日本人NAFLD患者の種々のがん予測に亜鉛測定が有用

提供元:ケアネット

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公開日:2019/09/12

 

 血清亜鉛(Zn)濃度の低下は肝性脳症や味覚異常など、さまざまな疾患に影響することが報告されている。しかしながら、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)患者における関連はほとんど報告されていない。今回、名古屋大学消化器内科学の伊藤 隆徳氏らは、血清中のZn濃度と総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比(BTR:molar ratio of total branched-chain amino acid to tyrosine)が、NAFLD患者の予後と関係することを明らかにした。著者らは、「血清中のBTRおよびZn濃度が、それぞれNAFLD患者の肝細胞がん(HCC)および他臓器がんの発生予測に有用」とコメントしている。Nutrition&Cancer誌オンライン版2019年8月21日号掲載の報告。

 本研究では、名古屋大学と大垣市民病院において1999年1月~2014年12月の期間に肝生検を受け、NAFLDと診断された363例のうち、基準を満たした179例を登録。NAFLD患者の悪性腫瘍の発生率に対する血清中のBTRとZn濃度の影響を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・被験者179例の内訳は、NAFLが71例、NASHが108例だった。
・平均年齢は53歳(四分位:40~62歳)、女性82例(45.8%)、男性97例(54.2%)だった。
・被験者の各中央値はBTR:6.7、Zn:78.0μg/dLだった。
・フォローアップ期間(中央値7.9年)中にHCCは7例(3.9%)、他臓器がんは10例(5.6%)発生し、他臓器がんの内訳として乳がん・婦人科がん・大腸がんが多くを占めていた。
・Bruntの分類による活動性は、Grade1が107例(59.8%)、Grade2が64例(35.8%)、Grade3が8例(4.5%)であり、線維化は、Stage0が49例(27.4%)、Stage1が72例(40.2%)、Stage2が29例(16.2%)、Stage3が25例(14.0%)、そしてStage4が4例(2.2%)だった。
・Cox比例ハザードモデルによる多変量解析により明らかとなったHCCのリスク因子は、肝線維化(F3~4、ハザード比[HR]:24.292、95%信頼区間[CI]:2.802~210.621、p=0.004)、BTR 5.0未満(HR:5.462、95%CI:1.095~27.253、p=0.038)であった。一方で、他臓器がんのリスク因子としては、血清Zn濃度70μg/dL未満(HR:3.504、95%CI:1.010~12.157、p=0.048)と病理学的肝内炎症(A2~3、HR:3.445、95%CI:0.886~13.395、p=0.074)が選択された。
・血清中のBTR低値(5.0未満)およびZn欠乏(70μg/dL未満)の患者では、HCC(p<0.001)と他臓器がん(p=0.026)の発生率がそれぞれ有意に高かった。

(ケアネット 土井 舞子)