血液内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:6

TTP診療ガイド2023改訂のポイント~Minds方式の診療ガイドラインを視野に

 「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループの専門家によるコンセンサスとして2017年に作成され、2020年に部分改訂された、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診療ガイドライン、『血栓性血小板減少性紫斑病診療ガイド2023』が7月に公開された。2023年版では、Minds方式の診療ガイドラインを視野に、リツキシマブに対してclinical question(CQ)が設定され、エビデンスや推奨が掲載された。 ・リツキシマブの推奨内容の追加・変更とCQの掲載 ・カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択に ・抗血小板薬、FFP輸注に関する記述を追加 ・FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述を追加 ・増悪因子に関する記述を追加

ガスコンロの使用で血液がんリスクを高める化学物質が排出

 ガスコンロの使用によって室内の空気中のベンゼン濃度が上昇する可能性のあることが、米スタンフォード大学ドア・サステナビリティ学部のRobert Jackson氏らの研究で示された。ベンゼンは、白血病などの血液がんのリスク上昇に関連することが指摘されている化学物質だ。この研究からは、ガスコンロから排出されるベンゼンが家中に広がり、何時間も漂い続ける可能性も示唆された。この研究結果は、「Environmental Science & Technology」に6月15日掲載された。

イノツズマブ+ブリナツモマブ併用mini-Hyper-CVD療法で再発ALLの生存率改善

 mini-Hyper-CVD療法とイノツズマブの併用は、再発難治性急性リンパ性白血病(ALL)患者において有効性を示し、ブリナツモマブ追加後はさらに生存率が向上したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHagop Kantarjian氏らによる研究で明らかになった。Journal of Hematology & Oncology誌2023年5月2日号の報告。  成人ALL治療は近年、大きくその様相が変化している。CD19表現抗体を標的としたブリナツモマブやCD22を標的とした抗体薬物複合体のイノツズマブ オゾガマイシンや各種CAR-T細胞療法など、新しい治療法選択肢が登場したためである。  再発難治性ALLに対するブリナツモマブとイノツズマブ単剤の有効性は、すでに確認されているとおりである。今回は、イノツズマブを用いた低用量のmini-Hyper-CVD療法に、ブリナツモマブを追加することで、化学療法による負担を減らすことができないかを検討した。

真性多血症に新技術の治療薬が登場/ファーマエッセンシアジャパン

 真性多血症(PV)の治療薬ロペグインターフェロンアルファ-2b(商品名:ベスレミ)の発売に合わせ、ファーマエッセンシアジャパンは「真性多血症の治療における新たな選択肢」と題して、都内でメディアセミナーを開催した。  ロペグインターフェロンアルファ-2bは、PVの治療薬(既存治療が効果不十分または不適当な場合に限る)としては初のインターフェロン製剤であり、2023年年3月27日に製造販売承認を取得、5月24日に薬価収載、6月1日より販売を開始している。  セミナーでは、同社の概要や今後の展開のほか、同社のコアテクノロジーである“部位選択的モノペグ化技術”の概要の説明のほか、専門医によるPVのレクチャーが行われた。

HIVの2次治療、ドルテグラビルへの切り替えは可能か?/NEJM

 既治療のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で、薬剤耐性変異の有無に関するデータがなく、ウイルス抑制下にある患者において、リトナビルブーストプロテアーゼ阻害薬(PI)ベースのレジメンからドルテグラビルへの切り替えは、リトナビルブーストPIを含むレジメンに対して非劣性であることが、ケニア・ナイロビ大学のLoice A. Ombajo氏らが同国4施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験の結果で示された。遺伝子型の情報がなく、リトナビルブーストPIを含む2次治療でウイルスが抑制されているHIV感染患者において、ドルテグラビルへの切り替えに関するデータは限られていた。NEJM誌2023年6月22日号掲載の報告。

低リスク骨髄異形成症候群の貧血にluspaterceptは?/Lancet

 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による治療歴のない低リスクの骨髄異形成症候群(MDS)患者の貧血治療において、エポエチンアルファと比較してluspaterceptは、赤血球輸血非依存状態とヘモグロビン増加の達成率に優れ、安全性プロファイルは全般に既知のものと一致することが、ドイツ・ライプチヒ大学病院のUwe Platzbecker氏らが実施した「COMMANDS試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月10日号に掲載された。  COMMANDSは、26ヵ国142施設が参加した第III相非盲検無作為化対照比較試験であり、2019年1月~2022年8月の期間に患者の登録が行われた(CelgeneとAcceleron Pharmaの助成を受けた)。今回は、中間解析の結果が報告された。

CAT対策は重要!(解説:後藤信哉氏)

日本の死因の第1位は悪性腫瘍である。悪性腫瘍治療の選択肢は増えた。抗がん剤治療では体内で腫瘍細胞が壊れることになる。組織の壊れたところでは血栓ができやすい。Cancer Associated Thrombosis(CAT)対策は日本でも真剣に考える必要がある。いわゆるDOACは使いやすい。心房細動の脳卒中治療でも、凝固異常を合併しない静脈血栓でも広く使用されている。本研究ではevidenceの豊富な低分子ヘパリンとDOACの比較試験を行った。

抗CD7塩基編集CAR-T細胞療法、T細胞性ALLに有望/NEJM

 英国・Great Ormond Street Hospital for Children NHS TrustのRobert Chiesa氏らは、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の小児患者を対象とした、抗CD7塩基編集キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法の第I相試験において、最初の3例中2例で寛解が得られたことを報告した。CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)によるシチジンの脱アミノ化は、DNAに切断を生じさせることなくシトシンからチミンへ極めて正確に塩基置換変異を起こすことができる。すなわち、転座やその他の染色体異常を誘発することなく遺伝子を塩基編集し不活性化できることから、再発T細胞白血病小児患者において、この技術の使用が検討されている。著者は、「今回の中間結果は、再発白血病患者に対する塩基編集T細胞療法のさらなる研究を支持するもので、また、免疫療法に関連した合併症の予想されるリスクも示している」とまとめている。NEJM誌オンライン版2023年6月14日号掲載の報告。

心房細動の脳梗塞後、抗凝固療法開始は早いほうがよい?(解説:後藤信哉氏)

心房細動症例の脳卒中リスクは洞調律例よりも高いとされる。しかし、脳梗塞急性期の抗凝固療法では梗塞巣からの出血が心配である。DOAC時代になって、ワルファリンの時代よりも抗凝固療法に対する心理的ハードルは低下した。心房細動があり、脳梗塞を経験した症例での早期(48時間以内)と晩期(6~7日後)のDOAC療法による30日以内の脳梗塞・全身性塞栓症・大出血・症候性頭蓋内出血の発現リスクをランダムに比較した。本研究は、実臨床を反映したシンプルな仮説検証試験である。実臨床の中で、シンプルな仮説検証を繰り返しながら医療の質をシステム的に改善するアプローチとして価値のある研究である。

がん患者のVTE再発予防、DOAC vs.低分子ヘパリン/JAMA

 静脈血栓塞栓症(VTE)を有した成人がん患者のVTE再発予防に関して、追跡期間6ヵ月にわたり、直接経口抗凝固薬(DOAC)は低分子ヘパリン(LMWH)に対して非劣性であったことが、米国・ハーバード大学医学大学院のDeborah Schrag氏らによる検討で示された。著者は、「この結果は、がん患者のVTE再発予防に対してDOACの使用を支持するものである」とまとめている。VTEを有するがん患者のVTE再発予防にはLMWHの長期投与が推奨されており、DOACの有効性との比較は検討されていなかった。JAMA誌2023年6月2日号掲載の報告。