気道感染症への抗菌薬治療 待機的処方 vs 即時処方/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/03/17

 

 気道感染症に対する抗菌薬治療では、即時的処方に比べ待機的処方で抗菌薬服用率が顕著に低いが、症状の重症度や持続期間に差はないことが、英国・サウサンプトン大学のPaul Little氏らの検討で示された。同国のプライマリ・ケアでは、気道感染症の治療の際、抗菌薬の不必要な使用を抑制するために非処方または待機的処方という戦略が一般に行われている。一方、文献の系統的レビューでは、待機的処方は即時的処方に比べ症状の管理が不良であり、非処方よりも抗菌薬の服用率が増加する可能性が示唆されている。待機的処方には、服用に関する指示書を付して処方薬を渡したり、再受診時に渡すなどいくつかの方法があるが、これらの戦略を直接に比較した試験は、これまでなかったという。BMJ誌オンライン版2014年3月5日号掲載の報告。

個々の待機的処方戦略の有効性を無作為化試験で評価
 研究グループは、急性気道感染症に対する待機的抗菌薬処方の個々の戦略の有効性を比較する無作為化対照比較試験を実施した。2010年3月3日~2012年3月28日までに、イギリスの25のプライマリ・ケア施設(医師53人)に3歳以上の急性気道感染症患者889例が登録された。

 即時的抗菌薬処方が不要と判定された患者が、次の4つの待機的処方群に無作為に割り付けられた。1)処方薬を再受診時に渡す群、2)処方薬を後日に受け取る先日付処方群、3)処方薬は出さないが患者が自分で入手してもよいとする群、4)すぐには服用しないなどの指示書と共に処方薬を渡す群(患者主導群)。2011年1月に、さらに抗菌薬非処方群を加え、5群の比較を行った。

 主要評価項目は2~4日目の症状の重症度(0~6点、点数が高いほど重症)とし、抗菌薬の服用状況、患者の抗菌薬の効果への信頼、即時的抗菌薬処方との比較なども行った。

個々の待機的処方戦略には大きな差はない
 333例(37%)が即時的抗菌薬処方の適応とされ、残りの556例(63%)が無作為化の対象となった(非処方群:123例、再受診群:108例、先日付群:114例、入手群:105例、患者主導群:106例)。即時的処方群でベースラインの症状の重症度がわずかに高く、下気道感染症が多く上気道感染症が少ない傾向がみられたが、非処方群と個々の待機的抗菌薬療法群の患者背景に差は認めなかった。

 非処方群と個々の待機的処方群で症状の重症度に大きな差は認めなかった。重症度スコアの粗平均値は、非処方群が1.62、再受診群は1.60、先日付群は1.82、入手群は1.68、患者主導群は1.75であった(尤度比χ2検定:2.61、p=0.625)。

 やや悪い(moderately bad)またはより悪い(worse)症状の持続期間にも、非処方群(中央値3日)と待機的処方群(中央値4日)で差はみられなかった(尤度比χ2検定:4.29、p=0.368)。

 診察に「たいへん満足」と答えた患者は非処方群が79%、再受診群は74%、先日付群は80%、入手群は88%、患者主導群は89%(尤度比χ2検定:2.38、p=0.667)、「抗菌薬の効果を信用する」と答えた患者はそれぞれ71%、74%、73%、72%、66%(同:1.62、p=0.805)であり、抗菌薬服用率は26%、37%、37%、33%、39%(同:4.96、p=0.292)であった。

 これに対し、即時的処方群の大部分(97%)が抗菌薬を服用しており、効果を信用する患者の割合も高かった(93%)が、症状の重症度(粗平均値1.76)や持続期間(中央値4日)は、待機的処方群に比べて高いベネフィットはみられなかった。

 著者は、「非処方や待機的処方では抗菌薬服用率が40%以下であり、即時的処方に比べ抗菌薬の効果を信頼する患者は少なかったが、症状の転帰は同等であった」とまとめ、「患者に明確なアドバイスをする場合、待機的処方戦略のうちいずれの方法を選択しても差はほとんどないとしてよいだろう」としている。

(菅野守:医療ライター)