心筋梗塞による心原性ショック、VA-ECMO vs.薬剤単独/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/09/07

 

 梗塞関連心原性ショックの患者において、静脈動脈-体外式膜型人工肺(Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation:VA-ECMO)は薬物療法単独と比較して30日死亡率が低下せず、重大出血および血管合併症を増加することが、ドイツ・Institut fur HerzinfarktforschungのUwe Zeymer氏らによるメタ解析の結果で示された。VA-ECMOをめぐっては、無作為化試験による確たるエビデンスが不足しているにもかかわらず、心原性ショックの患者への使用が増加傾向にある。先行研究の3試験では、生存ベネフィットの検出力が不十分であった。今回示されたメタ解析の結果を踏まえて著者は、「梗塞関連心原性ショックの患者にVA-ECMOを適応するのか、慎重に検討すべきであることが確認された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。

VA-ECMOの早期ルーチン使用vs.至適薬物療法単独をメタ解析で評価

 研究グループは、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Embaseおよび臨床試験レジストリを2023年6月12日まで検索し、梗塞関連心原性ショックの患者に対し、VA-ECMOの早期ルーチン使用と、至適薬物療法単独を比較した無作為化試験を特定した。そのうち、入院無作為化時点から30日時点の全死因死亡の報告があり、試験責任医師らの協力(患者個人データの提出など)が得られた試験を解析対象とした。

 主要アウトカムのオッズ比(OR)は、ロジスティック回帰モデルを用いてプール化した。

VA-ECMO群の重大出血は2.44倍、末梢虚血性血管合併症は3.53倍に

 4試験(被験者数567例、VA-ECMO群284例vs.対照群283例)が特定され、解析を行った。被験者の年齢中央値は64歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、男性81%(458/566例)、約3分の2(68%[364/538例])がST上昇型心筋梗塞で、約3分の2(67%[381/567例]が、無作為化前に心肺機能蘇生を受けていた。

 全体として、VA-ECMOの早期使用で、30日死亡率の有意な低下は認められなかった(OR:0.93、95%信頼区間[CI]:0.66~1.29)。合併症発生率は、VA-ECMO群が対照群に比べ、重大出血(OR:2.44、95%CI:1.55~3.84)、末梢虚血性血管合併症(3.53、1.70~7.34)について高率だった。

 事前に規定したサブグループ解析の結果も一貫しており、VA-ECMOに関するベネフィットは何も示されなかった(交互作用のp≧0.079)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)