アスピリン+リバーロキサバンで冠動脈疾患の死亡減少/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/11/29

 

 安定冠動脈疾患患者の治療において、アスピリンに低用量リバーロキサバンを併用すると、主要血管イベントが減少し、大出血の頻度は増加するもののベネフィットは消失せず、死亡が有意に低減することが、カナダ・マックマスター大学のStuart J Connolly氏らが行ったCOMPASS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年11月10日号に掲載された。冠動脈疾患は世界的に合併症や死亡の主要な原因で、急性の血栓イベントの結果として発症する。Xa因子阻害薬やアスピリンは血栓イベントを低減させるが、安定冠動脈疾患患者におけるこれらの併用や、個々の薬剤の比較検討は行われていないという。

約2万5,000例が参加したプラセボ対照無作為化試験
 COMPASS試験は、安定冠動脈疾患および末梢動脈疾患の外来患者において、アスピリンおよびリバーロキサバンのそれぞれ単剤療法と、これらの併用療法の有用性を評価する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験(Bayer AG社の助成による)。本報告では、冠動脈疾患患者の結果が提示された。

 対象は、過去20年の間に心筋梗塞の既往歴があり、冠動脈の多枝病変を有し、安定または不安定狭心症の既往歴があり、多枝病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス移植術を受けた冠動脈疾患患者であった。

 被験者は、30日間の導入期の後、低用量リバーロキサバン(2.5mg、1日2回、経口)+アスピリン(100mg、1日1回)、リバーロキサバン(5mg、1日2回、経口)、アスピリン(100mg、1日1回、経口)を投与する群に、1対1対1の割合でダブルダミー下に無作為に割り付けられた。患者、担当医、中央判定の医療スタッフには治療割り付け情報がマスクされた。

 有効性の主要アウトカムは、心筋梗塞・脳卒中・心血管死の発現とした。

 2013年3月12日~2016年5月10日の期間に、33ヵ国558施設で2万7,395例が登録され、2万4,824例(91%)がランダム化の対象となった。併用群が8,313例、リバーロキサバン単独群が8,250例、アスピリン単独群は8,261例であった。

併用により主要アウトカム、死亡率が低減
 平均フォローアップ期間は1.95年で、全体の平均年齢は68.3歳、男性が80%(1万9,792例)を占めた。

 主要アウトカムの発生率は、併用群が4%(347/8,313例)と、アスピリン単独群の6%(460/8,261例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.86、p<0.0001)。これに対し、リバーロキサバン単独群の主要アウトカムの発生率は5%(411/8,250例)であり、アスピリン単独群の6%(460/8,261例)との間に有意差を認めなかった(HR:0.89、95%CI:0.78~1.02、p=0.094)。

 大出血の発生率は併用群が3%(263/8,313例)と、アスピリン単独群の2%(158/8,261例)に比べ有意に高く(HR:1.66、95%CI:1.37~2.03、p<0.0001)、出血の発生率はリバーロキサバン単独群が3%(236/8,250例)であり、アスピリン単独群の2%(158/8,261例)に比し、有意に高かった(HR:1.51:95%CI:1.23~1.84、p<0.0001)。

 最も頻度の高い大出血の発生部位は消化器で、併用群が2%(130例)、リバーロキサバン単独群が1%(84例)、アスピリン群は1%(61例)であった。死亡率は、併用群が3%(262/8,313例)であり、アスピリン単独群の4%(339/8,261例)と比較して有意に低かった(HR:0.77、95%CI:0.65~0.90、p=0.0012)。

 著者は、「低用量リバーロキサバン+アスピリンの全体的なベネフィットは有意であり、アスピリン単独に比べ死亡が23%減少した。高リスク集団では、合併症や死亡が実質的に減少する可能性がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)