腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:25

国際腎臓学会で患者中心の透析医療を目指した「SONGイニシアチブ」

 4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019で、4日間にわたり取り上げられた話題は多岐にわたるが、ここでは「患者を中心とした腎臓病治療」について紹介したい。  まず国際腎臓学会12日のセッション、「患者中心の慢性腎臓病(CKD)管理」では、患者の立場から、現在の臨床試験における評価項目の妥当性を問う、“SONGイニシアチブ”という取り組みが報告された。患者目線で見た場合、CKD治療で最重要視されるのは必ずしも生命予後や心血管疾患ではないようだ。CKD患者の「人生」を良くするために、医療従事者は何を指標にすればよいのか―。Allison Tong氏(オーストラリア・シドニー大学)の報告を紹介する。

長時間透析の有用性は確認できず:ACTIVE Dialysis延長観察/国際腎臓学会

血液透析例の予後改善の方策として、透析時間延長の有用性が唱えられている。しかし近年報告されたランダム化試験では、延長による生命予後改善の報告がある一方1)、増悪の報告もある2)。  前者は施設での短時間透析の回数を増やす有用性を検討しており、後者は自宅での夜間透析の回数を増やしていた。いずれも回数増加を介した透析時間の延長を試みていた。では透析を回数ではなく、時間そのものを目安に延長した場合、血液透析例の予後はどうなるだろうか―。この問いに答えるべく、Brendan Smyth氏(オーストラリア・シドニー大学)は、ACTIVE Dialysis試験の延長観察データを解析した。しかし観察研究という限界もあり、長時間透析の有用性は確認できなかった。4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019のLate Breaking Sessionにて報告された。

エンドセリン受容体拮抗薬の糖尿病性腎症への効果は?:SONAR試験/国際腎臓学会

 2010年に報告されたASCEND試験1)において、糖尿病性腎症に対する腎保護作用を示しながら、心不全増加のため有用性を証明できなかったエンドセリン受容体拮抗薬だが、対象例を適切に絞り込めば有用であることが、ランダム化二重盲検試験“SONAR”の結果から明らかになった。本試験は、4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019のBreaking Clinical Trialsセッションにおいて、Dick de Zeeuw氏(オランダ・グローニンゲン大学)らが報告した。

SGLT2阻害薬カナグリフロジンの腎保護作用が示される:CREDENCE試験/国際腎臓学会

 2型糖尿病患者に対する心血管系(CV)イベントリスクの低下を検討したランダム化試験から、SGLT2阻害薬による腎保護作用が示唆された。しかし、あくまで副次的解析であり、対象は腎機能が比較的保たれた例に限られていた。4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019で報告されたCREDENCE試験では、SGLT2阻害薬カナグリフロジンが、慢性腎臓病(CKD)を合併した2型糖尿病患者の腎・心イベントを抑制することが明らかになった。Vlado Perkovic氏(オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学)が報告した。

低リスク大動脈弁狭窄症に自己拡張型弁のTAVRは有効か/NEJM

 手術リスクが低い重症大動脈弁狭窄症患者に対して、自己拡張型supraannularバイオ人工弁による経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の施行は通常手術施行に対して、24ヵ月時点の死亡または後遺障害を伴う脳卒中発生の複合エンドポイントについて非劣性であることが示された。米国・ベスイスラエル・ディーコネス医療センターのJeffrey J. Popma氏らによる無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年3月16日号で発表された。TAVRは、手術を受けた場合の死亡リスクが高い重症大動脈弁狭窄症患者の、手術に変わる治療法とされている。これまで、手術リスクの低い患者のTAVR施行については明らかにされていなかった。

日本人の食事摂取基準2020年版、フレイルが追加/厚労省

 2019年3月22日、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の報告書とりまとめを了承した。昨年4月より策定検討会にて議論が重ねられた今回の食事摂取基準は、2020年~2024年までの使用が予定されている。策定検討会の構成員には、日本糖尿病学会の理事を務める宇都宮 一典氏や日本腎臓学会理事長の柏原 直樹氏らが含まれている。

