと比べて、成人と小児・若者の躁症状の軽減に有効であることを示すエビデンス(格差はわずか)が認められた。軽減効果は、3週、4週時点でみられ6週時点ではみられなかった(Young Mania Rating Scale[YMRS]の3週時点のランダム効果による平均差[MD]:-3.66、95%信頼区間[CI]:-5.82~-2.05、6試験・1,819例、エビデンスの質:中程度)。
・アリピプラゾールと他剤療法との比較は3試験(1試験は、成人対象のリチウム投与、2試験はハロペリドール)であった。躁症状の軽減について、アリピプラゾールと他剤療法との統計的な有意差は、3週時点(3週時点のランダム効果のYMRS MD:0.07、95%CI:-1.24~1.37、3試験・972例、エビデンスの質:中程度)、および12週までのいかなる時点においても示されなかった。
・プラセボと比較して、アリピプラゾールは、運動障害をより多く引き起こしていた(Simpson Angus Scale[SAS]、Barnes Akathisia Scale[BAS]の測定と、参加者が報告したアカシジアによる、エビデンスの質:高度)。抗コリン作用性の薬物による治療を必要としていた患者で、より多く認められた(ランダム効果によるリスク比:3.28、95%CI:1.82~5.91、2試験:730例、エビデンスの質:高度)。
・また、アリピプラゾール服用群は、胃腸障害(悪心[エビデンスの質:高度]、便秘)が多く、小児・若者でプロラクチン値の正常下限値以下への低下がみられた。
・アリピプラゾールとその他治療とを比較した運動障害との関連に関するメタ解析には有意な不均一性があり、多くはリチウムとハロペリドールのさまざまな副作用プロファイルによるものであった。
・3週間時点のメタ解析は、データ不足のためできなかった。しかし12週時点の解析において、ハロペリドールはアリピプラゾールよりも、有意に運動障害の発生が多かったことが、SAS、BASとAbnormal Involuntary Movement Scale(AIMS)、被験者報告のアカシジアの測定によって認められた。
・一方12週時点までに、アリピプラゾールとリチウムとの差について、被験者報告のアカンジア(RR:2.97、95%CI:1.37~6.43、1試験・313例)を除き、SAS、BAS、AIMSに関しては研究者による報告はなかった。

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(ケアネット)