有名病院の収益構造を考える。さらに収益を生む方法は何か?

  • 公開日:2012/11/02

10月13日(土)東京女子医科大学・河田町キャンパスにおいて山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)主催による「山本雄士ゼミ」の第6回が開催された。今回は、ケーススタディとして「クリーブランド・クリニック」を取り上げ、アメリカ有数の大病院における経営マネジメントのディスカッションを行った。

山本雄士ゼミは、ハーバード・ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した山本氏をファシリテーターに迎え、ケーススタディを題材に医療の問題点や今後の取組みをディスカッションによって学んでいく毎月1回開催のゼミである。

自分の立ち位置はどこにあるのか?

山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)

後期の第1回目となる今回は、初めて出席するゼミ生も多く、山本氏よりゼミの目的や理念が説明された。はじめに日本の医療や医療制度について経済的視点から解説を述べた後に、「このゼミは、これからの医療の問題解決のために自分の知っていること、知らないことを知るためのゼミ。まず自分の立ち位置と自分のいる世界(医療業界)のルールを知ることが大事。また、このゼミはリスク・フリーの場(発言に責任を問われない)であり、このゼミでディスカッションができなければ、今後、物事を変えられない。物怖じせずに、このゼミの場を楽しんでほしい。発言をしないのは損!」とゼミへの心構えを説明し、ケースに入った。

あなたがCEOなら病院の体力増強をどう行う?

クリーブランド・クリニック(以下CLC)は、クリーブランド(オハイオ州)に本拠地を置き、常勤医師1,800人、看護師9,000人、売上高48億ドル(営業利益 約3億5,000万ドル:約7%)を誇る医療機関。全米の病院ランキングでも常に上位に位置する病院で、診療科は心疾患、小児科等11科があり、外来と入院患者を同じ場所で診る診療ユニット制度などユニークな取り組みを行うほか、病院のIT化にも力を入れ、電子カルテの導入や患者自身が自分カルテを見ることができる「マイチャート」等のサービス提供を行っている。また、海外連携も盛んでトロント(カナダ)、アブダビ(アラブ首長国連邦)、ウィーン(オーストリア)でも医療サービスを提供している。

山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)

はじめに山本氏から「CLCが医療の質をさらに向上させるためにとれる戦略は何か?」という問いかけに、「診療ユニット制度の拡大」や「組織編成」などがゼミ生より提案された。

次に「CLCの患者へのアクセス向上の方法とは?」という問いかけに対して「在宅への進出」や「病診連携、病病連携の充実」、「マーケティングの実施」、「病院に学びの場等の付加機能の設置」など多くの提案が行われた。

次に「CLCは人気病院であるのに、患者の囲い込みができていない。その理由は?」という問いかけに対し、「家庭医の段階で治療が終わっている」や「患者の地域的、経済的理由」、「患者の意識の低さ」などの意見が出た。これらに対する解決策を山本氏が問うと「企業と連携し、社員の健康維持目的で機会損失を失くす」や「予防のコストと疾患治療のコストを比較させ、前者が有利だと患者啓発を行う」などの提案がゼミ生よりあげられた。

CLCの強さを分析すると

次に山本氏より「CLCの強さは何か?」と問題提起がされた。

これに対してゼミ生からは、

山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)
  • 医師の業績評価がチーム評価(360度評価)である
  • 同じ意識、目的、理念をもった仕事へのやりがい
  • 臨床の専門性を伸ばせる環境
  • 複数診療科での診療
  • CLCブランドが確立している
  • 優秀なスタッフの存在
  • 実用的なITサービスやシステムが確立している
  • 情報公開が徹底されている
  • 患者が診療情報にアクセスしやすい

等が、ケースの内容に基づいて列挙された。次に「これらを実現している要素についての分析では?」との問いかけに、「トップのリーダーシップ」や「PDCAがしっかりしている」、「スタッフが定着している」、「病院理念の共有化」、「(医学部があるので)人を育てる気風」などが挙げられた。

続いて病院をナンバーワンにさせる方法は何があるかとの質問に、ゼミ生から「病院のプラットフォーム化を達成し、患者数を増やす、囲い込む」(臨床数が増えれば比例して質も向上する)というものや「不採算な出先病院からの撤退で合理化を目指す」などの提案が行われた。

最後に山本氏がまとめとして、「アメリカのビジネス界では、ルールの変更が散見される。これは重要なことで、自分でルールの変更ができる、ルールを決めることができる人がビジネスの世界では勝利する。このことは覚えておいてください」と結び、今回のゼミを終了した。

★今後のスケジュールは次の通り(いずれも16:00~19:00の開催予定)。

開催日 概略
第10回 2月16日(土) セダケア(地域のヘルスケアシステムのケーススタディ)
ゼミ合宿 3月23日(土)、24日(日) アメリカの医療保険制度と,組織論やリーダーシップ論など

プロフィール

山本 雄士 ( やまもと ゆうじ ) 氏株式会社ミナケア 代表取締役慶應義塾大学医学部クリニカルリサーチセンター 客員准教授株式会社 ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャー公益財団法人 日本医療機能評価機構 客員研究員

[略歴]

1993年 北海道立札幌南高校卒業

1999年 東京大学医学部医学科卒業 循環器内科臨床医として都立広尾病院、東京大学医学部付属病院等に勤務

2003年 東京大学医学系研究科入学

2005年 ハーバード大学ビジネススクール入学

現在、株式会社 ミナケア 代表取締役

株式会社 ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャー

内閣官房医療イノベーション推進室企画調査官

慶應義塾大学医学部クリニカルリサーチセンター 客員准教授

公益財団法人 日本医療機能評価機構 客員研究員

訳書に『医療戦略の本質』(マイケル・E・ポーターら、日経BP社)、『奇跡は起こせる』(ジョン・クラウリー、宝島社)、共著書に『病院経営のしくみ』、『病院経営のしくみ2』(ともに日本医療企画)など。

[山本雄士氏著作]

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