消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:78

日本人NAFLD患者の種々のがん予測に亜鉛測定が有用

 血清亜鉛(Zn)濃度の低下は肝性脳症や味覚異常など、さまざまな疾患に影響することが報告されている。しかしながら、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)患者における関連はほとんど報告されていない。今回、名古屋大学消化器内科学の伊藤 隆徳氏らは、血清中のZn濃度と総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比(BTR:molar ratio of total branched-chain amino acid to tyrosine)が、NAFLD患者の予後と関係することを明らかにした。著者らは、「血清中のBTRおよびZn濃度が、それぞれNAFLD患者の肝細胞がん(HCC)および他臓器がんの発生予測に有用」とコメントしている。Nutrition&Cancer誌オンライン版2019年8月21日号掲載の報告。

食道がん発症における喫煙と飲酒の相互作用~プール解析

 食道がん発症の危険因子である喫煙と飲酒に有意な相加的相互作用が認められることが、愛知県がんセンター研究所の尾瀬 功氏らによる日本人集団ベースの大規模コホート研究のプール解析で示された。Cancer Medicine誌オンライン版2019年9月1日号に掲載。  本研究は、8つのコホート研究における被験者である16万2,826人の男性が対象。喫煙および飲酒状況については喫煙歴・飲酒歴の有無で分類し、喫煙量と飲酒量についてはpack-yearと1日飲酒量で3つに分類した。各研究における喫煙と飲酒の影響をCox回帰モデルで推定した。研究ごとの結果をメタ解析により結合させ、ハザード比(HR)の統合効果と、加法的および乗法的スケールによる相互作用を検討した。喫煙と飲酒の人口寄与割合(PAF)をこれらの曝露の分布と完全調整HRを用いて算出した。

2次予防のアスピリン、投与すべき患者は?~MAGIC試験

 心血管イベントの再発予防のための低用量アスピリンの使用は、リスク-ベネフィットのバランスに基づくべきである。今回、国際医療福祉大学臨床医学研究センター/山王病院・山王メディカルセンター脳血管センターの内山 真一郎氏らが、わが国の全国規模の多施設共同前向き研究であるMAGIC試験において、心血管疾患の既往のある患者のアスピリン長期使用による心血管イベントと出血イベントの発生率を調査した。その結果、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作、冠動脈疾患、複数の心血管疾患の既往のある患者ではベネフィットがリスクを上回っていたが、心房細動または静脈血栓塞栓症の既往のある患者ではリスクとベネフィットが同等であった。

ラムシルマブ適応拡大、肝細胞がんは薬を使い切る戦略が鍵に

 ラムシルマブの登場で、肝細胞がんの薬物治療は4剤が使用可能となったが、治療アルゴリズムはどう変化するのか。2019年6月、化学療法後に増悪した血清AFP値400ng/mL以上の切除不能な肝細胞がんに対して、ラムシルマブが適応拡大された。これを受けて8月1日、都内でメディアセミナー(主催:日本イーライリリー)が開催され、工藤 正俊氏(近畿大学医学部消化器内科 教授)が講演した。  本邦における肝がんの年間罹患数は約4万人、年間死亡数は約2万7,000人となっている。性別ごとの年間死亡数では、男性では肺、胃、大腸に次ぐ4番目、女性では大腸、肺、膵臓、胃、乳房に次ぐ6番目と、今もって死亡の多いがんといえる1)。肝がんの主要な背景疾患であるC型肝炎の新たな感染が減ったことで、死亡数は漸減の傾向にあるが、食事の欧米化などの影響から、B型/C型ウイルス由来ではない肝細胞がんが増加傾向にある。

第6回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同医学部附属病院 消化器化学療法外科、同大学院臨床腫瘍学分野、同大学院未来がん医療プロフェッショナル養成プランは、2019年9月23日(月・祝)に、第6回東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座を開催する。本講座は、同学が地域がん診療連携拠点病院の活動の一環として、がんに関するさまざまなテーマで開催する公開講座の6回目となる。今回は『広がるがん治療の選択肢』をテーマに、最近話題の治療、新たに保険適用となった治療のメリットや留意点、自分に最適な治療を決めるためのサポートなどについて、さまざまな立場から情報提供する。各種ブース展示や体験コーナーなど、楽しく学べる企画が予定されている。

