ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:178

テストステロンの補充は動脈硬化を進展させるか/JAMA

 テストステロンの長期投与がアテローム性動脈硬化に及ぼす影響は確立されていない。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShehzad Basaria氏らは、今回、TEAAM試験において、加齢に伴いテストステロン値が低下した高齢男性に対するテストステロンの3年投与は、アテローム性動脈硬化を進展させず、性機能や健康関連QOLを低下させないことを示した。近年、米国ではテストステロンを使用する高齢男性が増加しているが、長期投与のベネフィットやリスクは明らかではなく、心血管イベントとの関連については相反する結果が報告され、前臨床研究でも矛盾するデータが示されているという。JAMA誌2015年8月11日号掲載の報告より。

トロポニンT値、2型糖尿病患者の心血管リスク予測に有用/NEJM

 心筋トロポニンT値は、2型糖尿病と安定虚血性心疾患の合併患者において、心血管系が原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中の独立した予測因子であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrendan M. Everett氏らによる検討の結果、明らかにされた。また、迅速血行再建術でメリットが得られる患者はトロポニンT値14ng/L未満であることも示された。心筋トロポニン値は、急性冠症候群患者において、緊急血行再建が有効の可能性がある患者を同定するために用いられている。研究グループは、安定虚血性心疾患患者においても、心筋トロポニン値を用いて心血管イベントリスクの高い患者を同定し、迅速な冠血行再建によるベネフィットを得られることが可能であるとの仮説を立て、その検証試験を行った。NEJM誌2015年8月13日号掲載の報告より。

ハイリスク医療機器の臨床試験の質・量、市販前後で変化/JAMA

 米国FDAの市販前承認(PMA)を受け上市したハイリスク医療機器の臨床試験は、市販前と市販後では量・質ともに変化がみられ、承認後3~5年で市販後試験を完了していたのは約13%であったことなどが明らかにされた。イェール大学医学部のVinay K. Rathi氏らが、2010~2011年に承認されたハイリスク(生命補助・維持または不当なリスクをもたらしうる)医療機器について調べ、報告した。JAMA誌2015年8月11日号掲載の報告より。

周術期の音楽が術後の疼痛・不安を軽減/Lancet

 成人患者の手術後の疼痛や不安感の軽減を支援する手段として、音楽が有効であることが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のJenny Hole氏らの検討で明らかとなった。医療における音楽の使用の歴史は長く、19世紀半ばにはフローレンス・ナイチンゲールが入院患者の回復を目的に導入しており、周術期の患者支援としては1914年にEvan Kane氏が初めて報告した。音楽は、施行が簡便で失敗がほとんどなく、非侵襲的で安全かつ安価な介入法であるが、その有用性についてはこれまでに包括的なレビューがいくつかあるものの、メタ解析は行われていないという。Lancet誌2015年8月12日号掲載の報告。

Stage IIIA/N2のNSCLC、術前化学放射線療法は有用か/Lancet

 Stage IIIA/N2の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、術前の化学療法に放射線療法を併用しても、さらなるベネフィットは得られないことが、スイス・Kantonsspital WinterthurのMiklos Pless氏らSAKK Lung Cancer Project Groupの検討で示された。局所進行Stage III病変は治癒の達成が可能な最も進行したNSCLCであるが、最終的に患者の60%以上ががんで死亡する。Stage IIIA/N2の標準治療は同時併用化学放射線療法と手術+化学療法で、後者については術後または術前化学療法+手術が、手術単独よりも生存期間において優れることが示されているが、術前化学放射線療法+手術の第III相試験はこれまで行われていなかった。Lancet誌オンライン版2015年8月11日号掲載の報告より。

