コントロール不良の糖尿病にインスリンポンプ療法が有効/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2014/07/14

 

 インスリンポンプ療法は、インスリン頻回注射療法で血糖コントロールが不良な2型糖尿病患者の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値を改善することが、フランス・カーン大学のYves Reznik氏らが行ったOpT2mise試験で示された。血糖コントロールが不良な患者に強化インスリン療法として基礎・追加インスリンによる頻回注射療法を行っても、約30%はHbA1c値が正常化せず、低血糖や体重増加のリスクが増大することから、新たな治療法が求められている。これまでに2つの無作為化クロスオーバー試験で、ポンプ療法が頻回注射療法よりも良好な血糖コントロールをもたらすことが示唆されているが、2つの並行群間比較試験では差は認められていない。Lancet誌オンライン版7月3日号掲載の報告。

ポンプ療法への切り替えの有用性を無作為化試験で評価
 OpT2mise試験は、インスリン頻回注射療法を行っても血糖コントロールが不良な2型糖尿病患者において、インスリンポンプ療法に切り替える群と頻回注射療法を継続する群を比較する二重盲検無作為化並行群間比較試験。

 対象は、年齢30~75歳、導入期間終了後にHbA1c値が8.0~12.0%(64~108mmol/mol)の患者とし、2つの群に1対1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は、平均HbA1c値のベースライン時からの変化の差とした。

 試験期間は2010年12月~2014年2月であり、北米、欧州、イスラエル、南アフリカの36施設が参加した。2013年5月までに590例が登録され、331例が解析の対象となった。


少ない総インスリン量で、より良好な血糖コントロールを達成
 ポンプ療法群に168例(平均年齢55.5歳、男性56%、罹病期間14.9年、BMI 33.5)が、頻回注射療法継続群には163例(56.4歳、53%、15.3年、33.2)が割り付けられた。ベースラインの平均HbA1c値は両群ともに9.0%(75mmol/mol)だった。

 6ヵ月後に、平均HbA1c値がポンプ療法群で1.1%、頻回注射療法群で0.4%低下した。両群間の差は-0.7%(95%信頼区間[CI]:-0.9~-0.4)であり、ポンプ療法群が有意に良好であった(p<0.0001)。

 試験終了時の平均1日総インスリン量はポンプ療法群が97単位と、頻回注射療法群の122単位に比べ有意に少なかった(p<0.0001)。平均体重はそれぞれ1.5kg、1.1kg増加したが、有意差は認めなかった(p=0.322)。

 入院を要する重篤な有害事象(高血糖、ケトーシス)が3例にみられ、2例がポンプ療法群、1例は頻回注射療法群であった。ケトアシドーシスは両群ともに認めなかった。頻回注射療法群の1例に重篤な低血糖がみられたが、入院治療で回復した。

 著者は、「インスリン頻回注射療法で血糖コントロールが不良な2型糖尿病患者に対して、インスリンポンプ療法は安全に施行可能であり、有用な治療選択肢となる可能性がある」とまとめ、「総インスリン量が少ないポンプ療法で血糖コントロールが良好であった理由として、薬物動態/薬力学(PK/PD)が優れることが推察される。また、ポンプ療法は患者にとってより簡便で、用量の確認などの手間が少なく、アドヒアランスの改善も期待できる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 七里 眞義( しちり まさよし ) 氏

北里大学医学部 内分泌代謝内科学 主任教授

J-CLEAR推薦コメンテーター