血管内治療の追加で脳梗塞の予後改善/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/02/25

 

 急性期虚血性脳卒中の患者に対し、標準治療に加えステント型血栓回収デバイスによる迅速血管内治療を行うと、身体機能や死亡率が改善され、QOLも良好であることが、カナダ・カルガリー大学のMayank Goyal氏らが行ったESCAPE試験で示された。前方循環の動脈近位部閉塞に起因する脳卒中では、t-PA(アルテプラーゼ)治療を行っても患者の60~80%が発症後90日以内に死亡または機能的自立が回復されない。これまでの試験からは、閉塞の部位が動脈近位部であることを証明し、迅速かつ効果的な画像法で梗塞巣が大きい患者を除外し、効率のよい作業手順で迅速な再疎通と高い再灌流率を達成することが重要であり、血栓の回収には前世代よりもステント型デバイスのベネフィットが優れることが知られている。NEJM誌オンライン版2015年2月11日号掲載の報告。

迅速血管内治療の追加をPROBEデザインの試験で評価
 ESCAPE試験は、急性期虚血性脳卒中に対する標準治療への迅速血管内治療の追加の有用性を評価する多施設共同前向き無作為化非盲検アウトカムブラインド試験(PROBEデザイン)(Covidien社などの助成による)。対象は、発症前は機能的に自立し(Barthelインデックス[0~100点、点が高いほど日常生活動作が良好]≧90)、梗塞巣が小さく、前方循環の動脈近位部閉塞に起因し、側副血行が中等度~良好の虚血性脳卒中で、発症後12時間以内の患者とした。

 被験者は、標準治療を施行する群(対照群)または標準治療に加え血管内治療を行う群(介入群)に無作為に割り付けられた。血管内治療はステント型血栓回収デバイスが推奨され、血栓回収時にはバルーン付きガイディングカテーテルによる吸引が勧められた。両群とも発症後4.5時間以内の場合はアルテプラーゼの静脈内投与が行われた。

 主要評価項目は、90日時の修正Rankinスケール(mRS)のスコア(0~6点、点が高いほど機能障害が高度)とし、比例オッズモデルを用いて介入群のmRSスコアが対照群よりも低くなる尤度を測定し、共通オッズ比(mRSスコアの1点の改善のオッズを示す)を算出した(シフト解析)。

 オランダのMR CLEAN試験により、ステント型血栓回収デバイスのベネフィットが報告された時点で計画にはない中間解析を行ったところ、事前に規定された有効性の境界値を超えており、介入群における有効性の有意な改善効果が確認されたため、データ・安全性監視委員会の勧告に基づき本試験は早期中止となった。

mRS共通オッズ比2.6、死亡率は19.0%が10.4%に
 2013年2月~2014年10月までに、カナダ、米国、韓国、アイルランド、英国の22施設に315例が登録され、介入群に165例、対照群には150例が割り付けられた。年齢中央値は介入群が71歳、対照群は70歳、女性がそれぞれ52.1%、52.7%で、アルテプラーゼの投与は120例(72.7%)、118例(78.7%)で行われた。介入群のCT検査開始から初回再灌流達成までの期間中央値は84分(四分位範囲:65~115分)であった。

 90日mRSスコアの共通オッズ比は2.6(95%信頼区間[CI]:1.7~3.8)であり、介入群で有意に良好であった(p<0.001)。90日mRSスコアの中央値は介入群が2であり、対照群の4に比べ有意に優れていた(p<0.001)。90日mRSが0~2の患者の割合も、介入群が53.0%と対照群の29.3%に比し有意に高率であった(率比:1.8、95%CI:1.4~2.4、p<0.001)。

 90日死亡率は、介入群が10.4%であり、対照群の19.0%よりも有意に改善された(率比:0.5、95%CI:0.3~1.0、p=0.04)。症候性の頭蓋内出血の発生率は、介入群が3.6%、対照群は2.7%であり、両群間に差はなかった(p=0.75)。介入群のデバイス関連/手技関連合併症は18例に認められ、そのうち重篤例は4例だった。

 90日時のBarthelインデックスが95~100点の患者の割合は、介入群が57.7%、対照群は33.6%(率比:1.7、95%CI:1.3~2.2)、NIH脳卒中スケール(NIHSS、0~42点、点が高いほど脳卒中の重症度が高度)が0~2点の患者はそれぞれ51.6%、23.1%(率比:2.2、95%CI:1.6~3.2)、EQ-5D視覚アナログスケールのスコア(0~100点、点が高いほどQOLが良好)の中央値は80点、65点(β係数:9.4、95%CI:3.5~15.2)であり、いずれも介入群で良好であった。

 著者は、「迅速な血管内治療は急性期虚血性脳卒中患者の身体機能を改善し、死亡率の低減をもたらした」とまとめ、「本試験の知見は、MR CLEAN試験で示された血管内治療のベネフィットを確証するものである」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)