家庭内暴力・多量飲酒女性、救急での短期動機付け介入の効果は?/JAMA

 パートナーによる家庭内暴力(Intimate partner violence:IPV)や過度の飲酒経験のある女性に対して、緊急外来部門(ED)での短期動機付け介入は、評価対照群との比較でそれらの発生日数を有意に減らさなかったことが、米国・ペンシルベニア大学のKarin V. Rhodes氏らによる無作為化試験の結果、明らかにされた。著者は、「結果は、こうした設定での短期動機付け介入を、支持しないものであった」と結論している。これまで、ED訪問時に提供したIPVや過度の飲酒に対する短期動機付け介入の効果について統合した検証は行われていなかった。JAMA誌2015年8月4日号掲載の報告より。

拡大基準ドナーからの腎移植、長期生着要因は?/BMJ

 フランス・パリ第5大学のOlivier Aubert氏らは、拡大基準ドナー(extended criteria donor:ECD)腎移植の長期アウトカムを評価し、予後を規定する主要因を明らかにする前向き住民ベースコホート試験を行った。その結果、移植7年後の移植片の生着率はECD移植レシピエントのほうが有意に低かったが、移植レシピエントにおけるドナー特異的抗HLA抗体(DSA)の非存在と冷虚血時間の短縮で、アウトカムは改善可能であることが明らかになったことを報告した。ECDは、ドナーを60歳以上もしくは50~59歳で血管系併存疾患がある人まで適応を拡大した基準である。著者は今回の結果を踏まえて、「DSAと冷虚血時間の2つの因子を修正後にECD移植は満足な長期予後を得ることができ、標準基準ドナー(SCD)腎移植と類似した移植片の生着率を達成可能である」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年7月31日号掲載の報告より。

全盲者の概日リズム調整に新規メラトニン受容体作動薬が有効/Lancet

 非24時間睡眠覚醒障害の全盲者における概日リズムの乱れの同調に、tasimelteonが有効であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSteven W Lockley氏らの検討で示された。ヒトの概日周期は24時間よりも長く、明暗の周期に反応することでペースメーカー(体内時計)を24時間に同調させているが、非24時間睡眠覚醒障害ではこの同調機能が損なわれて入眠や起床時間が徐々に遅くなり、注意力や気分の周期的変動が発現し、就学や就業など社会的な計画的行動の維持が困難となる。全盲者の55~70%に概日リズムの脱同調がみられるという。tasimelteonは、松果体ホルモンであるメラトニンの2つの受容体(MT1、MT2)の作動薬で、先行研究で、晴眼者への経口投与により概日リズムを変移させ、また非24時間概日活動リズムのラットに注射したところこれを同調させたことが示されていた。Lancet誌オンライン版2015年8月4日掲載の報告。

多枝病変STEMI、PCI後のFFRガイド下完全血行再建術は有用か/Lancet

 多枝病変のあるST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者においてプライマリPCI後、血流予備量比(FFR)を測定評価して行う完全血行再建術が、さらなる侵襲的介入を行わない群と比較して、将来的なイベントリスクを有意に抑制することが示された。3つのエンドポイント(全死因死亡、非致死的再梗塞、再度の血行再建術)を複合評価して示された結果で、このうち完全血行再建術群の優越性は再度の血行再建術が有意に減少したことによるものであった。全死因死亡、非致死的再梗塞については同等であった。デンマーク・コペンハーゲン大学のThomas Engstrom氏らが、非盲検無作為化対照試験DANAMI-3―PRIMULTIの結果、報告した。Lancet誌オンライン版2015年8月4日号掲載の報告。

転移性前立腺がんのADT、ドセタキセル併用でOS延長/NEJM

 転移性前立腺がん治療について、アンドロゲン除去療法(ADT)単独よりも、ADT開始時にドセタキセルを6サイクル併用することで、全生存期間が有意に延長することが明らかにされた。米国ダナ・ファーバーがん研究所のChristopher J. Sweeney氏らが報告した。ADTは1940年代から転移性前立腺がんの治療の柱となっているが、患者への治療負荷の問題、また治療抵抗性が多く発生するなどの課題があり模索が続けられてきた。化学療法+ADT併用の先行研究では、有益性は示されなかったが、小規模の低腫瘍量患者を対象とした検討であったことから、今回研究グループは、高腫瘍量と低腫瘍量に層別化した前向きの検討を行い、ADT単独よりもADT+ドセタキセル併用のほうが、生存期間が延長するのかについて評価した。NEJM誌オンライン版2015年8月5日号掲載の報告より。

