医療一般|page:5

肥満症治療薬は手術前の胃残留量増加に関連

 ウゴービやオゼンピックのような肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)の使用者は、全身麻酔を要する手術前でも胃残留量の多いことが、新たな研究から明らかになった。研究グループは、GLP-1受容体作動薬の使用者の場合、現行のガイドラインで推奨されている手術前の絶食時間では不十分な可能性を示唆する結果だとの見方を示している。米テキサス大学健康科学センターヒューストン校のSudipta Sen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に3月6日掲載された。  全身麻酔を要する手術では通常、誤嚥性肺炎や窒息のリスクを防ぐために手術前の絶食が求められる。Sen氏らは、全身麻酔下にあったGLP-1受容体作動薬の使用者が、手術中に自分の吐物を誤嚥したとの報告を受けて、GLP-1受容体作動薬の使用と胃残留量の増加との関連を調べることを決めたと話す。

8人に1人の高齢者が手術後1カ月以内に再入院か

 全身麻酔を要する大手術を受けた高齢者のほぼ8人に1人(12%)が手術後30日以内に、また4分の1以上(28%)が半年以内に再入院していると推定されることが、新たな研究で明らかにされた。フレイル状態の人や認知症の人での再入院リスクはさらに高かったという。米イェール大学医学部外科分野准教授のRobert Becher氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に2月28日掲載された。  この研究では、National Health and Aging Trends Study(NHATS)に参加した65歳以上のメディケア受給者のデータを用いて、大手術後30日以内と180日以内の再入院率が推定された。大手術は、全身麻酔を用いて手術室で行われる、非経皮的かつ非内視鏡的な侵襲的手術と定義し、手術部位により6つのカテゴリー〔筋骨格系、腹部(消化器も含む)、血管、脳神経、心胸部、その他〕に分類した。NHATS参加者のうち、1,477人(平均年齢79.5歳、女性56%)が2011年から2018年の間に総計1,780件(全国レベルでは955万6,171件)の大手術を受けていた。

小林製薬サプリ摂取者、経過観察で注意すべき検査項目・フォローの目安

 小林製薬が販売する機能性表示食品のサプリメント『紅麹コレステヘルプ(以下、サプリ)』による腎機能障害の発生が明らかとなってから約2週間が経過した。先生の下にも本サプリに関する相談が寄せられているだろうか。日本腎臓学会が独自で行った本サプリと腎障害の関連について調査したアンケートの中間報告から、少しずつサプリ摂取患者の臨床像が明らかになってきている。

初診で死亡を確認、死亡診断書を書くための条件を明記-厚労省「死亡診断書記入マニュアル」

 厚生労働省は、毎年策定している「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」の令和6年度版を公開した。主な改訂点として、生前に診療を担当していなかった医師が死亡診断書を記載する場合の条件が明記された。また、死亡診断書および死体検案書の取り扱いに関するQ&Aもホームページに公開されている。  今回の改訂により、「別にかかりつけ医がいる患者が心肺機能停止で病院に搬送され、初診で死亡を確認したとき」や「連携する別の医師が訪問診療を行っていた患者が死亡し、死後診察を行ったとき」など、患者の生前に診療を担当していなかった医師であっても、以下の3条件をすべて満たす場合には、死亡診断書を交付できることが新たに明記された。

レンバチニブ+ペムブロリズマブ進行・再発子宮体がん1次治療の成績(LEAP-001)/SGO2024

 進行子宮体がんにおけるレンバチニブ+ペムブロリズマブの1次治療は主要評価項目を達成できなかった。  レンバチニブ+ペムブロリズマブは第III相KEYNOTE‐775試験で、既治療の進行子宮体がんにおける生存改善が示されている。米国婦人科腫瘍学会(SGO2024)では、オーストリア・インスブルック医科大学のChristian Marth氏が1次治療でのレンバチニブ+ペムブロリズマブを評価したENGOT-en9/LEAP-001試験の中間解析結果を報告した。

