シチシンの禁煙効果、ニコチン代替より良好/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/01/05

 

 シチシン投与に簡便な行動支援を併用すると、ニコチン代替療法(NRT)に比べ禁煙効果が改善することが、ニュージーランド・オークランド大学のNatalie Walker氏らの検討で示された。シチシンは、マメ科植物由来のアルカロイドで、ニコチン性アセチルコリン受容体の部分作動薬であり、東欧では1960年代から広く禁煙対策に使用されている。4つの系統的レビューでは、禁煙効果がプラセボに比べ短期的および長期的に優れ、有害事象の頻度も同等で、主に消化器症状がみられることが報告されている。NEJM誌2014年12月18日号掲載の報告。

禁煙継続効果を無作為化試験で評価
 研究グループは、禁煙支援におけるシチシンのNRTに対する非劣性を検証する非盲検無作為化試験を実施した(Health Research Council of New Zealandの助成による)。対象は、「クイットライン(Quitline)」と呼ばれる同国の禁煙相談窓口に電話をかけてきた禁煙の意思のある年齢18歳以上の喫煙者であった。

 被験者は、シチシンを25日間投与する群またはNRTを8週間行う群に無作為化に割り付けられた。シチシン群の参加者には25日分の錠剤が無料で郵送され、NRT群は薬局でニコチンパッチとガムまたはトローチ剤を廉価で入手できる引換券がクイットラインから提供された。すべての参加者に、クイットラインから電話による簡便な行動支援が行われた(8週間に平均3回、1回10~15分)。

 主要評価項目は、自己申告による禁煙開始から1ヵ月時の禁煙の継続とし、7日間の喫煙本数が5本以下であれば禁煙期間に含めてよいこととした。

1ヵ月禁煙継続率:40 vs. 31%、有害事象発現率:31 vs. 20%
 1,310例が登録され、シチシン群に655例(平均年齢37.8歳、女性57%、平均1日喫煙本数19.3本)、NRT群にも655例(38.4歳、57%、19.0本)が割り付けられた。

 1ヵ月時の禁煙継続の報告は、シチシン群が40%(264/655例)であり、NRT群の31%(203/655例)に比べ有意に良好であった(相対リスク[RR]:1.3、95%信頼区間:1.1~1.5、リスク差:9.3%、p<0.001)。また、1週(1.3、1.2~1.4、13.9%、p<0.001)、2ヵ月(1.4、1.2~1.7、9.0%、p<0.001)、6ヵ月(1.4、1.1~1.8、6.6%、p=0.002)の時点での禁煙継続効果も、シチシン群が有意に優れていた。

 事前に規定されたサブグループ解析では、女性の1ヵ月時の禁煙継続については、シチシン群のNRT群に対する優越性が示され、男性では非劣性が確認された。他のサブグループでは有意な差は認めなかった。

 6ヵ月間の自己申告による有害事象は、シチシン群が204例(31%)に288件、NRT群は134例(20%)に174件発生し、有意な差が認められた(率比:1.7、95%CI:1.4~2.0、p<0.001)。重篤な有害事象はそれぞれ45例(7%)に56件、39例(6%)に45件発生し、死亡が1例ずつ(飲酒による窒息、心臓発作)、入院が18例ずつみられ、NRT群の1例には脳腫瘍が認められた。主な有害事象は、悪心・嘔吐(30 vs. 2件)と睡眠障害(28 vs. 2件)であった。

 著者は、「シチシンと簡便な行動支援の併用は、禁煙の意思のある喫煙者の禁煙補助としてニコチン代替療法よりも有効であるが、有害事象の頻度が高い」とまとめ、「シチシンとニコチン受容体部分作動薬バレニクリンの価格が大きく異なる場合、費用対効果分析を含め、これらを直接的に比較する非劣性試験の実施が正当化される」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)