脳梗塞後の心房細動患者でのワルファリンの有用性/BMJ

 虚血性脳卒中を呈した心房細動患者に対するワルファリン投与は、長期臨床的アウトカムや自宅生活の期間を改善することが明らかにされた。米国・デューク臨床研究所のYing Xian氏らが、観察研究の結果、報告した。ワルファリンは、心房細動患者の血栓塞栓症予防のために使用が推奨されている。その根拠は、選択された患者集団での臨床試験に基づくものであり、試験設定以外(リアルワールド)の心房細動については、ワルファリンの投与および臨床的な有益性は確認されておらず、とくに、虚血性脳卒中を呈した高齢者において不明であった。BMJ誌オンライン版2015年7月31日号掲載の報告。

心房細動アブレーション、部位特定にアデノシンが効果的/Lancet

 発作性心房細動へのカテーテルアブレーションにおいて、肺静脈隔離術後にアデノシンを投与し休止伝導部位を特定することが、無不整脈生存を改善する安全で非常に効果的な戦略であることが明らかにされた。カナダ・モントリオール大学のLaurent Macle氏らが、国際多施設無作為化優越性試験ADVICEの結果、報告した。著者は、「本アプローチを、臨床でルーチンとすることを検討すべきである」とまとめている。心房細動へのカテーテルアブレーションは増大しているが、不整脈再発の頻度が高い。アデノシンの投与は、休止伝導部位(dormant conduction)を明らかにし、伝導再発(reconnection)リスクのある肺静脈を特定可能である。それにより心房細動アブレーションの追加部位が導かれ、無不整脈生存が改善できるのではないかと見なされていた。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号の掲載報告。

唐辛子をほぼ毎日食べると死亡リスク低下/BMJ

 香辛料入り食品を習慣的に摂取すると、あまり食べない集団に比べ、全死因死亡のほか、がん、虚血性心疾患、呼吸器疾患による死亡が減少することが、China Kadoorie Biobank collaborative groupのJun Lv氏らの調査で示された。香辛料は、世界の食文化に不可欠の要素であり、食品の味や風味付け、彩り、保存食のほか医療用としても長い歴史を持つ。最近は、とくに味付けのための使用が増加しており、中国では全国的に唐辛子の消費量が多いという。一方、カプサイシンなど、香辛料の主要な生理活性成分は、種々の慢性疾患において有益な役割を果たすことが、実験的研究や地域住民研究で報告されている。BMJ誌オンライン版2015年8月4日掲載の報告より。

医療従事者の手指衛生励行キャンペーンの効果/BMJ

 WHOが2005年に始めた医療従事者の手指衛生励行キャンペーン(WHO-5)により、医療従事者の手指衛生コンプライアンスが改善したことが、タイ・マヒドン大学のNantasit Luangasanatip氏らによるシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、報告された。WHO-5は、医療従事者の手指衛生コンプライアンスが平均38.7%(範囲:5~89%)であったことを鑑みプログラムされたキャンペーン。「システムの変更」「訓練と教育」「観察とフィードバック」「院内での喚起」「病院の安全文化」という5つの項目から成る多様な戦略を推進することで手指衛生の改善を図る。検討の結果、さらなる戦略の追加で改善に結び付くことが判明し、著者は「目標設定、インセンティブ、アカウンタビリティ戦略の追加で、さらなる改善をもたらすことが可能なようだ」と述べている。ただし、それら介入に必要なリソースの報告は不十分なままであるとも指摘している。BMJ誌オンライン版2015年7月28日号掲載の報告。

