血液内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

がん患者のワクチン接種率を上げるカギは医療者からの勧め/日本がんサポーティブケア学会

 第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会において、国立がん研究センター東病院の橋本 麻子氏は「がん患者を対象としたワクチン接種に関する2年間のアンケート調査」の内容をもとに、がん患者におけるワクチン接種の実態と課題について発表した。  がん患者は、治療や疾患の進行に伴って免疫機能が低下していることが多く、感染症予防は非常に重要である。そのため、学会などでも季節性インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹、新型コロナウイルスワクチンの定期接種が推奨されている。

DLBCLの予後予測、1次治療後のPhasED-Seqを用いたctDNAによるMRDが有用~前向き多施設共同研究/ASCO2025

 1次治療を受けるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の予後予測に、治療終了時におけるPhasED-seq(phased variant enrichment and detection sequencing)を用いた循環腫瘍DNAによる測定可能残存病変(ctDNA-MRD)検出が有用であることが、全国規模の前向き多施設共同研究で示された。オランダ・Amsterdam UMC Location Vrije UniversiteitのSteven Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

真性多血症へのrusfertideの第III相試験、32週までの結果(VERIFY)/ASCO2025

 標準治療を受けている真性多血症(PV)患者で頻回の瀉血を必要とする患者に対するrusfertideの上乗せのベネフィットを評価する現在進行中の国際共同第III相VERIFY試験のパート1aにおいて、臨床的奏効割合、瀉血回数、ヘマトクリット値および症状の改善が示された。米国・Moffitt Cancer CenterのAndrew Tucker Kuykendall氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションで発表した。  PVは赤血球の過剰産生を特徴とし、心血管・血栓イベントリスクを増加させる。rusfertideは鉄恒常性における主な調節因子であるヘプシジンのペプチド模倣薬である。この国際共同無作為化プラセボ対照第III相試験は、パート1a(用量漸増、二重盲検)、パート1b(非盲検)、パート2(非盲検、長期安全性評価)から成り、パート1a(0~32週)を完了した患者がパート1b(32~52週)に移行し、パート1bを完了した患者がパート2に進む。今回はパート1aの結果が報告された。

どのように多発性骨髄腫治療の長い道のりを乗り越えるか/日本骨髄腫学会

 多発性骨髄腫の治療は目覚ましい進歩を遂げている。その一方で、高齢化や治療の長期化に伴う課題も顕在化している。第50回日本骨髄腫学会学術集会では、多発性骨髄腫診療における地域連携と多職種連携について議論された。  兵庫医科大学の吉原 享子氏は、地域の中核病院の立場から多発性骨髄腫治療について述べた。多発性骨髄腫の治療は、中核病院で患者を安定させ、地域連携病院や在宅診療へと移行するのが通常である。長期に渡る治療においては合併症のフォローアップが重要であり、地域医療機関との連携は不可欠である。とくに、CAR-T療法などの高度治療では、紹介元病院との連携を密にして円滑に治療を提供できる体制づくりが求められる。

高額療養費制度見直しががん医療現場に与える影響/日本がんサポーティブケア学会

 2025年5月に開催された第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会において、高額療養費制度の見直しに関するセッションが行われた。同セッションでは、医療者と患者双方のパネリストが登壇し議論が行われている。がん医療における高額療養費制度見直しに対する課題の多さが感じとられた。  帝京大学の渡邊 清高氏は高額療養費制度見直しの背景と、同学会が2月26日に発表した声明について説明があった。制度見直しの目的は社会保障制度の持続可能性の確保であるが、提案された見直し案には高額療養費の上限額引き上げが含まれており、患者ケアに影響を与える可能性が懸念されている。実施は見送られたものの、同学会は見直し案について、さらなる議論が必要であると共に患者と学会の声を聞くことの必要性を指摘した。

