産婦人科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:46

妊娠中の細菌性膣症に対する早期のクリンダマイシンの効果:多施設二重盲検ランダム化比較試験(PREMEVA)(解説:吉田敦氏、吉田穂波氏)-949

細菌性膣症(BV)では、膣内のラクトバチルス属が減少、嫌気性菌やマイコプラズマが増加する。いわば膣のマイクロバイオータ(microbiota)のバランスが乱れるものとされているが、妊娠中ではBVは2倍以上に増加する。とくに16~20週での合併率は4~7倍に上昇するという。さらにBVを有する妊婦では、自然流産のリスクが9倍、母体感染のリスクが2倍以上になると報告されたが、この相関の原因は不明であった。 しかしながら膣細菌叢の乱れが、子宮への感染を生じることで流早産を来すと考えれば、妊娠早期の抗菌薬投与によって早期産が減ると予想される。ただし先行研究をまとめたメタアナリシスでは相反する結果にとどまっていた。このため今回の大規模PREMEVA試験に至った訳であるが、結果としてfirst trimesterにクリンダマイシンを内服しても、後期流産やごく早期の自然早産は減少せず、クリンダマイシンの副作用によると思われる下痢や腹痛が増加した。

オラパリブ、新規診断の進行卵巣がんに前例なき効果(SOLO1)/NEJM・ESMO2018

 新規診断された進行卵巣がんのほとんどは、手術とプラチナベース化学療法による標準治療実施後、3年以内に再発する。PARP阻害薬オラパリブの有用性は再発症例に対しては確立されている。しかし、新規診断例の維持治療については十分ではない。そこで、新規診断されたBRCA1/2変異陽性の進行卵巣がんで、プラチナベースの導入治療に完全奏効(CR)または部分奏効(PR)した患者に対する、オラパリブの維持治療の有効性を評価する国際第III相SOLO1試験が行われた。試験の結果は、ミュンヘンでの欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で発表され、同時にN Engl J Med誌2018年10月21日号に掲載された。

同居家族と産後うつ発症リスクとの関連

 産後うつ病(postpartum depression:PPD)には、多くの心理社会学的および生物学的なリスク因子がある。しかし、同居家族とPPDリスクとの関連性については検討されていなかった。大阪医科大学の本庄 かおり氏らは、日本人女性における同居家族と出産1ヵ月後のPPDリスクとの関連性を調査し、この関連性が、家計収入やパートナーの育児への関与によって影響を受けるかについて検討を行った。Social Science & Medicine誌オンライン版2018年10月2日号の報告。  対象は、日本人女性8万6,490例。データは、2011年に開始された大規模全国コホート研究である「子どもの健康と環境に関する全国調査(Japan Environment and Children's Study:JECS)」より抽出した。主要予測因子は、妊娠第1三半期における同居家族(パートナー、実親[たち]、義親[たち]、子供[たち])とした。

妊娠高血圧腎症、認知症リスクを増大/BMJ

 妊娠高血圧腎症(pre-eclampsia)は、認知症リスクを増大することが、デンマーク・Statens Serum InstitutのSaima Basit氏らによる全国コホート研究の結果、示された。とくに脳血管性認知症のリスクは、非既往女性の3倍以上高く、より高齢(65歳以上)での発症と強い関連が認められたという。また、そのリスクは、糖尿病、高血圧、心血管疾患で補正後もやや減弱する程度で、著者は「妊娠高血圧腎症と脳血管性認知症は基礎メカニズムあるいは感受性経路を共有している可能性がある」と指摘している。なお、アルツハイマー病との関連はわずかで、肥満による交絡の非コントロールによる可能性が示唆された。得られた所見を踏まえて著者は「妊娠高血圧腎症歴を女性に尋ねることは、ベネフィットが得られる女性を臨床医が特定するのに役立ち、疾患の早期兆候に対するスクリーニングや早期臨床的介入を可能とするだろう」と述べている。BMJ誌2018年10月17日号掲載の報告。

