内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:173

大血管閉塞性脳卒中疑い患者の血栓回収可能センターへの直接輸送の効果(解説:中川原譲二氏)

血栓回収可能センターへのアクセスが制限されている非都市部では、大血管閉塞性(LVO)脳卒中が疑われる患者における最適な病院前輸送戦略は不明である。本研究の目的は、都市部以外の地域で、血栓回収可能センターへの直接輸送が、最も近い1次脳卒中センターへの輸送と比較して有益であるかどうかを判断することであった。2017年3月から2020年6月までの間、スペインのカタルーニャ地方で、最も近い1次脳卒中センターが血栓回収を施行できない地域において、急性LVO脳卒中が疑われる1,401例の患者を対象として、多施設、人口ベース、クラスター無作為化試験が行われた。最終フォローアップは2020年9月であった。患者は、血栓回収可能センター(688例)または最も近い1次脳卒中センター(713例)へ輸送された。

若年性認知症の診断5年前からみられる症状

 若年性認知症には多くの根本的な病因があり、初期症状の不均一性が大きいといわれている。そのため、一般開業医が若年性認知症を発見することは困難である。オランダ・マーストリヒト大学のStevie Hendriks氏らは、若年性認知症の診断前段階でみられる一般的な初期症状の特定を試みた。その結果、若年性認知症患者では診断5年前より異なる症状が認められるが、各症状は他疾患においても認められるため、一般開業医が若年性認知症を鑑別診断することは容易ではないとしながらも、症状カテゴリーの組み合わせにより、若年性認知症を検知できる可能性が示唆されたことを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年5月13日号の報告。

モデルナアームが発現しやすい人は?/自衛隊中央病院

 モデルナ社の新型コロナワクチン(mRNA-1273ワクチン、商品名:スパイクバックス筋注)接種により一時期話題となった「モデルナアーム」。このモデルナアームの原因が遅発性大型局所反応(DLLR:delayed large local reaction)と言われるも詳細は不明であった。しかし、今回、自衛隊中央病院皮膚科の東野 俊英氏らはDLLRがIV型アレルギーを原因として生じるアレルギー性接触皮膚炎に類似している可能性があること、女性は男性より5.3倍も発症しやすいことなどを突き止めた。このようにモデルナアームの原因や発症しやすい対象者が特定できれば、今後、この副反応を回避する対応ができそうだ。本研究はJAMA Dermatology誌オンライン版2022年6月1日号に掲載されたほか、自衛隊中央病院のホームページでも報告している。

コロナ罹患後症状、中年者に多い/厚労省アドバイザリーボード

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは、6月1日に第86回の会議を開催し、その中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の遷延症状に関する研究2題が報告された。中等症以上の患者を対象とした研究では、退院後12ヵ月後でも13.6%の対象者に何らかの罹患後症状が存在していた。  また、もう一方の長期合併症の実態把握と病態生理解明の研究では、12ヵ月後でも疲労感、呼吸困難、筋力低下、集中力低下などの症状が続いていた。

世界の健康維持に必要な人的資源、医師は640万人不足か/Lancet

 2019年の世界の医師密度は人口1万人当たり約17人、看護師・助産師の密度は約39人と、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC:すべての人が適切な保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態)の達成に要する、健康のための人的資源(HRH)としては不十分で、医師は640万人、看護師・助産師は3,060万人が足りておらず、今後、世界の多くの地域で保健人材の拡充を進める必要があることが、米国・ワシントン大学のAnnie Haakenstad氏らGBD 2019 Human Resources for Health Collaboratorsの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年5月23日号で報告された。

出張血管内治療方式では血栓回収術を開始するまでの時間が大幅に短縮された(解説:高梨成彦氏)

急性期脳梗塞患者を1次脳卒中センターから血栓回収術が可能な施設へ搬送する群(transfer group)と、治療チームを1次脳卒中センターに空輸する群(flying team group)において、治療に要する時間と機能予後を比較した試験である。2つの医療システムを比較するには地域の特性に影響されることが免れないが、同一地域で1週間ごとにシステムを変えることでこれを可能にしている。結果としてflying team groupにおいて治療方針の決定から穿刺までの時間が短く(58分 vs.148分)、また発症から再開通までの時間も短く(243分 vs.340分)、いずれも大きな差がついた。

コロナワクチン3回接種者は感染しても他人にうつしにくい!?

 新型コロナウイルスのブレークスルー感染が新型コロナの蔓延に大きく寄与する可能性があるかどうかについてのデータは限られている。そこで、韓国・ウルサン大学のJiwon Jung氏らは新型コロナワクチンの3回接種を終えた完全接種者(ブレークスルー感染群)と1~2回接種の部分的接種/未接種者(非ブレークスルー感染群)の新型コロナの他人へ感染を広げる(2次感染)割合やウイルス排出動態に関するコホート研究を実施した。その結果、 初期のゲノムウイルス量はワクチン接種者とワクチン未接種者の間で類似していたが、完全接種者のブレークスルー感染群では、部分的接種者/ワクチン未接種者よりも生存可能なウイルスの排出期間が短く、2次感染率が低いことが示された。JAMA Network Open誌2022年5月2日号掲載の報告。

コロナ罹患後症状を大規模調査、成人の2割以上が発症/CDC

 米国疾病対策センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(post-COVID、いわゆる後遺症)についての約200万人の大規模調査によると、急性肺塞栓症や呼吸器症状の発症リスクが2倍となり、18~64歳の5人に1人、65歳以上の4人に1人が、コロナ罹患後症状と考えられる症状を1つ以上発症しているという。研究結果は、CDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年5月27日号に掲載されている。

コロナ感染率、ワクチン2回接種vs.感染後1回接種/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染歴がある人では、ワクチン接種の有無や感染前後での接種にかかわらず、再感染予防効果は最後の免疫獲得イベントからの経過時間が長くなるほど低下したが、この予防効果は、未感染でワクチンを2回接種し同じ時間が経過した場合での予防効果より高く、感染後のワクチン1回接種は再感染予防効果を増強することが、イスラエル・テクニオン-イスラエル工科大学のYair Goldberg氏らの研究で示された。SARS-CoV-2感染は、再感染に対する自然免疫を獲得することが知られる。最近の研究では、BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)による免疫効果の減衰が示されたが、自然免疫ならびに感染後のワクチン接種で得られるハイブリッド免疫の減衰に関しては不明であった。NEJM誌オンライン版2022年5月25日号掲載の報告。

活性型ビタミンD3、2型DMの発症予防に無効か/BMJ

 活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールは、前糖尿病から2型糖尿病への発症予防効果は認められなかったものの、インスリン分泌が不十分な人に対する有益性を示唆する結果が得られた。産業医科大学病院の河原哲也氏らが、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Diabetes Prevention with active Vitamin D study:DPVD試験」の結果を報告した。観察研究では、ビタミンD欠乏がインスリン抵抗性および将来的な糖尿病のリスク増加と関連することが示されている。一方、ビタミンD補充については、2型糖尿病予防を目的とした無作為化比較試験では一貫した結果は認められていないが、先行研究でビタミンD欠乏症を伴う前糖尿病者に対して有益であることが示唆されていた。BMJ誌2022年5月25日号掲載の報告。