HIVのPrEP法、性感染症の増加と関連/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/04/19

 

 HIV曝露前予防投与(preexposure prophylaxis:PrEP)法を受けている同性愛/両性愛の男性において、細菌性の性感染症(sexually transmitted infections:STI)が一部で非常に多く認められ、PrEP法がSTI発生増加と関連することが明らかにされた。オーストラリア・Burnet InstituteのMichael W. Traeger氏らが、PrEP法開始後のSTI発生率の変化を検討する目的で実施した多施設共同非盲検介入試験「The Pre-exposure Prophylaxis Expanded(PrEPX)試験」の結果で、著者は「PrEP法を受けている同性愛/両性愛の男性に対する頻繁なSTI検査の重要性が浮き彫りとなった」とまとめている。これまでに、同性愛/両性愛の男性において、PrEP法開始後にSTIsが増加することは新たなエビデンスとして示されていたが、PrEP法開始前のSTI発生のデータは限定的であった。JAMA誌2019年4月9日号掲載の報告。

同性愛/両性愛の男性で、PrEP法開始前後のSTI発生率を評価
 PrEPX試験は、Australian Collaboration for Coordinated Enhanced Sentinel Surveillance of Blood- Borne Viruses and Sexually Transmitted Infections(ACCESS)プロジェクトの一環で実施された。2016年7月26日〜2018年4月1日に、オーストラリア・ビクトリア州で登録されたHIV高リスク者4,275例のうち、ACCESSクリニック5施設(プライマリケア3施設、性の健康クリニック1施設、地域のHIV迅速検査サービス施設1施設)で登録され、追跡調査のため1回以上の診察を受け、2018年4月30日までモニタリングされた2,981例について解析した。参加者は、登録後PrEP法としてテノホビルおよびエムトリシタビン1日1回経口投与と、年4回のHIV・STI検査と臨床的モニタリングを受けた。

 主要評価項目は、クラミジア、淋病、梅毒の発生で、STI診断の行動リスク因子を示す発生率とハザード比を算出した。また、登録前の検査データがある参加者1,378例において、検査頻度を補正した発生率比(IRR)を求め、登録1年前から追跡期間中のSTI発生の変化を評価した。

追跡期間中に約半数でSTIが発生、PrEP開始前に比べSTI発生率が増加
 2,981例(年齢中央値34歳[四分位範囲:28~42])のうち、98.5%が同性愛/両性愛の男性で、29%が登録前にPrEP法を受けていた。89例(3%)が同意撤回のため除外となり、2,892例(97.0%)が最終追跡調査に登録された。
 平均追跡調査期間1.1年(3,185.0人年)において、1,427例(48%)に2,928件のSTI(クラミジア1,434件、淋病1,242件、梅毒252例)が発生した。STI発生頻度は91.9/100人年で、全STIのうち2,237件(76%)を736例(25%)が占めていた。

 完全なデータがある2,058例を対象とした多変量解析の結果、STIリスクの上昇は「年齢が若い」「パートナー多数」ならびに「集団セックス」と関連することが認められた。コンドームの使用との関連は認められなかった。

 登録前の検査データのある参加者1,378例において、STIの発生頻度は登録前69.5/100人年から追跡期間中に98.4/100人年へ増加した(IRR:1.41、95%信頼区間[CI]:1.29~1.56)。検査頻度を補正後、登録1年前から最終追跡までの発生率は、全STI(補正後IRR:1.12、95%CI:1.02~1.23)およびクラミジア(補正後IRR:1.17、95%CI:1.04~1.33)で有意に増加した。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 岡 慎一( おか しんいち ) 氏

国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター 名誉センター長

J-CLEAR推薦コメンテーター