ドキシサイクリン曝露後予防、男性間性交渉者の細菌性性感染症に有効か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/04/17

 

 男性間性交渉者(MSM)では、ドキシサイクリン曝露後予防(doxy-PEP)は標準治療と比較して、細菌性性感染症(STI)の発生率が有意に低く、有害事象プロファイルや安全性、受容性に関する懸念はないことが、米国・ザッカーバーグ・サンフランシスコ総合病院・外傷センターのAnne F. Luetkemeyer氏らが実施した「DoxyPEP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年4月6日号で報告された。

米国4施設の無作為化試験

 DoxyPEP試験は、サンフランシスコ市とシアトル市の4つの施設で実施された非盲検無作為化試験であり、2020年8月~2022年5月の期間に参加者の登録が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

 対象は、年齢18歳以上、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に対する曝露前予防(PrEP)を行っている人々(PrEPコホート)、またはHIVに感染している人々(PLWHコホート)で、過去1年間にNeisseria gonorrhoeae(淋菌)、Chlamydia trachomatis(クラミジア・トラコマチス)の感染、または梅毒を有したことのあるMSMおよびトランスジェンダー女性であった。

 被験者は、コンドームを使用しない性交から72時間以内にドキシサイクリン(200mg)の錠剤を内服する群、またはドキシサイクリンを使用しない標準治療を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。STI検査は年4回(3ヵ月ごと)行った。

 主要エンドポイントは、追跡期間の四半期当たり1件以上のSTI(淋病、クラミジア、梅毒)の発生とした。

1例予防のための四半期当たり治療必要数は約5件

 501例が登録された。PrEPコホートが327例(ドキシサイクリン群 220例、標準治療群107例)、PLWHコホートは174例(119例、55例)であった。全体の67%が白人で、7%が黒人、11%がアジア人/太平洋諸島系、30%がヒスパニック系/ラテン系だった。

 PrEPコホートにおいては、STIの診断は、ドキシサイクリン群では四半期の受診570件のうち61件(10.7%)、標準治療群では257件のうち82件(31.9%)であり、両群間の絶対差は-21.2ポイント、相対リスクは0.34(95%信頼区間[CI]:0.24~0.46、p<0.001)であった。

 また、PLWHコホートにおけるSTIの診断は、ドキシサイクリン群では四半期の受診305件のうち36件(11.8%)、標準治療群では128件のうち39件(30.5%)であり、絶対差は-18.7ポイント、相対リスクは0.38(95%CI:0.24~0.60、p<0.001)だった。

 1例のSTI発生の予防に要する四半期当たりの治療必要数は、PrEPコホートが4.7、PLWHコホートは5.3であった。

 3種のSTIの発生率は、いずれもドキシサイクリン群が標準治療群に比べて低かった。PrEPコホートにおける相対リスクは、淋病が0.45(95%CI:0.32~0.65)、クラミジアが0.12(0.05~0.25)、梅毒が0.13(0.03~0.59)であり、PLWHコホートでは、それぞれ0.43(0.26~0.71)、0.26(0.12~0.57)、0.23(0.04~1.29)だった。

 ドキシサイクリンに起因するGrade3の有害事象は5件みられたが(下痢性イベント3件、頭痛/片頭痛2件)、ドキシサイクリンによる重篤な有害事象は発現しなかった。ドキシサイクリン群では、参加者の2%が許容できない有害事象または好みにより投与を中止した。また、淋菌の培養が可能であった参加者においては、テトラサイクリン耐性の淋菌が、ドキシサイクリン群では13例中5例、標準治療群では16例中2例で発生した。

 著者は、「これらの結果は、社会経済的、人種的に多様な集団において、HIV感染の状況にかかわらず、MSMでの細菌性STI予防におけるdoxy-PEPの有効性を示すものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)