スタチン時代にHDL上昇薬は必要か/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/08/07

 

 スタチン治療中の患者に対し、HDL値の上昇効果があるナイアシン、フィブラート系薬、コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬の併用はいずれも、全死因死亡、冠動脈疾患死、また心筋梗塞や脳卒中を減少しないことが示された。英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのDaniel Keene氏らが患者11万7,411例のデータを含む無作為化試験をメタ解析し報告した。「観察研究では、HDL上昇と心血管アウトカム改善の相関性が示されているが、スタチンが広く使用されるようになった現在では、HDL値を上昇するこれら3つの薬剤の有益性を裏付ける試験はなかった」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年7月18日号掲載の報告より。

スタチン治療有無を問わず、HDL値上昇薬の心血管アウトカムへの効果をメタ解析
 研究グループは、HDL値上昇のために用いられるナイアシン、フィブラート系薬、CETP阻害薬の3つの薬剤の心血管イベントへの有益性をメタ解析にて評価した。

 2013年5月時点で、Medlineなどのデータベースを検索し、試験発表の有無、また対照群のスタチン治療の有無を問わず(すなわちスタチン発売前の試験も含む)、これら3つの薬剤について比較検討した無作為化試験を特定した。

 主要アウトカムは、intention to treat解析ベースでの全死因死亡とし、副次アウトカムは、冠動脈疾患死、非致死的心筋梗塞・脳卒中、および重大有害事象報告とした。

スタチンがなかった時代の試験結果と有意な差
 検索により、39試験、11万7,411例の無作為化試験データを特定した。全介入でHDL値の上昇がみられた。

 解析の結果、ナイアシン(オッズ比[OR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.92~1.15、p=0.59)、フィブラート系薬(同:0.98、0.89~1.08、p=0.66)、CETP阻害薬(同:1.16、0.93~1.44、p=0.19)ともに、全死因死亡への効果は認められなかった。

 また、冠動脈疾患死についてもナイアシン(同:0.93、0.76~1.12、p=0.44)、フィブラート系薬(同:0.92、0.81~1.04、p=0.19)、CETP阻害薬(同:1.00、0.80~1.24、p=0.99)ともに効果は認められず、脳卒中アウトカムについても同様であった[ナイアシン(同:0.96、0.75~1.22、p=0.72)、フィブラート系薬(同:1.01、0.90~1.13、p=0.84)、CETP阻害薬(同:1.14、0.90~1.45、p=0.29)]。

 非致死的心筋梗塞について、スタチン治療を受けていなかった患者の試験において、ナイアシンと有意な減少の関連がみられたが(同:0.69、0.56~0.85、p=0.0004)、スタチン治療を受けていた患者の試験では効果は有意ではなかった(同:0.96、0.85~1.09、p=0.52)。また、これらサブグループ間には有意差がみられた(p=0.007)。

 非致死的心筋梗塞に関する同様の傾向は、フィブラート系薬でもみられた。スタチン非服用群のORは0.78(95%CI:0.71~0.86、p<0.001)、全員または一部服用群のORは0.83(同:0.69~1.01、p=0.07)であった。サブグループ間の差は有意ではなかった(p=0.58)。