うつ病における疼痛症状と抗うつ薬の治療結果~系統的レビューとメタ解析

 うつ病患者では、疼痛を伴う身体症状がみられることが多い。うつ病患者における疼痛を伴う身体症状は、抗うつ薬治療効果の低下と潜在的に関連している。中国・北京大学のJia Jia Liu氏らは、ベースライン時の疼痛レベルと抗うつ薬治療効果との関連を評価した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2024年3月13日号の報告。  事前に登録したプロトコールに基づき、2023年2月までに公表された研究をPubMed、Embase、Cochrane Libraryのデータベースより検索した。うつ病患者のうち、抗うつ薬治療反応患者/寛解患者および非治療反応患者/非寛解患者における治療前の疼痛対策を報告したオリジナル研究を含めた。データ抽出と品質評価は、2人の独立したレビュー担当者によりPRISMAに従い実施した。主要アウトカムは、抗うつ薬治療反応患者/寛解患者と非治療反応患者/非寛解患者の間での治療前の疼痛レベルの差とした。ランダム効果メタ解析を用いてエフェクトサイズ(Hedge's g)を算出し、サブグループ解析とメタ回帰分析を用いて不均一性の原因を調査した。

日本人高齢者、高感度CRPと認知症が関連

 血清高感度C反応性蛋白(CRP)とアルツハイマー病などの認知症との関連についての報告は一貫していない。今回、愛媛大学の立花 亜由美氏らが全国8地域の高齢者約1万人を調査したところ、血清高感度CRP値の上昇が認知症全体やアルツハイマー病と関連し、側頭皮質萎縮のリスクの増加とも関連することが示唆された。Scientifc Reports誌2024年3月28日号に掲載。

国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査を申請/大塚

 大塚製薬、国立がん研究センター、九州大学、京都大学、名古屋医療センター、東京大学医科学研究所附属先端医療研究センター、慶應義塾大学医学部は2024年3月29日、共同で設計・開発してきた造血器腫瘍遺伝子パネル検査について、国内での製造販売承認申請を行ったと発表した。  がん遺伝子パネル検査は数種類の性hんが固形腫瘍に保険適用されているが、造血器腫瘍では同様の製品はない。そのため、造血器腫瘍では保険診療下のゲノム医療が行われていない。

乳がん免疫療法中の抗菌薬投与が予後に影響?

 ペムブロリズマブによる術前治療中のHER2陰性高リスク早期乳がん患者において、抗菌薬の投与と高い残存腫瘍量(RCB)との関連が示唆された。これまで、免疫療法中の抗菌薬への曝露が、さまざまな種類のがんにおいて臨床転帰に悪影響を与えることが報告されている。米国・ミネソタ大学のAmit A. Kulkarni氏らは、ISPY-2試験でペムブロリズマブが投与された4群について、抗菌薬への曝露がRCBおよび病理学的完全奏効(pCR)へ与える影響について評価した2次解析の結果を、NPJ Breast Cancer誌2024年3月26日号に報告した。

膝関節の石灰化は変形性膝関節症の悪化要因

 以前は無害と考えられていた膝関節の石灰化は、変形性膝関節症(OA)を悪化させる一因となり得ることが、米ボストン大学医学部教授のTuhina Neogi氏らによる研究で明らかになった。関節の石灰化により骨と骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減り、関節へのダメージが促される可能性のあることが示唆されたのだ。この研究の詳細は、「Arthritis & Rheumatology」に2月19日掲載された。  OAは膝関節の軟骨がすり減ることで痛みや変形が生じる疾患で、患者数は、米国で約3400万人、世界では6億人に上る。研究グループによると、現状では、OAの進行を止めるのに有効な治療法はないという。

