日本語版・産後うつ病予測尺度「PDPI-R-J」を開発

提供元:ケアネット

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公開日:2013/05/27

 

 産後うつ病(PPD)は世界中でみられ、日本においては出産後1ヵ月間で約20%の母親が経験している。そこで、一次予防のために、妊娠中および出産後早期にリスクを特定するスクリーニング法が必要とされていた。東京大学の池田 真理氏らは、日本語版・産後うつ病予測尺度「Japanese version of the Postpartum Depression Predictors Inventory-Revised(PDPI-R-J)」を開発し、その予測妥当性を検証した。BMC Pregnancy and Childbirth誌オンライン版2013年5月14日号の掲載報告。

 PDPI-R-Jの開発と、妥当性の検証(妊娠中と出産後1ヵ月におけるその予測妥当性)は、次のような方法にて行われた。

 評価項目を開発するために、2人のバイリンガル翻訳者が、PDPI-Rを日本語に翻訳した。その後、翻訳をフィードバックし、オリジナル開発者とディスカッションを行い、語意の同等性を確認した。そのようにして開発したPDPI-R-Jについて、前向きにデザインしたコホートに適用し妥当性を検証する試験を行った。被験者は妊娠8ヵ月の妊婦84例であった。このうち76例が、出産後1ヵ月のPDPI-R-J評価も完了した。被験者は出産後1ヵ月時点で、軽度あるいは重度のうつ病が認められるか、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を用いて診断された。この結果をROC曲線に描出し、PDPI-R-Jの予測能を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・出産後1ヵ月間にPDPI-R-J評価を完了した76例のうち、PPD診断基準に該当したのは16例(21%)であった。
・妊娠中に行われたPDPI-R-J出産前版による、PPD予測は62.8%(95%CI:0.48~0.77)であった。出産後1ヵ月間に行われたPDPI-R-J出産後版による、同予測は82.0%(同:0.71~0.93)であった。
・カットオフ値は、出産前版は5.5、出産後版は7.5であった。
・新生児期に関する項目を含むPDPI-R-J出産後版は、PPDの予測妥当性を増大した(0.67~0.82)。
・PDPI-R-Jの利用がある被験者からのコメントとして、「PDPI-R-Jの利用によって、うつ病の病歴やリスクについて研究者とオープンに語り合う機会が増えた」とあった。
・以上から、著者は「PDPI-R-JはPPD予測に有用かつ有効なスクリーニングツールであることが明らかとなった。また、PPDには出産と新生児関連の因子が反映している可能性があり、出産前と出産後の両方のバージョンを連続的に適用することが必要である」と結論している。

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(ケアネット)