外傷性脳損傷へのEPO投与/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2014/07/16

 

 閉鎖性外傷性脳損傷患者に対して、エリスロポエチン(EPO)投与およびヘモグロビン値10g/dL超維持の積極的な輸血管理は、6ヵ月時点の神経学的アウトカムの改善に結びつかなかったことが示された。米国・ベイラー医科大学のClaudia S. Robertson氏らが無作為化試験の結果、報告した。試験では輸血閾値10g/dLと高頻度の有害イベント発生との関連も認められ、著者は、「いずれのアプローチも支持できない」と結論している。これまで、外傷性脳損傷後のEPO投与または積極的な輸血管理の効果に関する情報は、いずれも限定的なものであった。JAMA誌2014年7月2日号掲載の報告より。

EPO投与有無と輸血管理の2つの閾値について検討
 研究グループは、EPO投与と2つの輸血目標ヘモグロビン値(7g/dLと10g/dL)の、神経学的回復における効果を比較する検討を行った。

 被験者は閉鎖性外傷性脳損傷を受け、指示に従うことができなかった患者200例で、2006年5月~2012年8月に、米国のレベルI外傷センター2施設の脳神経外科集中治療室で受傷後6時間以内に登録された。

 試験は2×2要因配置デザインを用いて被験者を、輸血閾値7g/dLおよびEPO投与群、輸血閾値7g/dLおよびプラセボ投与群、輸血閾値10g/dLおよびEPO投与群、輸血閾値10g/dLおよびプラセボ投与群の4群に無作為化。EPO投与群(102例)のアウトカム改善がプラセボ群(98例)よりも20%上回ることができない、また輸血閾値10g/dL超群(101例)が7g/dL群(99例)と比べて合併症を増大することなく良好な転帰を増大するかどうかを検証した。

 なおEPOまたはプラセボの投与は、試験初期登録の74例については、500 IU/kgを当初3日間、その後週1回を2週間以上行うスケジュールで行われた(第1投与スケジュール)。しかし2009年に安全性への懸念から投与スケジュールが変更され、その後に登録された126例については24時間、48時間時点の投与は行われなかった(第2投与スケジュール)。

 主要評価項目は、受傷後6ヵ月時点のグラスゴー・アウトカム・スケールスコアで、良好(良好な回復、中等度の障害)または不良(重度の障害、植物状態または死亡)で判定した評価とした。

受傷後6ヵ月時点のアウトカムの評価は、いずれも無益であることを示す結果
 EPOと輸血閾値に相互作用は認められなかった。

 アウトカム良好となった患者の割合は、プラセボ群(34/89例・38.2%、95%信頼区間[CI]:28.1~49.1%)と比較して、EPO投与群は、第1投与スケジュール群(17/35例・48.6%、95%CI:31.4~66.0%、p=0.13)、第2投与スケジュール群(17/57例、29.8%、同:18.4~43.4%、p<0.001)ともに、投与が無益であることを示す結果であった。

 輸血閾値の違いでみると、7g/dL群は42.5%(37/87例)であり、10g/dL群は33.0%(31/94例)という結果であった(差の95%CI:-0.06~0.25、p=0.28)。

 また、輸血閾値10g/dL群では7g/dL群と比べて、血栓塞栓症イベントの発生が高率に認められた(22/101例[21.8%] vs. 7g/dL群8/99例[8.1%]、オッズ比:0.32、95%CI:0.12~0.79、p=0.009)。