ナトリウムとカリウムの適切な1日摂取量は/BMJ

 世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、1日の栄養摂取量として、ナトリウムは2.0g未満に制限を、カリウムは3.5g以上摂取を推奨している。今回、カナダ・マックマスター大学のMartin O'Donnell氏らが行った調査(PURE試験)では、これら2つの目標を同時に満たす者はきわめてまれで、死亡/心血管イベントのリスクが最も低いのは、ナトリウム摂取量が3~5g/日でカリウム高摂取量(≧2.1g/日)の集団であることが明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年3月13日号に掲載された。ナトリウムについては相反する知見が報告されているが、多くでは摂取量と死亡にJ字型の関連が示されている。これに対し、カリウムは一般に摂取量が増えるに従って死亡が直線的に低下することが報告されている。一方、ナトリウム/カリウム比と臨床アウトカムとの関連を示唆する観察研究の報告もある

喫煙する高血圧患者に厳格血圧管理は有用か~SPRINTの2次分析

 Systolic Blood Pressure Intervention Trial(SPRINT)では、収縮期血圧を120mmHg未満に厳格管理することにより、心血管系疾患の罹患率と死亡率が低下することが示された。しかし、厳格血圧管理による全体的なベネフィットがリスクの不均一性をマスクしていないだろうか。今回、マウントサイナイ医科大学のJoseph Scarpa氏らが実施したSPRINTデータの2次分析により、ベースライン時点に現喫煙者で収縮期血圧144mmHg超であった参加者では、標準治療群より厳格治療群で心血管イベント発生率が高かったことが報告された。JAMA Network Open誌2019年3月8日号に掲載。

腎疾患・CKDも遺伝子診断の時代へ!(解説:石上友章氏)-1006

本邦でも、ミレニアム・プロジェクトと題した国家プロジェクトがあり、ヒト疾患ゲノム解析が、その中の1つのプロジェクトとして採用されていた。当時は、キャピラリー・シークエンサーの時代で、逐次処理的に塩基配列を解読するため、膨大な設備と長時間の解析が必要であった。当時筆者が勤務していた米国・ユタ大学エクルズ人類遺伝学研究所には、国際的なヒトゲノムコンソーシアムの拠点があり、広いフロア一面を占めるキャピラリー・シークエンサーに感動を覚えた記憶がある。技術は進歩し、1,000ドルゲノムの時代を迎えて、個別化した全ゲノム解析が視野に入ってきた。現在では、いわゆる次世代シークエンサー(NGS)が汎用化し、これまで研究レベルであった分子遺伝学の成果が、臨床医にも手が届く時代を迎えている。今では、がんクリニカルシークエンス検査が、原発不明がんや、既存の治療に応答しない難治性がんの診療に応用されている。米国・コロンビア大学のEmily E. Groopman氏は、エクソーム解析を既知のCKDコホート計3,315例に対して行い、腎疾患・CKDにおける遺伝子診断の可能性について検討した1)。その結果は、307例(9.3%)に遺伝子診断をつけることができた。既知の原因遺伝子と疾患表現型が、必ずしも一致しない症例も少なからず認められた。

非代償性肝硬変を伴うC型肝炎に初の承認

 平成元年(1989年)に発見されたC型肝炎ウイルス(HCV)。近年、経口の直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAA)が次々と発売され、C型慢性肝炎や初期の肝硬変(代償性肝硬変)の患者では高い治療効果を得られるようになったが、非代償性肝硬変を伴うHCV感染症に対する薬剤はなかった。そのような中、平成最後の今年、1月8日にエプクルーサ配合錠(一般名:ソホスブビル/ベルパタスビル配合錠、以下エプクルーサ)が、「C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」に承認された。また、DAA治療失敗例に対する適応症(前治療歴を有するC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善)も取得した。ここでは、1月25日に都内で開催されたギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーで、竹原 徹郎氏(大阪大学大学院医学系研究科内科学講座消化器内科学 教授)が講演した内容をお届けする。