自家SCT後に再発した多発性骨髄腫、同種SCT vs.自家SCT

 自家造血幹細胞移植(auto-SCT)後に再発した多発性骨髄腫患者に対して、これまでauto-SCTより同種造血幹細胞移植(allo-SCT)のほうが優れていると考えられていた。今回、オーストリア・Wilhelminen Cancer Research InstituteのHeinz Ludwig氏らの系統的レビューとメタ解析の結果、allo-SCTがauto-SCTよりも全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)が劣っていることが示された。Cancer誌2025年5月15日号に掲載。  研究グループは、1995年~2024年10月に発表された英語論文の包括的な文献レビューを行い、初回auto-SCT後に再発した多発性骨髄腫に対して、allo-SCTとauto-SCTを比較した5研究を解析した。また、再発後に適合する同種造血幹細胞ドナーが存在する患者と存在しない患者を比較した2研究を個別に解析した。日本造血・免疫細胞療法学会と国際血液骨髄移植研究センター(CIBMTR)の2つの大規模データベースから 815例の個別データを入手した。Kaplan-Meier曲線で示された5つの小規模研究(allo-SCTとauto-SCTを比較した3研究、および適合ドナーの有無で比較した2つの研究)のデータは、Shinyアプリを用いてデジタル化した。メタ解析はR 4.3.3を用い、OSおよびPFSについてKaplan-Meier検定およびlog-rank検定を行った。

「がんと栄養」に正しい情報を!がん患者さんのための栄養治療ガイドライン発刊

 日本栄養治療学会(JSPEN)は2025年2月、『がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版』(金原出版)を刊行した。JSPENが患者向けガイドラインを作成するのは初めての試みだ。5月14日には刊行記念のプレスセミナーが開催され、比企 直樹氏(北里大学医学部 上部消化管外科学)と犬飼 道雄氏(岡山済生会総合病院 内科・がん化学療法センター)が登壇し、ガイドライン作成の経緯や狙いを解説した。 【比企氏】  世の中には「〇〇を食べると健康に良い」といった根拠の乏しい情報があふれている。とくにがんに関しては、科学的根拠のない栄養療法や補助食品の情報があふれており、患者や家族が正しい情報を得ることに苦労している。一方で、最近ではがん治療と栄養療法に関連した研究が増え、「どの栄養素を、どれだけ摂取すれば、どんな効果があるか」に関するエビデンスが蓄積されてきた。実際、がんの薬物療法や手術治療において、栄養治療が副作用の軽減や合併症の予防に寄与することが明らかになっている。こうした背景から、患者さんが正しい情報を得られるよう、情報を整理するために作成されたのがこのガイドラインだ。

アシミニブが初発CMLに効能追加/ノバルティス

 ノバルティス ファーマは2025年5月19日、アシミニブ(商品名:セムブリックス)が初発の慢性骨髄性白血病(CML)に対する効能追加の承認を取得したことを発表した。 本剤は、2022年3月28日に「前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病」に対して承認されている。なお、今回の効能追加に伴い、40mg1日2回投与から、80mg1日1回投与に変更することが承認された。  この承認は、国際共同第III相試験(J12301/ASC4FIRST試験)のデータに基づくもの。本試験は、初発のCML成人患者を対象に医師選択の第1世代または第2世代TKI(イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ)と直接比較した多施設共同非盲検無作為化試験であり、医師選択TKIに対するアシミニブの優越性が検証された。

希少疾病の診断ラグへの提言を入れた希少疾病白書を刊行/アレクシオン

 アレクシオンファーマは、希少疾患領域での貢献を目指すため、ヘルスエクイティ(医療の公平性)の実現に向けて大きな課題となっている診断の遅れ(診断ラグ)の分析、およびその解決策を提示した『希少疾患白書「診断ラグ」の実態と解消に向けての提言~最新テクノロジーと社会の力で実現するヘルスエクイティ~』を刊行した。  希少疾患患者は、確定診断されるまで長い時間がかかることが多く、その影響は患者本人だけでなく、医療システム全体にも及んでいる。この実情を踏まえ、診断ラグが希少疾患患者の医療の公平性の実現における大きな障壁であると問題提起し、わが国における希少疾患患者を取り巻く現状と課題を整理する。

CAR-T細胞療法無効のリンパ腫、強化CAR-T細胞療法は有効か/NEJM

 キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法が奏効しなかったリンパ腫患者において、インターロイキン-18を分泌することで抗腫瘍活性を高める抗CD19強化(armored)CAR-T細胞製剤「huCART19-IL18」は、他のCAR-T細胞療法と安全性プロファイルが一致し、低細胞量で有望な有効性を示した。米国・ペンシルベニア大学のJakub Svoboda氏らが第I相試験の結果を報告した。CD19を標的とするCAR-T細胞療法は、B細胞がんの治療に変革をもたらしたが、なお多くの患者は長期の寛解を得られていない。NEJM誌2025年5月8日号掲載の報告。