lirentelimab、好酸球性胃炎・十二指腸炎に有効な可能性/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/11/04

 

 好酸球性胃炎または好酸球性十二指腸炎の患者の治療において、lirentelimab(AK002)はプラセボに比べ、消化管の好酸球数を減少させ、症状を軽減するが、infusion-related reaction(輸注反応)の頻度が高いことが、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のEvan S. Dellon氏らが行った「ENIGMA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年10月22日号で報告された。好酸球性の胃炎・十二指腸炎は、消化管粘膜の好酸球増多、慢性症状、QOL低下を特徴とし、適切な治療法は確立されていない。その病因には、マスト細胞の活性化が寄与している可能性があるとされる。AK002は、抗シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン8(Siglec-8)抗体であり、好酸球を減少させ、マスト細胞の活性化を阻害する。動物モデルでは、好酸球性胃炎・十二指腸炎の治療薬となる可能性が示されている。

米国のプラセボ対照無作為化第II相試験

 本研究は、症候性の好酸球性胃炎・十二指腸炎の治療におけるAK002の有用性の評価を目的とする多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、米国の22施設が参加し、このうち17施設で患者登録が行われた(Allakosの助成による)。

 対象は、年齢18~80歳、好酸球性胃炎または好酸球性十二指腸炎、あるいはこれら双方と診断され、症状が中等症~重症(毎日の症状スコア[0~10点、点数が高いほど症状の重症度が高い]の平均値が3点以上)の患者であった。

 被験者は、月1回で4回(1、29、57、85日目)、低用量AK002(0.3、1、1、1mg/kg体重)、高用量AK002(0.3、1、3、3mg/kg体重)、プラセボを静脈内注入する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、最終投与から2週の時点における消化管好酸球数のベースラインからの変化とした。このエンドポイントは、統計的検出力を最大化するために、2つのAK002群を統合した群とプラセボ群を比較することで評価した。副次エンドポイントは、治療への反応(総症状スコアの>30%の低下、消化管好酸球数の>75%の減少)と総症状スコアの変化であった。

事前に規定されたすべてのエンドポイントが良好

 65例が登録され、AK002群に43例(低用量群22例、高用量群21例)、プラセボ群には22例が割り付けられた。全体の年齢中央値は40歳(範囲18~74)、40例(62%)が女性であった。10例(15%)が胃炎、25例(38%)が十二指腸炎、30例(46%)は胃炎と十二指腸炎が併存していた。ベースラインの消化管好酸球数の平均値は84±52個/高倍率視野(HPF)、症状スコアの平均値は32±14点だった。

 intention-to-treat(ITT)解析による消化管好酸球数の平均変化率は、AK002群が-86%(低用量群-79%、高用量群-92%)と、プラセボ群の9%と比較して有意に良好であった(群間差の最小二乗平均値:-98ポイント、95%信頼区間[CI]:-121~-76、p<0.001)。per-protocol解析(AK002群39例、プラセボ群20例)でも、ほぼ同様の結果であった(AK002群-95% vs.プラセボ群10%、-105ポイント、-128~-83、p<0.001)。

 治療への反応(ITT解析)は、AK002群の63%、プラセボ群の5%で得られ、有意な差が認められた(群間差:58ポイント、95%CI:36~74、p<0.001)。また、総症状スコアの平均変化率は、AK002群が-48%、プラセボ群は-22%であり、AK002群で良好であった(群間差の最小二乗平均値:-26ポイント、95%CI:-44~-9、p=0.004)。

 AK002群は、軽度~中等度のinfusion-related reaction(潮紅、熱感、頭痛、悪心、めまい)が発現した患者の割合がプラセボ群よりも高かった(60% vs.23%)。これ以外の有害事象の発生頻度は両群でほぼ同等であった。重篤な有害事象は、AK002群が4例(9%)、プラセボ群は3例(14%)で認められた。

 著者は、「infusion-related reactionのほとんどは、初回または2回目の投与時に起きており、本試験の非盲検延長試験において初回投与の前日に経口プレドニゾン単回投与を受けた患者では発現していない」としている。現在、好酸球性胃炎または好酸球性十二指腸炎を対象とするAK002の第III相試験、および好酸球性食道炎を対象とするAK002の第II/III相試験が進行中だという。

(医学ライター 菅野 守)