高TG血症の新規治療薬、アポリポ蛋白C-IIIを有意に低下/NEJM

 高トリグリセリド血症治療薬として新規開発中のISIS 304801は、トリグリセリド値の有意な低下と関連することが報告された。ベースラインのトリグリセリド値が異なる85例を対象に、カナダ・モントリオール大学のDaniel Gaudet氏らが行った第II相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果、示された。ISIS 304801は、血漿トリグリセリド値の主要な調節因子であるアポリポ蛋白C-III(APOC3)合成の第2世代アンチセンス阻害薬である。NEJM誌2015年7月30日号掲載の報告より。

慢性HBV感染の有病率、初の世界的分析結果/Lancet

 世界の慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の有病率は3.61%であり、アフリカおよび日本を含む西太平洋地域が最も高率であることなどが、ドイツ・ヘルムホルツ感染症研究センターのAparna Schweitzer氏らにより明らかにされた。世界的分析結果は初となるもので、研究グループは、1965~2013年の発表データを系統的にレビューし、プール解析を行った。Lancet誌オンライン版2015年7月28日号掲載の報告。

小児へのデング熱ワクチン、効果あるも年齢差/NEJM

 2~16歳児を接種対象とした長期サーベイランス中のデング熱ワクチン(遺伝子組み換え型生減弱4価タイプ:CYD-TDV)について、3年時点の中間解析結果が発表された。同期間中の全被験者リスクは、ワクチン接種群が対照群よりも低下したが、9歳未満児で原因不明の入院リスクの上昇がみられたという。インドネシア大学のSri Rezeki Hadinegoro氏らCYD-TDVデング熱ワクチンワーキンググループが、アジア太平洋およびラテンアメリカでそれぞれ行われている3件の無作為化試験の結果を統合分析して報告した。NEJM誌オンライン版2015年7月27日号掲載の報告。

アロマターゼ阻害薬術後療法での乳がん死抑制効果~TAMとの比較/Lancet

 閉経後早期乳がんの術後ホルモン療法において、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)はタモキシフェン(TAM)に比べ、再発や乳がん死の抑制効果が高いことが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。閉経後早期乳がんの治療では、アロマターゼ阻害薬の5年投与またはTAM 2~3年投与後のアロマターゼ阻害薬2~3年投与は、TAM 5年投与よりも再発率が低いことが示されているが、乳がん死への影響などはいまだに不明だという。Lancet誌2015年7月23日掲載の報告。

早期乳がんの術後ビスホスホネート、ベネフィットは閉経女性のみ?/Lancet

 早期乳がんに対するビスホスホネート製剤による術後補助療法は、骨再発を抑制し、生存期間の改善をもたらすが、明確なベネフィットは治療開始時に閉経に至っている女性に限られることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で示された。術後ビスホスホネート療法は、早期乳がん女性の無骨転移生存、無病生存、全生存を改善するとの報告がある一方で、全体では有意な効果はないものの、閉経後または高齢女性でベネフィットを認めたとの報告がある。これは、ビスホスホネート製剤は性ホルモンが低下した女性(閉経または卵巣抑制療法)にのみベネフィットをもたらすとの仮説を導く。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号掲載の報告より。

ポンプ本体全内面を生体材料で構成した全置換型人工心臓、初の臨床例を報告/Lancet

ジャーナル四天王2  新たに開発された生体弁を用いた全置換型人工心臓CARMAT TAH(C-TAH)の、最初の臨床使用例2例の報告が、フランス・パリ大学のAlain Carpentier氏らにより発表された。2例とも最終的には死亡となったが、うち1例は150日目に退院することができたという。著者は「今回の経験知は、生体材料を用いた全置換型人工心臓の開発に重要な貢献をもたらすことができた」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年7月28日号掲載の報告。