β遮断薬、駆出率保持の心不全でも死亡抑制するか/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2014/12/12

 

 駆出率が保持された心不全(HFPEF)患者へのβ遮断薬治療について、全死因死亡の発生は有意に抑制したが、心不全による入院の発生と合わせた複合アウトカムは抑制しなかったことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLars H. Lund氏らが、Swedish Heart Failure Registryから8,244例について行った傾向スコア適合コホート試験の結果、報告した。HFPEFは、駆出率が低下した心不全(HFREF)と同程度によくみられ、死亡率も同じぐらい高いとされている。これまでにβ遮断治療について、後者のHFREF患者に対する抑制効果は示されているが、HFPEF患者についての検討は十分に行われていなかった。JAMA誌2014年11月19日号掲載の報告より。

8,244例について傾向スコア適合コホート試験で治療群vs. 未治療群を検討
 本検討は、β遮断薬はHFPEF患者の全死因死亡を抑制するという仮定の検証を目的に行われた、Swedish Heart Failure Registryを用いた傾向スコア適合コホート試験であった。β遮断薬使用の傾向スコアを用いて、52のベースライン臨床的変数および社会経済的変数を抽出して検討が行われた。

 試験には、2005年7月1日~2012年12月30日に、同国内67の病院(入院・外来)と95の外来専門診療所から登録された連続患者4万1,976例が参加した。フォローアップ完了は2012年12月31日時点。同患者のうち、HFPEF患者は1万9,083例であった(平均年齢76[SD 12]歳、女性46%)。このうち、年齢とβ遮断薬使用の傾向スコアに基づき2対1の割合で適合した8,244例について分析した。β遮断薬治療群は5,496例、未治療群は2,748例であった。

 また研究グループは、HFREF患者2万2,893例についても整合性を検証するため分析を行った。傾向スコア適合被験者は6,081例で治療群は4,054例、未治療群は2,027例であった。

 治療群は、β遮断薬を退院時から処方、または通院中に処方を受けていた。

 事前に規定した主要アウトカムは、全死因死亡であり、副次アウトカムは、全死因死亡または心不全による入院の複合であった。

全死因死亡は抑制、心不全による入院との複合アウトカムは抑制せず
 平均追跡期間は、HFPEF患者全体コホート(1万9,083例)は755日、HFPEF適合コホート(8,244例)については709日で、全患者が追跡を完了した。

 HFPEF適合コホートにおいて、1年生存率は、治療群80%vs. 未治療群79%であり、5年生存率はそれぞれ45%vs. 42%であった。死亡は、それぞれ2,279例(41%)vs. 1,244例(45%)で、1,000患者・年当たり177例vs. 191例で、治療群の有意な抑制が認められた(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.86~0.996、p=0.04)。

 しかし、全死因死亡または心不全による入院の複合アウトカムについては、抑制はみられなかった。初発イベント発生件数はそれぞれ3,368件(61%)vs. 1,753件(64%)、1,000患者・年当たり371例vs. 378例、HRは0.98(95%CI:0.92~1.04、p=0.46)であった。

 一方、HFREF患者の分析では、β遮断薬治療による死亡(HR:0.89、95%CI:0.82~0.97、p=0.005)、および複合アウトカム(同:0.89、0.84~0.95、p=0.001)のいずれも有意な抑制が認められた。

 今回の結果について著者は、「HFPEF患者へのβ遮断薬治療については、さらなる検出力の高い大規模な試験で検証すべきであろう」とまとめている。

(武藤まき:医療ライター)