乳がん術後のリンパ節領域照射追加、全生存率を改善せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/08/05

 

 リンパ節転移陽性または高リスクのリンパ節転移陰性の乳がん術後に行う放射線治療において、全乳房照射にリンパ節領域照射を追加しても、全生存の改善は認められなかったことが明らかにされた。乳がん再発率は低下した。カナダ・ジューラビンスキーがんセンターのTimothy J Whelan氏らが、無作為化試験の結果、報告した。乳房温存手術を受けた乳がん女性患者の多くが、全乳房照射を受けているが、研究グループは、追加してリンパ節領域照射を行うことで転帰が改善するのか調べた。NEJM誌2015年7月23日号掲載の報告。

1,832例を対象に無作為化試験
 試験は、リンパ節転移陽性または高リスクのリンパ節転移陰性の女性を対象に行われた。被験者は、乳房温存手術を受け、全身的補助療法を受けていた。

 全乳房照射+リンパ節領域照射(胸骨傍リンパ節、鎖骨上リンパ節、腋窩リンパ節を含む)を行う(リンパ節照射)群と、全乳房照射のみを行う(対照)群に無作為に割り付けて追跡した。

 主要アウトカムは全生存率とし、副次アウトカムは、無病生存率、孤立性局所無病生存率、遠隔無病生存率などであった。

 2000年3月~2007年2月の間に、合計1,832例の女性が、リンパ節照射群または対照群(各群916例)に割り付けられた。

リンパ節照射群の全生存率HRは0.91で有意差なし
 追跡期間中央値は9.5年であった。10年フォローアップ時点で、両群の全生存率に統計的な有意差はみられなかった。リンパ節照射群82.8%、対照群81.8%でハザード比(HR)は0.91(95%信頼区間[CI]:0.72~1.13、p=0.38)。

 無病生存率は、それぞれ82.0%、77.0%であった(HR:0.76、95%CI、0.61~0.94、p=0.01)。

 有害事象については、リンパ節照射群の患者のほうが、グレード2以上の急性肺炎(1.2% vs.0.2%、p=0.01)、リンパ浮腫(8.4% vs.4.5%、p=0.001)が有意に多くみられた。