大腸手術前のMOABPは有益か/Lancet

 大腸手術において、機械的腸管前処置と経口抗菌薬の併用による腸管前処置(MOABP)は、腸管前処置なし(NBP)と比較して、手術部位感染(SSI)や術後合併症は低下しないことが示された。フィンランド・ヘルシンキ大学のLaura Koskenvuo氏らが、現在推奨されているMOABPの日常的な使用について検証した前向き多施設共同無作為化単盲検並行群間試験「Mechanical and oral antibiotic bowel preparation versus no bowel preparation for elective colectomy:MOBILE試験」の結果を報告した。これまで行われたいくつかの大規模後ろ向き研究において、MOABPによりNBPと比較しSSIと術後合併症が減少することが報告されている。米国ではそれらのデータに基づいてMOABPの実施が推奨されているが、著者は今回の結果を受けて、「結腸切除術でSSIや合併症を減らすために、MOABPを推奨することは再考されるべきであると提案したい」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年8月8日号掲載の報告。

がん患者が言い出せない、認知機能障害への対応策/日本臨床腫瘍学会

 がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害(cancer-related cognitive impairment;CRCI)は海外で研究が進みつつあるものの、国内での認識は医療者・患者ともに低い。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「がんと関連した認知機能障害:病態解明・診断・治療/ケアはどこまで進んだか」と題したシンポジウムが開かれ、国内外の知見が紹介された。本稿では、橋本 淳氏(聖路加国際病院 腫瘍内科)、谷向 仁氏(京都大学大学院医学研究科)による発表内容を中心に紹介する。  がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害は、現時点で有効な評価方法や治療は確立されていないが、がんそのものによる肉体的・精神的影響によって治療前からみられるもの、化学療法や手術、内分泌療法などの治療に伴ってみられるものがあると考えられている。橋本氏は、乳がん、卵巣がん、消化器がんなどにおける海外の報告を紹介。治療前は20~30%の患者で1)、化学療法に伴うものとして17~75%の患者でみられたという報告がある(報告により認知機能の評価法が異なり、幅のある結果となっている)2~3)。

エヌトレクチニブ、NTRK固形がんとROS1肺がんでFDA承認

 2019年8月15日、米国食品医薬品局(FDA)は、NTRK融合遺伝子陽性でほかの治療法がない固形がんに対して、ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブを迅速承認した。同時に、転移のあるROS1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対しても承認している。  NTRK陽性がんの有効性は、ALKA、STARTRK-1、STARTRK-2の3つの多施設単群臨床試験のいずれかでエヌトレクチニブを投与された54例の成人患者で検討された。54例の独立評価委員による全奏効率(ORR)は57%(95%CI:43~71)であった。奏効期間(DOR)は、患者の68%が6ヵ月以上は、45%が12ヵ月以上であった。

妊娠性肝内胆汁うっ滞症、ウルソデオキシコール酸常用は再考を/Lancet

 妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦をウルソデオキシコール酸で治療しても、周産期の有害転帰は低下しないことから、ウルソデオキシコール酸の常用は再考されるべきである。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLucy C. Chappell氏らが、イングランドとウェールズの33施設で妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦を対象に実施した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(PITCHES)の結果を報告した。妊婦の皮膚掻痒と血清胆汁酸濃度の上昇で特徴づけられる妊娠性肝内胆汁うっ滞症は、死産、早産、新生児治療室への入室の増加と関連がある。ウルソデオキシコール酸はこの治療に広く使用されているが、先行研究では症例数が限られており統計学的な有意差もなく、エビデンスは不十分であった。Lancet誌オンライン版2019年8月1日号掲載の報告。

病院ランキングと患者アウトカムは関連する?/JAMA Surgery

 出版不況と言われる中、相変わらず病院ランキング本だけは堅調と言われている。米国の病院ランキング本をめぐる興味深いエビデンスが報告された。米国・カリフォルニア大学アーバイン医療センターのSahil Gambhir氏らが、US News & World Report(USNWR)掲載の年間ランキングが最高位の病院について、ランキング外の病院と比較した結果、高度な腹腔鏡下消化器外科手術に関する病院ランキングデータと、良好な患者アウトカムは関連していないことが示された。