早期DKD併発1型糖尿病、尿酸値低下でも腎機能改善せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/07/07

 

 1型糖尿病と早期~中等度の糖尿病性腎臓病(DKD)を有する患者において、アロプリノールの3年投与により血清尿酸値を36%低下させても、腎アウトカムに関して臨床的に意味のある利益のエビデンスは得られなかったとの研究結果が、米国・ハーバード大学医学大学院のAlessandro Doria氏らが実施した「PERL試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2020年6月25日号に掲載された。血清尿酸の高値は、DKDリスクを増加させることが示唆されている。1型糖尿病と早期~中等度のDKDを併発する患者では、血清尿酸値をアロプリノールで低下させると、糸球体濾過量(GFR)の低下が緩徐化される可能性があるという。

3ヵ国16施設が参加した無作為化試験

 本研究は、3ヵ国(米国、カナダ、デンマーク)の16施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、アロプリノールで血清尿酸値を低下させることで、早期DKDを併発する1型糖尿病患者の腎機能低下を遅延できるかを検証する目的で行われた(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所[NIDDK]などの助成による)。

 対象は、1型糖尿病で、推算GFRが40.0~99.9mL/分/1.73m2体表面積であり、DKDの定義(アルブミン尿[尿中アルブミン排泄率:20~3,333μg/分]または過去3~5年間にGFRが年間3mL/分/1.73m2以上低下の所見または既往歴を有する)を満たし、血清尿酸値が4.5mg/dL以上の患者であった。

 被験者は、9週間の導入期間ののち、アロプリノールまたはプラセボの経口投与を受ける群に無作為に割り付けられた。アロプリノールは、100mg/日を4週間投与された時点で、推算GFRが≧50mL/分/1.73m2の患者は400mg/日に調整され、25~49mL/分/1.73m2の患者は300mg/日、15~24mL/分/1.73m2の患者は200mg/日を投与された。

 主要アウトカムは、3年の介入期間と2ヵ月の休薬期間の終了後におけるベースライン値で補正したGFRとした。GFRはイオヘキソールで測定した。副次アウトカムには、イオヘキソールに基づくGFRの年間低下率や休薬期間後の尿中アルブミン排泄率などが含まれ、安全性の評価も行われた。

休薬期間後のGFRは同じ、重篤な有害事象にも差はない

 530例(平均年齢51.1±10.9、男性66.2%)が登録され、アロプリノール群に267例、プラセボ群には263例が割り付けられた。

 ベースラインの全体の平均糖尿病罹病期間は34.6±12.3年、イオヘキソールによる平均GFRは68.0±16.9mL/分/1.73m2、平均推算GFRは74.7±19.1mL/分/1.73m2、平均血清尿酸値は6.1±1.5mg/dL、平均糖化ヘモグロビン値は8.2±1.3%であった。90.0%がレニン-アンジオテンシン系阻害薬による治療を受けていた。

 介入期間中に、アロプリノール群の平均血清尿酸値は6.1mg/dLから3.9mg/dLへ低下し(ベースラインから36%の低下)、休薬期間終了後はベースラインとほぼ同じ値(5.9mg/dL)に上昇した。プラセボ群は6.1mg/dLから変化しなかった。

 休薬期間終了後のイオヘキソールによる平均GFRは、両群とも61.2mL/分/1.73m2で、群間差は0.001mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:-1.9~1.9、p=0.99)であり、両群間に有意な差は認められなかった。

 イオヘキソールによるGFRの平均年間低下率は、アロプリノール群が-3.0mL/分/1.73m2、プラセボ群は-2.5mL/分/1.73m2であり(群間差:-0.6mL/分/1.73m2、95%CI:-1.5~0.4)、有意差はなかった。一方、平均尿中アルブミン排泄率は、アロプリノール群がプラセボ群に比べ、休薬期間終了後には40%(95%CI:0~80)、介入期間終了後は30%(0~60)高かった。

 重篤な有害事象は354件(アロプリノール群171件、プラセボ群183件)発生した。重篤な有害事象が1件以上発生した患者の割合は両群でほぼ同等で(93/267例[34.8%]、82/263例[31.2%])、これらのイベントが原因で試験薬を中止した患者の割合も同様であった(16例[6.0%]、11例[4.2%])。重篤な有害事象はまれであったが、致死的重篤な有害事象が発生した患者の数はアロプリノール群で多かった(10例、4例)。

 著者は、「尿中アルブミン排泄率は、アロプリノール群がプラセボ群よりも不良であることが示唆されたが、アロプリノールの安全性を懸念する前に、他のDKD患者コホートで、この知見を独立的に検証する必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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