PETが植物状態における意識回復の予測に有用/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2014/04/25

 

 脳18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)PET検査は、無反応覚醒症候群(unresponsive wakefulness syndrome、植物状態)患者のベッドサイドの臨床検査として補完的に使用可能であり、意識回復の長期的な予測に有用であることが、ベルギー・リエージュ大学病院のJohan Stender氏らの検討で示された。無反応覚醒症候群や最小意識状態(minimally conscious state)は、ベッドサイド診療で誤診されることが多いという。PETや機能的MRI(fMRI)などの神経画像検査は、理論上は無反応覚醒症候群と最小意識状態の鑑別が可能であり、予後予測に有用である可能性があるが、診断能の臨床的な妥当性は確立されていない。Lancet誌オンライン版2014年4月16日号掲載の報告。

意識検出と回復予測における有用性を妥当性試験で検証
 研究グループは、安静時の18F-FDG PETおよび精神活動時のfMRIによる神経画像検査はベッドサイドにおける意識の検出に補完的に使用でき、回復の予測が可能であるとの仮説を検証するために臨床的な妥当性試験を実施した。

 対象は、2008年1月~2012年6月までに、リエージュ大学病院で外傷性または非外傷性の原因による無反応覚醒症候群、閉じ込め症候群(locked-in syndrome)あるいは最小意識状態と診断された患者であった。

 改訂版意識状態評価スケール(CRS-R)による標準化された臨床評価を繰り返し行い、脳18F-FDG PETおよび精神活動時fMRIによる神経画像検査を実施した。CRS-Rによる診断を対照として2つの画像検査法の診断精度を算出し、12ヵ月後に拡張版グラスゴー・アウトカム・スケールを用いて転帰の評価を行った。

感度:93 vs. 45%、CRS-Rとの一致度:85 vs. 63%、予後予測率:74 vs. 56%
 本試験には126例が登録された。無反応覚醒症候群が41例、閉じ込め症候群が4例、最小意識状態は81例であった。このうち外傷性が48例、非外傷性が78例であり、慢性期が110例、亜急性期は16例であった。

 18F-FDG PET検査は93%という高い感度で最小意識状態を同定し、CRS-Rの行動スコアとの一致度も85%と高い値を示した。一方、active fMRI検査の最小意識状態の診断感度は45%、行動スコアとの一致度は63%であり、18F-FDG PET検査よりも低かった。

 18F-FDG PETは102例中75例(74%)の転帰を正確に予測したが、fMRIは65例中36例(56%)であった。42例の行動的に無反応な患者(CRS-Rで無反応と診断)のうち13例(32%)が、少なくとも一方の検査法で脳の活動性が「(最小)意識あり」(意識に関連する活動性はあるが、完全な意識状態に比べれば低下している)と判定され、このうち9例(69%)が実際に意識を回復した。

 著者は、「脳18F-FDG PET検査は無反応覚醒症候群患者のベッドサイドの臨床検査に補完的に使用でき、長期的な回復予測に有用である。active fMRI検査も鑑別診断に有用だが精度が低いと考えられる」とまとめ、「CRS-Rに18F-FDG PETを補完的に組み合わせる評価法は、反応はないが意識のある患者の簡便で信頼性の高い診断プログラムとなる」としている。

(菅野守:医療ライター)