アルツハイマー病への薬物治療は平均余命の延長に寄与しているのか:東北大学

提供元:ケアネット

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公開日:2014/04/23

 

 アルツハイマー型認知症(AD)の進行抑制に対し、ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)は有用であるが、平均余命への影響は不明である。東北大学の目黒 謙一氏らは、AD発症後の平均余命に対するChEIの影響を抗精神病薬の使用および特別養護老人ホームの入所とともに分析した。BMC neurology誌オンライン版2014年4月11日号の報告。

 1999~2012年に宮城県田尻町(現・大崎市)のクリニックを受診したすべての外来患者の診療記録と死亡証明書を含む情報をレトロスペクティブに解析した。対象者基準は、DSM-IV基準に基づいた認知症診断およびNINCDS-ADRDA基準を用いたAD診断、3ヵ月以上の治療歴、死亡前1年未満までのフォローアップ症例とした。

 主な結果は以下のとおり。

・診療記録と死亡証明書が特定できた390例のうち、認知症基準を満たしたのは275例であった。
・ADと診断された100例のうち、ドネペジル治療症例は52例であった。48例は日本でのドネペジル承認前のため薬物治療が行われていなかった。
・AD発症後の平均余命は、ドネペジル治療症例で7.9年、非治療症例で5.3年であった。
・薬物効果と特別養護老人ホーム入所を組み合わせることにより、有意な共変量効果が認められた。
・他の共変量は有意水準に達しなかった。

 以上の結果を踏まえ、著者らは「本研究はレトロスペクティブ研究であり、ランダム化も行われていないなど限界があるものの、ChEI治療はAD発症後の平均余命に好影響をもたらす可能性があることが示された。これは、肺炎などの合併症が減少することで死亡率減少につながった可能性がある」としている。また、「ドネペジルを服用している自宅療養中の患者とドネペジルを服薬していない特別養護老人ホーム入所者で平均余命がほぼ同じであることから、ChEI薬物治療による経済効果も良好であることが示唆される」とまとめている。

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(ケアネット 鷹野 敦夫)