CKDへの適応が追加されたエンパグリフロジンへの期待/ベーリンガーインゲルハイム・リリー

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)に、2024年2月、慢性腎臓病(CKD)の適応が追加された。この適応追加に関連して日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、プレスセミナーを共同開催した。セミナーでは、CKDの概要と最新治療、エンパグリフロジンのCKDに対するEMPA-KIDNEY試験の結果などについて講演が行われた。  はじめに「慢性腎臓病のアンメットニーズと最新治療」をテーマに岡田 浩一氏(埼玉医科大学医学部腎臓内科 教授)が講演を行った。  腎炎、糖尿病、高血圧、加齢など腎疾患の原因はさまざまあるが、終末期では末期腎不全となり透析へと進展する。この腎臓疾患の原因となる病気の発症から終末期までを含めてCKDとするが、CKDの診療には次の定義がある。

ペムブロリズマブ+化学療法の進行・再発子宮体がんに対するOS(NRG GY018)/SGO2024

 化学療法・ペムブロリズマブ併用は、ミスマッチ修復機能(MMR)状況にかかわらず、未治療の進行・再発子宮体がんの全生存期間(OS)を改善する傾向を示した。  進行・再発子宮体がんを対象とした第III相無作為化プラセボ対照NRG GY018試験において、ペムブロリズマブ+化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)とペムブロリズマブのシークエンス治療は、MMR状況を問わず主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRamez Eskander氏は、米国婦人科腫瘍学会(SGO2024)で、NRG GY018試験の副次評価項目の結果(中間解析1)を発表した。

市中肺炎、12%が「不適切な診断」

 市中肺炎は一般的な疾患だが、診断の正確性とそれに関連する有害性についてはあまり知られていない。米国ミシガン大学・アナーバー校のAshwin B. Gupta氏らは市中肺炎の不適切な診断の特徴を明らかにすることを目的に、前向きコホート研究を行った。この結果はJAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年3月25日号に掲載された。  ミシガン州の48の病院で、市中肺炎を理由に入院し、入院1日目または2日目に抗菌薬投与を受けた成人患者を対象とした。調査は2017年7月1日~2020年3月31日にカルテレビューおよび患者への電話連絡で実施され、データ解析は2023年2~12月に行われた。

米国頭痛学会声明、片頭痛に対するCGRP標的療法の位置付け

 これまで第1選択治療として考えられてきたすべての片頭痛の予防的治療は、他の適応症のために開発され、その後片頭痛予防にも採用されている。これらの治療法は、有効性および忍容性の問題によりアドヒアランス低下が懸念されていた。前臨床および臨床エビデンスよりカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が片頭痛発症に重要な役割を果たしていることが示唆され、いくつかの片頭痛特異的な治療法が開発された。これらのCGRPをターゲットとした治療法は、片頭痛のマネジメントに革新的な影響を及ぼしたものの、第1選択治療として広く普及しているとはいえない。米国・UCLA Goldberg Migraine ProgramのAndrew C. Charles氏らは、米国頭痛学会から表明された片頭痛予防に対するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)をターゲットとした治療法に関する最新情報を報告した。Headache誌オンライン版2024年3月11日号の報告。

ベイフォータス、新生児および乳幼児のRSウイルス発症抑制・予防にて製造販売承認取得/AZ

 アストラゼネカとサノフィは2024年3月27日付のプレスリリースにて、長時間作用型モノクローナル抗体であるベイフォータス(一般名:ニルセビマブ[遺伝子組換え])が「生後初回または2回目のRS(Respiratory Syncytial)ウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制」ならびに「生後初回のRSウイルス感染流行期の前出以外のすべての新生児および乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防」を適応として、3月26日に日本における製造販売承認を取得したことを発表した。