妊娠中の細菌性膣症、早期抗菌薬治療は有益か?/Lancet

 妊娠中の細菌性膣症の治療は、早産などの不良なアウトカムを減少可能だが、早期発見・治療に努めることでリスクの減少につながるのか。フランス・リール大学病院のDamien Subtil氏らによる多施設共同二重盲検無作為化試験「PREMEVA試験」の結果、そうしたエビデンスは認められないことが示された。検討では、妊娠14週前に系統的なスクリーニングを行い、細菌性膣症が認められた場合は、抗菌薬のクリンダマイシンによる治療を行った。結果を受けて著者は、「今回検討した患者集団では、早産回避のための抗菌薬使用について再考すべきことが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年10月12日号掲載の報告。

MSI-H固形がんへのペムブロリズマブ、日本人サブ解析結果(KEYNOTE-158)/癌治療学会

 マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)固形がんの日本人症例に対するペムブロリズマブの有用性が示された。MSI-H固形がん(大腸がん以外)を対象としたペムブロリズマブの第II相試験(KEYNOTE-158)における日本人7例でのサブグループ解析結果について、近畿大学の中川 和彦氏が10月18~20日に横浜市で開催された第56回日本癌治療学会学術集会で発表した。  本試験は、大腸がん以外の転移のあるもしくは切除不能のMSI-H固形がんが対象。進行もしくは標準的な1次治療に不耐容、かつECOG PS 0~1の患者がエントリーされた。ペムブロリズマブ200mgを3週ごとに最大2年間投与した。最初の1年間は9週ごとに、それ以降は12週ごとに画像診断を実施した。主要評価項目は奏効率(ORR)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、安全性であった。

新診断基準による妊娠糖尿病(GDM)の診断は出産後の母親の糖代謝異常と関連する(解説:住谷哲氏)-932

HAPO研究の結果を受けてIADPSG は妊娠糖尿病診断基準を2010年に発表した。わが国においてもその発表を受けて、ただちに日本糖尿病学会、日本産科婦人科学会および日本糖尿病・妊娠学会がそれに基づいた診断基準を発表した。診断基準そのものは3学会で同一であったが微妙な文言の差異があったために現場に少なからぬ混乱を生じたが、2015年に統一見解が発表された。GDMの診断基準は「75gOGTTにおいて、(1)空腹時血糖値92mg/dL以上、(2)1時間値180mg/dL以上、(3)2時間値153mg/dL以上のいずれか1点を満たした場合」とされている(ただし妊娠中の明らかな糖尿病[overt diabetes in pregnancy]は除く)。

妊娠糖尿病の母親は糖代謝疾患リスク増、子への影響は?/JAMA

 国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)の診断基準に基づき妊娠糖尿病(GDM)と診断された母親は、非GDMの母親と比較し妊娠後の長期的な糖代謝疾患のリスクが有意に高い。一方、GDMの母親から生まれた子供と、非GDMの母親から生まれた子供で、小児期の過体重/肥満症に統計学的な有意差はなかった。米国・ノースウェスタン大学フェインバーグ医学院のWilliam L. Lowe Jr氏らが、大規模コホート研究の解析結果を報告した。現在のIADPSG基準が用いられるようになってから、従来のCarpenter-Coustan基準の約2倍もの女性がGDMと診断されているが、IADPSG基準を満たすGDMの母親とその子供に関する長期的なアウトカムについては不明であった。JAMA誌2018年9月11日号掲載の報告。

梅毒が昨年上回るペースで増加中、原因不明の発疹には疑いを

 梅毒の届け出数は、2014年頃から急激な増加傾向にあり、昨年は年間報告数が44年ぶりに5,000例を超えた。今年は昨年をさらに上回るペースで増加しており、国立感染症研究所の発表によると、梅毒の累積報告数は8月22日集計時点ですでに4,221例となっている1)。日本医師会は9月5日の定例記者会見で、梅毒の感染経路を含む発生動向について解説するとともに、感染拡大への注意を促した。  梅毒の年間報告数は長く1,000例以下で推移していたが、2011年頃から徐々に増加し、2014年頃からは男女ともに急激に増加している。2017年の梅毒の報告数を都道府県別にみると、東京都が1,777例と圧倒的に多く、次いで大阪府(840例)、愛知県(339例)、神奈川県(322例)と、都市部で多い。年齢別では、男性では20~40代、女性では20代の感染が目立っている2)。