脳梗塞/TIA再発予防にアスピリン早期投与が有効/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/05/27

 

 一過性脳虚血発作(TIA)または軽度虚血性脳卒中(脳梗塞)後の早期再発リスクは、薬物療法によって低下し、とくにアスピリンが鍵となるとの結果を、英・オックスフォード大学のPeter M Rothwell氏らが、アスピリンの無作為化比較試験を統合し経時的解析を行い報告した。アスピリンは、脳梗塞の長期再発リスクを13%減少することが示され、TIAまたは脳梗塞の2次予防として推奨されている。しかしながら、重大な脳梗塞の再発リスクは急性期に高い。これまで、観察研究では早期から薬物療法を開始するほうが有用性は大きいことが示されていたが、アスピリンの効果は過小評価されていた。結果を踏まえて著者は、「従来考えられていたよりも、アスピリンを早期から開始することは有効であり、TIAが疑われる症状が現れた場合は自らアスピリンを服用するよう公衆衛生教育をしたほうがよい」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年5月18日号掲載の報告。

TIAまたは脳梗塞の2次予防に関するアスピリンの無作為化比較試験を解析
 研究グループは、TIAまたは脳梗塞の2次予防に関するアスピリンのすべての無作為化試験から、個々の患者データを統合し、脳梗塞再発リスクと重症度に対するアスピリンの効果を、経時的(無作為化後0~6週未満、6~12週未満、12週以上)に解析した。重症度は修正Rankinスケール(mRS)で評価し、シフト解析を用いた。また、作用機序を検討する目的で、アスピリンとジピリダモールの交互作用の時間特性を評価した。

 さらに研究グループは、脳梗塞の再発リスクに対するアスピリンの超早期の効果、ならびにその効果がベースラインでの重症度によってどのように異なるかを確かめるため、急性脳梗塞発症後48時間未満の患者を対象としたアスピリンの無作為化比較試験について、ベースラインの神経障害の重症度で層別化し、データを解析した。

発症後6週以内の脳梗塞再発リスクが60%低下、後遺障害等のリスクも70%低下
 2次予防に関するアスピリンの無作為化比較試験は12件あり、計1万5,778例のデータを統合解析した。その結果、アスピリン投与により、発症後6週以内の脳梗塞再発リスクは60%低下することが認められた(アスピリン群8,452例中84例 vs 対照群7,326例中175例、ハザード比[HR]:0.42、95%CI:0.32~0.55、p<0.0001)。後遺障害を伴うまたは致死的脳梗塞の再発リスクも,同様に70%低下した(それぞれ8,452例中36例 vs 7,326例中110例、HR:0.29、95%CI:0.20~0.42、p<0.0001)。これらの効果は、とくにTIAまたは軽度脳梗塞患者で最も高かった(0~2週;アスピリン群6,691例中2例 vs 対照群5,726例中23例、HR:0.07、95%CI:0.02~0.31、p=0.004/0~6週;それぞれ14例 vs 60例、HR:0.19、95%CI:0.11~0.34、p<0.0001)。

 早期再発に対するアスピリンの効果は、主に重症度の軽減によるもので、投与量、患者背景、TIAまたは脳卒中の病因とは独立していた。

 また、アスピリン投与による脳梗塞再発リスクの低下は、12週を過ぎると確認されなかった。一方、ジピリダモール+アスピリン群とアスピリン単独群を比較すると、ジピリダモール併用では12週以降に再発リスクが低下し、とくに後遺障害を伴うまたは致死的脳梗塞に関して顕著であった。

 急性脳梗塞患者を対象とした無作為化比較試験は3件あり、計4万531例のデータを解析した。結果、14日目での脳梗塞再発リスクの低下は、ベースラインの神経障害が軽度の患者で最も大きく、とくに治療開始後2日目までが顕著であることが示された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

専門家はこう見る

コメンテーター : 内山 真一郎( うちやま しんいちろう ) 氏

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授 山王メディカルセンター脳血管センター長

J-CLEAR評議員