再発性尿路感染症、治療後も続く痛みの原因を解明か

 尿路感染症(UTI)の再発を繰り返す人は、抗菌薬による治療後も骨盤部位の痛みや頻尿が続くことが多いが、その原因は不明だった。しかし、米デューク大学のByron Hayes氏らが実施した研究で、UTIの発症を繰り返すことで膀胱内に非常に感度の高い神経細胞が過剰に増殖することが、これらの症状を引き起こしている可能性のあることが明らかになった。この研究結果の詳細は、「Science Immunology」に3月1日掲載された。  この研究でHayes氏らは、尿検査では陰性であるが痛みが残存する再発性UTI患者とUTIではない対照の膀胱生検を行い、痛みや炎症の調節に関与する神経ペプチドのサブスタンスP(SP)レベルについて比較した。その結果、再発性UTI患者では対照に比べて、粘膜固有層でのSPレベルが有意に高いことが明らかになった。尿検査でも、再発性UTI患者ではSPレベルが高いことが示された。これらのことから、再発性UTI患者では感覚神経が高度に活性化しており、それが長引く痛みや頻尿の原因である可能性の高いことがうかがわれた。

約20年ぶりの下部尿路症状の疫学調査、その結果は?

 本邦では、2002年に下部尿路症状(LUTS)に関する初めての疫学調査が実施され、過活動膀胱(OAB)の有病率などが報告された。当時の調査の結果では、40歳以上の男女のうち12.4%がOABに該当するとされ、加齢に伴いその割合は高くなったと報告されていた。また、40歳以上でOAB症状を有する人は、全国で約1,000万人と推計されていた。それ以降は本邦で大規模な疫学調査は行われていなかったが、日本排尿機能学会の前身である神経因性膀胱研究会が発足されてから50年の節目となる2023年において、現在の日本国内のLUTSの有病率と日常生活への影響を明らかにすることを目的として約20年ぶりの疫学調査が実施された。その結果は山梨大学の三井 貴彦氏らにより、International Journal of Urology誌オンライン版2024年3月21日号で報告された。

NSCLCへの周術期ニボルマブ上乗せ、術前療法が未完了でも有効か(CheckMate 77T)/ELCC2024

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験(CheckMate 77T試験)において、周術期にニボルマブを用いるレジメンが良好な結果を示したことがすでに報告されている。本レジメンは、術前にニボルマブと化学療法の併用療法を4サイクル実施するが、有害事象などにより4サイクル実施できない患者も存在する。そこで、CheckMate 77T試験において術前薬物療法が4サイクル未満であった患者の治療成績が検討され、4サイクル未満の患者でも周術期にニボルマブを用いるレジメンが治療成績を向上させることが示された。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のMark M. Awad氏が、欧州肺がん学会(ELCC2024)で報告した。

断酒から“減酒”へ、アルコール依存症の新たな治療戦略

 アルコール依存症やアルコールによる健康障害を回避するためには断酒・禁酒が推奨されてきたが、昨今の風潮ではアルコール依存症の治療でも重症度によっては「減酒」が第一歩となる。なぜ、断酒・禁酒ではなく減酒なのか。株式会社CureAppが主催した『減酒治療に関するメディアラウンドテーブル』では、治療法の時代変遷とそれに基づく減酒アプリ(現在、製造販売承認申請中)の実用化について、宋 龍平氏(減酒治療アプリプロジェクトリーダー/岡山県精神科医療センター臨床研究部 医師)が解説した。

統合失調症患者の脳容積の長期的な減少と認知機能との関連

 統合失調症の脳バイオマーカーを確立することは、精神科医による診断サポートに寄与するだけでなく、疾患経過に伴う脳の進行性変化をフォローするうえで重要となる。最近の研究報告では、統合失調症患者の脳の形態学的特徴が示されており、健常な人と比較し、脳容積が減少した脳領域クラスターにより定義されている。この兆候は、統合失調症患者と健康な人を鑑別するうえで有効であることが証明されており、統合失調症の脳バイオマーカーの有望な候補であることが示唆されている。しかし、長期的な特徴については、いまだ不明なままであった。東京慈恵会医科大学の山崎 龍一氏らは、統合失調症患者の脳容積の変化が時間経過とともにみられるのか、それが臨床アウトカムと関連しているのかについて調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌2024年3月号の報告。